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ティルラちゃんの緊張を解しました



「ふぅ……」

「疲れたかい?」

「いえ、大丈夫です!」


 森へ移動する途中、馬を休ませるための休憩場で、木にもたれかかるティルラちゃん。

 疲れたような息を漏らしていたので、声をかけたんだが……本人は元気だとアピールするように、大きめの声を出した。

 ……大分緊張してる様子だな。


「緊張し過ぎてても、疲れるだけだから、もう少し楽にしてた方がいいと思うよ? ほら、リーザのように」

「……リーザちゃん、初めての森なのに楽しそうです」

「まぁ、確かにね……」


 オークと戦う……という事がわかっているからだろうか、ティルラちゃんは肩肘に力が入ってしまっている様子だ。

 馬車の中でも緊張していたんだろう。

 何でもないと本人は言っていても、このままだと森についた頃には疲れ果ててそうだ。

 野営をする場所までは、ある程度森を歩かなきゃいけないし、移動で疲れてちゃいけないと思って、緊張を解すように、話しかける。


 レオやシェリーに、クレアさんとエッケンハルトさんを交えて、楽しそうに過ごしてるリーザをティルラちゃんと一緒に見るが……リーザはティルラちゃんとは逆に、緊張しなさすぎだなぁ。

 魔物が出る森で、危険な事はちゃんと伝えたはずだが、警戒している様子はないし、緊張もしてない。

 今も、クレアさんに撫でられて気持ち良さそうにしてるし……。

 二人を足して二で割ったら、丁度いいかもしれない。


「なんにせよ、今日は森へ入って川を目指す。そこで野営をして、明日からオークを探すんだから、今から緊張しなくても大丈夫だよ」

「でも……森の中でオークに出会うかもしれません」

「それは確かにね。実際、前の時は移動中に遭遇したし……。でも、その時は護衛さんやレオが何とかしてくれるから、ティルラちゃんはどっしりと構えていればいいんだよ?」

「それは……お父様くらいしかできないのでは?」

「あははは、そうかもね」


 今日はまだ、ティルラちゃんがオークと戦う事はない。

 本番は明日からなんだから、今緊張しなくてもいいように、なんとか言葉を重ねる。

 森を移動中にオークが出てきたとしても、護衛さんやレオがいるからなんとかなるだろうし……ティルラちゃんは気にせずにおけばいいと思ったが、さすがにエッケンハルトさんのようにはいかないようだ。

 まぁ、エッケンハルトさんと違って、魔物と戦うのが初めてだから、仕方ないけどな。


「そろそろ、出発しますよ!」

「はい、わかりました!」

「はい!」


 どうしようかと考えているうちに、セバスチャンさんが皆に声をかけ、再び森へ出発する事になった。

 ふむ……。


「すみません、エッケンハルトさん。ティルラちゃんですが……」

「ティルラか……どうしたのだ? かなり緊張しているのは見てわかるが」

「いえ、このままだとすぐに疲れ切ってしまうでしょうから、レオに乗せて移動して見てもいいですか?」

「レオ様に? そうだな、レオ様と接していれば、緊張も解けるかもしれんな」


 それぞれ、休憩を切り上げ、馬車に乗り込んだり馬に乗ったりしているのを横目に見ながら、エッケンハルトさんに声をかける。

 エッケンハルトさんから見ても、ティルラちゃんが相当緊張している事はすぐにわかるようだ。

 まぁ、父親だから娘の事はよく見てるか。

 ともあれこのままだといけないという事と、レオに乗せて移動してみる事を提案する。

 すんなりエッケンハルトさんから許可が出たので、馬車に乗り込もうとしてたティルラちゃんと、リーザを呼んだ。


「どうしたのですか、タクミさん?」

「ティルラちゃん。レオに乗って森へ移動してみるかい? 馬車で移動するより、気持ちいいかもしれないよ?」

「……いいんですか?」

「大丈夫。レオも歓迎してくれるよ。――な、レオ?」

「ワフワフ!」


 馬車に乗ろうとしていたのを、俺に呼ばれたため、不思議そうに首を傾げていたティルラちゃんだが、俺からの提案を聞いて、少し期待するような表情になる。

 やっぱり、ティルラちゃんもレオに乗りたいとは思ってたんだな……そういえば、ティルラちゃんがレオに乗るのは、もっぱら裏庭でばかりだったか。

 少しでも気が紛れればと思ったが、結構いい案だったようだ。

 期待しながらも、本当にいいのか不安気なティルラちゃんの前で、一応レオにも聞く。


 ティルラちゃんなら大歓迎とでも言うように、レオが鳴いて、乗せる事が決まった。

 これで、ティルラちゃんの緊張が、少しでも緩和されればいいんだが……。

 あとはリーザにもちゃんと説明しておかないとな。


「リーザ、すまないが、クレアさん達と一緒に馬車へ乗ってくれるか? さすがに、リーザとティルラちゃんを一緒に乗せるのは、俺が支えられないからな」

「うん、わかった! 馬車も初めてだから、楽しみ!」

「そうか、ありがとうな」

「ありがとうございます、リーザちゃん!」

「うん!」


 ティルラちゃんもリーザもまだ小さい。

 レオに乗った時、万が一にも振り落とされたりしないよう、俺が支える必要がある。

 裏庭の時は、大分加減して走ってるからな。

 それでも、ティルラちゃんなら支えなくても大丈夫かもしれないが、もしもが有っちゃいけない。


 だが、俺一人で支える事になるため、リーザとティルラちゃんの二人を支えるのは難しい。

 できない事はないかもしれないが、念のため安全な方を取りたいから、リーザには馬車に乗ってもらう事にした。

 素直に頷いてくれたリーザは、俺とティルラちゃんのお礼に答えた後、クレアさん達のいる馬車の方へ駆けて行った。

 馬車に乗るのが初めてだから、楽しみというのは本当なんだろうな。



「わー、速いです!」

「ワフッワフッ」


 出発してすぐ、レオに乗ったティルラちゃんは、後ろから俺が支えてあげながら、興奮した様子で声を上げる。

 レオも、ティルラちゃんが喜んでいるとわかって、上機嫌な鳴き声だ。

 後ろにいるから、ティルラちゃんの表情まではわからないが、さっきまでの固い声ではないから、緊張も多少薄れているんだろう。


「あ、おいレオ。もう少し速度を緩めてくれ。皆を置いてきぼりにしてるぞ!」

「ワウ? ワフ」

「レオ様って、こんなに早かったんですねー!」


 ティルラちゃんを喜ばせるためか、調子に乗って速度を出し過ぎていたレオを注意して、馬車や馬から離れ過ぎないようにさせる。

 一足先に森へというのもいいんだが、それだと皆を心配させそうだからなぁ。

 特に、エッケンハルトさんがティルラちゃんを過剰に心配しそうだ……速度を出したレオに乗せられた事があるだけにな……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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