少年達との約束を守ってお願いをしました
エッケンハルトさんが俺の説明に対し、うんうん頷いていた。
元々リーザの境遇はある程度知っていたはずだが、これで俺やクレアさんと同じくらいは知ってもらえたはずだ。
もしかしたら、リーザが話さないだけで、もっと辛い事があったりもするかもしれないが、それはこれから先一緒にいて少しづつ知って行こうと思う。
思い出したくない事なら、無理に聞き出す必要もないしな。
「あ、そういえば……エッケンハルトさん。クレアさんにもお願いがあるんですが……」
「む、なんだ?」
「私にもですか?」
リーザの関する話をしていて、ふと思い出した事があった。
というより、本来ならもっと早く話しておかなきゃいけない事だったな……約束してた少年達、すまない。
「ディームを捕まえた時、マルク君と同じような少年達がいたんです。ディームを含めた男達に責められてたようですけど。その少年達も、多分衛兵さんに捕まっていると思うんですが……あまりきつい罰を与えるのは……一応、ディームを捕まえるのにも協力してくれたので」
あの時の少年達に、何も罪はないと思わないが、それでもまだ成人すらしていなさそうな少年達だ。
ほとんどがディームに言われてやってた事だろうし、同じように罰せられるのは忍びない。
一応、少年達とも罰を軽くするように約束もしたしな。
思い出して、エッケンハルトさんとクレアさんに、改めてお願いをする。
「その事か。ディームを捕らえた者達から、報告が入っている。ディームの協力者ではあるが、仕方なく従っていた部分もあるようだからな。罰を与えないという事はないだろうが、軽い物になる予定だ」
「そうですね。これから先成長して、正しくまっとうに生きて行こうとするかもしれません。もちろん、成長した後に何か問題を起こせば、厳しく罰せられるでしょうけど、現段階ではあまり厳しく罰を与える事はないでしょう」
「そうですか、ありがとうございます」
少年達は、協力者ではあるが、無理矢理従わされていたという部分があるはずだ。
まぁ、進んでやっているのもいた可能性もあるが……ともかく、年齢や主導していたわけではないという事とを考慮して、厳しい罰を与える事はなさそうだ。
何も罰を与えないというわけではないのは、当然だろうけどな。
特に、リーザに関して以外にも、何かしらやっている可能性もあるから。
とりあえず、お願いするという約束を果たせたと、ホッとしていると、エッケンハルトさんが口の端を吊り上げて、悪巧みしているような表情になった。
「まぁ……骨のあるような人柄ならば、連れて行って鍛えてやるのも、罰として使えるかもな……」
「お父様、さすがに成人すらしていないような少年を、あの訓練に参加させるのは……」
「なに、既にリーザに石を投げた張本人、マルクが参加予定だからな。マルクも、知っている者がいた方がいいだろう?」
「……フィリップさんも言っていましたけど、かなり辛い訓練みたいですね?」
「なんだ、タクミ殿はフィリップに聞いたのか?」
「はい。ただまぁ……フィリップさんはあまり思い出したくないようでしたけど……」
「ふむ、少し鍛え方が足りなかったか? むしろあの訓練を誇れるようになって欲しいのだがな」
「ただ辛いだけの訓練なんて、誇らしく思える人は少ないと思いますよ、お父様?」
本当に、エッケンハルトさんは悪巧みをしているようだった。
フィリップさんが、思い出すのも辛いあの訓練を、マルク君だけでなく、他の少年達にもと考え付いたようだ。
うぅむ……厳しい罰を与えられるよりも、もっと辛い事になったかもしれないな……すまない、少年達。
あと、クレアさんはエッケンハルトさんが課している訓練を知っている様子だ。
まぁ、本邸近くで行うようだし、今の屋敷に来る前はそっちにいたんだろうから、知っててもおかしくないか。
ともあれ、フィリップさんの様子や訓練の事を聞いた限りでは、誇らしく思えるような要素は無さそうなんだが……。
いやまぁ、あの辛い訓練を乗り越えたんだから、多少の事には動じないくらいの自信はつく……かも?
「とりあえず、反省をしている様子なら孤児院に入れるというのはどうでしょう?」
「それも手なのだがな。報告によれば、親はいないようではあったしな。だが……」
「タクミさん、孤児院の方が、今はいっぱいで……」
「あぁ、そうでした……」
孤児院に入れれば、しっかりした教育をしてくれると考えたのだが、そういえばリーザと出会った時に孤児院の状況を聞いたんだったっけな。
人がいっぱいで、新しい孤児を受け入れる余裕がほとんどないと。
さすがに全てを断るわけじゃなく、もしもの時は無理にでも受け入れて来るんだろうが……スラムにいた少年達数人を受けれるのは、難しいだろう。
ふむ……そうか……だったら……。
「タクミさん、何か考えがあるんですか?」
孤児院の事を考えて、少し黙った俺に、クレアが首を傾げる。
俺、わかりやすく何かを考えているように見えたかな?
「あー、えっと……ちょっと考えた事があるんですけど……実現できるかどうか。とりあえず、考えをまとめたら相談させてもらうと思います」
「……今ではないのですね?」
「まだちょっと、まとまってないので……すみません。なんにせよ、屋敷に戻ったらゆっくり考えさせてもらいます。必ず、相談させてもらいますので。セバスチャンさんにも聞かなきゃいけないでしょうし……」
考えていたのは、孤児院に関する事と少年達、さらにランジ村で行う薬草畑の事だ。
俺が今話せない事に、クレアさんは少し拗ねた様子だったが、とにかく後で必ず相談させてもらうという事で納得してもらった。
「むぅ……私ではないのだな……?」
「まぁ、エッケンハルトさんでもいいんですけど、屋敷に戻ったら、本邸に帰らなきゃいけないんですよね?」
「うむ、そうだな。……タクミ殿の考えとやらがまとまった頃には、屋敷にいない可能性があるか」
「そういう事ですね」
相談相手が、クレアさんとセバスチャンさんに、という事で今度はエッケンハルトさんが少しだけ拗ねる。
拗ね方が似てるのは、やっぱり親子なんだなと思う……もしかすると、ティルラちゃんも拗ねたら似たような感じになるんだろうか?
それはともかく、いい年したオジサンが拗ねて見せても、可愛くはないのだが……この場で一番権力を持っている人物としては微妙な気分なのかもしれない。
なんにせよ、屋敷に帰ってすぐ考えがまとまるかはわからないし、じっくり考えたいから、その頃にはエッケンハルトさんがいない可能性を説明して、なんとか納得してもらった。
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