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森の入り口に到着しました



「……ありがとうございます、タクミさん」

「ん? どうしたんだい?」

「私が緊張し過ぎていたから、リーザちゃんを馬車に乗せて、レオ様に乗せてくれたんですよね?」

「んー、ティルラちゃんは、いつも裏庭でレオに乗ってるけど、外を走るレオに乗った事がなかったからね。だから乗せてみようと思っただけだよ?」

「ふふふ、そうですか。それでは、レオ様に乗せて頂いて、ありがとうございます」

「楽しいかい?」

「はい、とっても!」


 走っているレオに、楽しそうにしていたティルラちゃんが、ふと声を落として俺にお礼を言った。

 何故急にお礼をと思ったが、俺が考えた気づかいはバレていたようだ。

 それでも、そのまま認める事は格好悪い気がして、ティルラちゃんには誤魔化して伝えた。

 誤魔化そうとしている事すらもバレているのかどうなのか、笑い声を漏らして、ティルラちゃんから改めてのお礼。


 楽しいかどうかを聞いてみると、満面の笑顔で頷いてくれた。

 なんとなく、バレてしまっていて恥ずかしいが、気遣い自体は無駄になっていないようで良かった。

 あと、笑い方とお礼の言い方が、クレアさんにそっくりだったな……さすが、姉妹だ。

 ……エッケンハルトさんには、あまり似てなくて良かったと思うのは、少し失礼かな?



 しばらくして、森の入り口へと到着した俺達は、本格的に森へ入る前に昼食をと、すぐに焚き火用の枯れ枝拾いを始める。

 馬や馬車は、執事さんとここに残る護衛さんに任せ、ついて来る護衛さんと俺達で枝を集める。

 何故か楽しそうに枝拾いをしているエッケンハルトさんは、セバスチャンさんに注意されても止める事はなかった。

 焚き火用の枝を集めた後は、火を付ける作業。


 魔法を使って火を付けようとした執事さんを止め、レオに付けてもらう。

 前回と同じく、レオがやりたがったからだが、普段は魔法を使う機会が少ないため、たまには使っておきたいかららしい……調合の時に風をおこしてるのだけでは足りなかったようだ。

 まぁ、一種のストレス発散と考えて、レオに任せ、顔の前に出た火で焚き火を付けてもらう。

 それを興味深く見ていたのは、エッケンハルトさんとアンネさん、それにティルラちゃんとシェリーだ。


 早い話が、火の魔法を使うレオを初めて見るからなんだろうな。

 エッケンハルトさんは、リーザに水を飲ませた時にレオの魔法を見ているはずだが、火の魔法はまた別との事だ。

 好奇心の強い公爵様だなぁ……と思ったが、そういう所は、しっかりクレアさんに遺伝しているんだなと納得した。


「凄いです、レオ様!」

「ほぉ……レオ様、これはまだ威力を上げる事はできるのですか?」

「ワフワフ」

「大きいだけでなく、魔法まで使うなんて……とんでもないですわ……」

「ありがとうございます、レオ様。昼食を期待していて下さいね」

「ワフ!」

「キャゥ? キュゥ……?」

「ワウワウ!」


 レオが火を付けると、ティルラちゃんが喜び、エッケンハルトさんが質問。

 アンネさんが離れた場所で驚愕の表情で、さらにレオへの恐怖心を強くしているのとは別に、ライラさんが料理を始めながらお礼を言った。

 シェリーは、レオが魔法を使った事に驚き、不思議そうに首を傾げていた。

 それを見たレオは、お前もやろうと思えばできるはずだ! とでも言うように鳴き、シェリーを困らせていたりもする。


「皆、楽しそうですね」

「そうですね。クレアさんは、レオの魔法をもっとじっくり見なくて良かったんですか?」


 焚き火の近くではしゃいでいる皆を眺めながら、クレアさんがポツリと漏らす。

 前回森へ来た時は、セバスチャンさんも一緒に、興味深そうに見てたんだけどなぁ……それこそ、喜んでるティルラちゃんのように。

 ちなみに、リーザは馬車を曳いてくれた馬にお礼をと言って、セバスチャンさんと一緒にいる。

 セバスチャンさんの方は、馬を繋いだり、指示を出したりと忙しい様子だ……今回は人数が多いから仕方ない。


「レオ様が魔法を使うのは、前回も見ましたし……偉大さは十分に拝見させて頂きましたから」

「偉大……レオが偉大ですかぁ……」

「タクミさんは、レオ様と仲が良いですし、こちらへ来る前から一緒だったので、そう思うかもしれませんが……本来なら、公爵家とその関係者全員がひれ伏しても、おかしくない程の魔物なのですよ?」


 レオが偉大と言われても、あまりよくわからない。

 いや、確かに大きくなってからのレオは凄く頼りになるし、俺がどれだけ頑張ってもかなわないと思う。

 けど、リーザを心配したり、子供と楽しそうに遊んだり、ソーセージで一喜一憂するレオを見ていると、あまり偉大な存在というのを感じない。

  ……元がマルチーズだったせいもあるのかもしれないが。


「……そんなレオ様と対等に話している、というより、レオ様を従えてるようにも見えるタクミさんは、どれだけ偉大なんでしょう?」

「俺が偉大ですか? いやいや、そんな事は全然ないですから!」


 ただのしがないサラリーマンだった俺が、公爵家がひれ伏す程の存在よりも上だなんて事、あるわけがない。

 俺なんて、ラクトスの街にいる人達とそう大差ない人間だ。

 レオがいてくれたり、ギフトがなければそれこそ、公爵家のお世話になる事もなかっただろうしな。


「なんなら、お父様やティルラを連れて、ひれ伏してみましょうか?」

「止めて下さいよ。そんな事をされたら、どうしていいかわかりません……」


 悪戯をする子供のような目で、俺に聞くクレアさん。

 そんな、お世話になっているクレアさん達公爵家の人達が、目の前でひれ伏したりなんてしたら……本当にどうしていいかわからなくなりそうだ。

 誰かに傅かれる経験がないというのもあるだろうが、そんな事をされたり、偉ぶったりなんてしたくないからな。

 実際、偉くもなんともないんだから、経験がなくて当たり前だが。


「うふふふ、そうですね。困るタクミさんを見るのも楽しそうですけれど、嫌われてしまったらいけませんものね」

「……俺がクレアさんを嫌うなんて事は、あり得ないと思いますけど……」

「そうですか? 本当に……?」


 俺の反応を見て、楽しそうに笑うクレアさん。

 クレアさんを嫌うなんて事、これから先あり得る事ではないように思うが、俺の言葉を信じていないのか、上体を斜めに倒したクレアさんが、俺の顔を下から覗き込むようにしながら、窺って来た。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 タクミさんはスゴいんやで?
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