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オークはバラバラになってしまいました



「フェンリルという事で、これからの成長に期待している部分はあったが、今の時点でも十分だな。……クレアに強力な護衛が付いたと思っておこう」

「そうですね。まぁ、他の護衛さん達が自信をなくしそうですけど……」

「その時は、自信を付けるためにまた厳しい訓練でもさせるのもいいな」


 クレアさんにシェリーがいてくれれば、護衛さんの代わりになってくれるというのは、エッケンハルトさんにとって喜ぶべき事なんだろう。

 フィリップさん達の自尊心のようなものは気になるが……人間の護衛というのも必要だから大丈夫だろう。

 もし自信をなくした場合は、エッケンハルトさんによる厳しい訓練を再びかぁ……それはかわいそうだから、フィリップさん達には頑張って欲しいと思う。

 なんにせよ、ランジ村に薬草畑を作ったら、村と屋敷を往復する事が増えるだろうクレアさんには、頼もしい存在という事だな。


 クレアさんの方は、シェリーを護衛代わりにとかは考えておらず、家族のように考えているだろうけど。

 俺とレオのように、相棒と言える関係に近いかもな。


「シェリー、よく頑張ったわね! 偉いわ!」

「私もシェリーも頑張りました! オークを倒せました!」

「キャゥ! キャゥ!」

「ワフワフ」


 エッケンハルトさんとの話を終え、クレアさん達の方へ近づくと聞こえてくる、皆で喜びを分かち合っている嬉しそうな声。

 その声を聞いてこちらも笑顔になりながら、氷漬けになったオークに近付いた。


「カチコチに凍ってるな……これ、溶けるのかな?」

「ワフ?」

「いや、シェリーは自分で倒したオークを食料にするんだろ? だったら、この氷が解けないと食べられないなと思ってな」

「キャゥ!?」


 コンコンと、ノックをするように凍ったオークを叩いて確認している俺に気付き、首を傾げるレオ。

 凍ってるのがいけないのか聞きたいようだが、このままではシェリーの食料とする事はできない。

 火を当てたら溶けそうではあるが……それも時間がかかりそうだし、昼食には間に合わないだろうなぁ……。

 そう思ってレオに話すと、聞いていたのかシェリーが驚いた声を上げた。


「ワフワフ」

「キャゥ!? キャゥ、キャゥ!」


 何やら、諭すようなレオの鳴き声に、焦って吠えるシェリー。

 どうやら、溶けるまで待って食べる事になるから、今すぐ食べるのは諦めて我慢しろと言われ、シェリーが慌てているようだ。

 いやまぁ、オークをシェリーだけで倒したのは皆見ている。

 俺やティルラちゃんが倒したオークや、レオが倒したオークに加えて、森の中でフィリップさん達が処理したオークもいて、大量にあるオークを一体氷漬けのオークと交換するって事でもいいと思うんだけどな。


「……キュゥゥゥゥ!!」

「お?」


 そう考えてレオに提案しようとした時、焦っていたシェリーが突然動きを止めた。

 顔を氷漬けのオークに向け、恨めしそうな目をしながら飛びかかる。

 戦闘をする時のような全力ではないのか、速度は遅かったがそれでも、十分のこもった突撃で頭からオークにぶつかる。


「「「あ……」」」

「ワフ?」


 ゴンッ! という音と共に全身氷漬けにされていたオークは、頭突きが顔に当たって後ろに傾く。

 足も凍っているが、地面に縫い付けられているわけもなく氷像になっていたため、簡単に傾くのは当然か。

 そのまま、俺やエッケンハルトさん達の漏らした間抜けな声と、レオの声を残して背中から倒れた。

 その瞬間、バリンッ! という割れた音と共に、オークの体がバラバラに砕けた。


「おおう……」

「キャゥ!」

「ワフゥ……」

「うわぁ、バラバラです……」

「これは、凍っていて良かったと思うべきかしら……?」

「うむぅ……凍っているからこうなったんだろうが、これはひとたまりもないな」


 多分、体の中まで完全に凍っていたためだろう……もう少し頑丈でも良かったと思うが、倒れた時の自重とシェリーの頭突きの勢いに耐えられなかった氷像は地面に散らばっていた。

 バラバラになった部位のうち、比較的大きいお腹だったと思われる部分に乗り、シェリーが勝ち誇った声を上げる。

 それを見ながら、俺達は引いたような雰囲気になってしまった。


 何せ、凍っているとはいえ、さっきまで生きていたオークがバラバラになったんだ。

 色々見えなくてもいい物が見えてしまっている。

 血が流れていない事だけが唯一の救いだな……骨だけでなく内臓やら内側の肉やらなにやら……うん、あまりはっきりと見ない方がいいな。

 鍛錬をして、オークと戦って斬ったりはしていたが、それでもこれで凍っていなかったらティルラちゃんの目を塞いでいたかもしれないくらいだ。

 ……リーザが離れた場所にいて良かった……これはあまりお子様には見せられない。



「皆さん、昼食ができましたよー! 今回は、ティルラお嬢様が倒して下さったオークの肉です!」

「おー、楽しみですー!」


 とりあえずバラバラになったオークの氷像は、見なかった事にするため野営地から離れた場所に埋める事にして、倒したオークを使っての昼食になった。

 俺が一番最初に倒したオークが、先に血抜きなどの処理をされていたため料理に適していたが、せっかくだから初めての実戦を経験したティルラちゃんの倒したオークを使う事になった。

 自分が戦って勝ち得た物、という事で実戦の実感と喜びを……という計らいらしい。

 皆で手伝ってオークを切り分けたりした後、料理はライラさんにお任せだ。


 前回に引き続き、ライラさんに任せている部分が多過ぎる気もするが、美味しく調理できる人が他に少ないから仕方ない。

 セバスチャンさん達執事さんは料理はできないようだし、護衛さん達は調理はできても大雑把に焼くくらいらしいし、俺も含めてエッケンハルトさんやクレアさんは料理はできない。

 もう少し料理ができる人を連れて来れば……と思ったが、森へ来る事ができそうな人選でこうなったのだから仕方ないとの事だ。


 ちなみに、護衛さんの中で紅一点のヨハンナさん。

 なんでも、護衛になるべくずっと訓練ばかりをしてきたストイックな人らしく、料理が全くできないとの事だ。

 それはまぁ、他にも似たような人が多い現状だし、問題ではなかったんだが……「私が料理をしたら、全てを黒くします!」とはっきり言ったからな。

 黒くというのは、多分焦がしてしまうからだろうと思うが……それを自信満々に言うもんだから、失礼ながら笑ってしまった。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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完結しました!
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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 ……オークはばら肉に?
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