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シェリーの戦いが終わりました



 何度か鳴き声を交わし、最後に確認するように鳴いたレオに対して、シェリーが力強く頷いた。

 それを確認したレオは、シェリーの首元に口を持って行き……。


「あ……」

「ガウ!」

「キャゥゥゥゥゥ………!」


 咥えて持ち上げたと思ったら、オークの方へシェリーを放り投げた!

 ちょっとー! と抗議するようなシェリーの鳴き声が物悲しい。


「ギュオ!? ギュッ!」


 再び飛んで来るシェリーを見たオークは、一瞬だけ驚いた様子だったが、すぐにまた先程と同じように右腕を振り上げ、迎撃をする体制。

 放り投げれたシェリーは、自分から飛びかかった時とは違い、速度が遅いため当然オークの目に捉えられている。

 このままじゃ、さっきの繰り返しになるが……どうするつもりなんだ?


「グルゥゥゥゥゥ! キャウゥッ!」 

「ギュオ!?」


 ゆっくりと放物線を描いてオークへ飛ばされて行くシェリーが、吠えるというより唸るような声を上げ、なにやら力を溜めるように空中で体を縮こまらせた。

 そろそろオークの腕が届きそうな距離になったあたりで、大きく吠える!

 その瞬間、シェリーの口先から青い冷気のようなものが迸った!

 数センチ程の太さで青いそれは、離れている俺達からはよく見えないが、確かに冷たい輝きを放っていて冷気だと確信させた。


 シェリーから迸った冷気は、右腕を振り上げているオークの右肩あたりに命中し、一瞬にしてそこから数十センチの範囲を凍らせる。

 もしかして、シェリーの魔法か……?

 確か、フェンリルは火と氷の魔法が使えると、以前セバスチャンさんが言っていた気がする。


「ギュッ! ギュッ!」

「キャウ! キャウ! キャウゥゥゥゥ!!」

「ギュウゥゥゥゥゥ!! ……ギュ……ゥ……」


 シェリーの魔法に驚いたオークは、必死に右腕を動かそうとしているようだが、完全に右肩から肘付近まで凍っていて動かせない。

 オークは焦っている声を上げているが、地面に下りたシェリーが続けざまに同じ魔法を放った!

 先程と同じような冷気の線が次々と命中し、もがくオークに左腕、両足、腹、首……最後には顔も氷漬けにされてピクリとも動かなくなった……。


 魔法で凍らせる……以前、直に見た事はないがシェリーを助ける時に、レオがトロルドを氷漬けにした魔法と一緒……かな?

 凍らせる大きさは大分違うが……多分似たようなものだろう。


「キュゥ? キュッ! ハッハッハッハッハッ!」

「ワウ!」


 連続で魔法を放っていたシェリーが、オークの方を見て一度首を傾げる。

 完全に氷漬けになり、動かなくなったオークを確認し、全身を跳ねさせ、レオのいる方や俺達の方へ顔をキョロキョロとさせながら、尻尾をブンブン振って舌を出し、喜んでいる様子だ。


「タクミ様……シェリーはやったんですね……?」

「はい。見事にオークを倒しましたよ。……行ってあげて下さい。――ティルラちゃんもね?」

「うむ、そうだな」

「「はい!」」


 先程オークにはたかれた時とは違い、魔法を使って氷漬けにした事に対して、クレアさんは目を瞬かせていた。

 まだはっきりと信じられない様子だったクレアさんに頷き、シェリーの所へ行くように促した。

 エッケンハルトさんに止められていた、ティルラちゃんも同じくだ。

 同時に嬉しそうに返事をした二人は、レオが歩み寄り、喜びを伝えるように尻尾を振り続けるシェリーの所へ駆けて行く。


 シェリーの体の大きさからは、多少立派過ぎるくらいの尻尾が勢いよく振られているな。

 喜びを表現するためだし、レオもすごく喜んでいる時は似たような事になるから慣れているが、やっぱり振る勢いが強すぎて、お尻まで振られているようにも見える。

 それだけ、オークを倒せた事を喜んでいるんだろう。


「魔法か……どう思う、タクミ殿?」

「どう思うと言われても……凄いとしか。俺にはあんな魔法はまだ使えませんし……」

「魔法そのものは、威力はあまりなさそうだったな。まぁ、凍らせるというだけでも上等なのだが……それを連発か……」

「完全に凍らせるまで、何度も放っていましたね。……多分、十回以上は使っていたと思います」

「そうだな、それくらいか。……さすがはフェンリルというところか。子供でもその能力は高いのだろう。人間があのように魔法を連続で使う事は、不可能ではないが……そうそうできるものではないな」


 クレアさんとティルラちゃんの姉妹が、シェリーの所へ駆けて行くのを優しい目で見送っていたエッケンハルトさんだが、ふと真剣な眼差しで俺に聞いてきた。

 とはいっても、俺はまだ魔法の初歩くらいしか使えないし、標的を凍らせる魔法というのを知らない。

 離れて見ているおかげで状況はよく見えていたから、シェリーが使った氷の魔法がしっかり見れたというくらいだ。

 回数は……連続で使うのに驚いて正確に数えてはいないが、とりあえず十回以上使ったというのはわかった。


 エッケンハルトさんからは、シェリーを褒める言葉と魔法を連続で使う事に関して言われたが……確かにそうかもしれない。

 これまで連続で使う事はあまり考えていなかったが、人間が魔法を使う場合はいちいち呪文を唱える事を考えなければならないため、瞬間的に十回以上も使う事なんてできそうにない。

 それこそ、無詠唱というのができるようにならなければいけないだろう。

 それにしたって、魔力を集めたりと難しい部分があるし……どれだけ頑張ればシェリーと同じような事ができるのか、今の俺には全くわからない。


 もしかして、フェンリルより上位のシルバーフェンリルである、レオだったらもっと凄い魔法を連続で……という事ができるかな?

 ……できるんだろうなぁ……シェリーが連続で魔法を放った事に驚いてないし、むしろ当然とばかりに頷いていたしな。

 とりあえず、レオに聞いたら実演したがりそうなので、考えるだけにしておいた。

 いずれストレス解消のために、レオがある程度魔法を使う場を用意するのもいいかもな。

 想像以上の事が起きて、驚くだけになる可能性が高そうだけども……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難うございます。 飼い慣らされても、流石フェンリル!
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