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遠足前は期待で眠れないようでした



 夕食と共に森での行程確認が終わり、食休みのティータイムを終え、エッケンハルトさんと俺、ティルラちゃんは最後の確認と裏庭で軽く鍛錬をした。

 明日へ疲れを残さないよう、いつもより少なめに素振りをして終わりだ。

 クレアさんやリーザ、アンネさんは森へ行く準備のため、早々に部屋へ戻っている。

 リーザの事はライラさんとレオに任せてるから、つつがなく準備をしてくれるだろう。


「あ、パパ。お帰りなさい!」

「ワフワフ」

「ただいま。準備の方は、もう終わったのか?」

「うん。ライラお姉さんに手伝ってもらった! ライラお姉さんってすごいんだよ。てきぱき動いて……」


 風呂に入って汗を流し、温まってから部屋に戻ると、リーザはレオの大きな右前足を持ち上げたりして遊んでいた。

 部屋に入ってきた俺に気付いたリーザは、嬉しそうに迎えてくれる。

 レオもそうだが、やっぱり戻って来た時に誰かが迎えてくれるのはいいなぁ……屋敷内の部屋なだけだけどな。

 迎えてくれたリーザとレオに応えつつ、部屋の隅に置かれたリーザの鞄を見て、準備が終わったのかを聞くと、ライラさんに手伝ってもらって、もう終わらせていたらしい。


 まぁ、あまり荷物も多くないから、あまり時間がかからないか。

 ほとんどの必要な物は、セバスチャンさん達が問題ないようしっかり準備してくれてるだろうし。

 嬉しそうにライラさんの事を話すのを聞きながら、ベッドへ一緒に座り、頭を撫でていた時にふと気づく。

 リーザの鞄の上に、見覚えのある物が……?


「リーザ、あのナイフ……持って行くのか?」

「うん! パパに買ってもらった大事な物だし、森は危険もあるんでしょ? だったらもっていかなくちゃと思って!」

「そうかぁ……」


 鞄の上にポツンと載っているのは、以前ラクトスへ買い物へ行った時、リーザに買ってあげたナイフだ。

 果物ナイフどころか、サバイバルナイフよりもゴツイ刃を持つそれは、鞘に収まってはいるが、無骨なフォルムで出番を待っているようにも見えた。

 うーん……実用的という意味では、扱いなれないショートソードよりもいいんだろう、リーザの体の大きさにも合っているし。

 ただ、耳と尻尾があるだけの小さな女の子が、あのナイフを持って振り回すというのは……中々想像できない。


「確かに危険はあるけど、無暗にナイフを使うんじゃないぞ?」

「うん、わかってる!」


 リーザは本当にわかっているのかどうか疑問だが、俺の言葉に満面の笑みで頷いた。

 本当に大丈夫かな……?

 ナイフの扱いを間違えて、自分で怪我をしたりしないか心配だ。


「レオ、頼んだぞ。俺もちゃんと見ておくから」

「ワフ!」

「リーザ、ナイフを使うのはいいが、できるだけレオから離れないようにしておくんだぞ?」

「うん! ママ、よろしくね!」

「ワフワフ」


 丸まった状態で顔だけ上げて、こちらを見ていたレオと視線を合わせ、リーザの事を頼む。

 我が意を得たりというのか、俺が不安に思っている事がレオにも伝わったのか、力強く頷いてくれた。

 リーザにも一応の注意として、レオから離れる事はないように言い聞かせておく。

 レオと一緒にいれば、危険な事なんてほとんどないだろうしな。


 もちろん俺も、リーザが離れて危険な所へ行ったり、ナイフの扱いを間違えないように見ておくつもりだ。

 ……作り過ぎと言われたが、リーザ用にロエをこっそり作っておこうかな……。


「ねぇねぇパパ。もう少し森の事を聞かせて? 前にも行った事があるんでしょ?」

「ん? そうだな、リーザも森に行くんだし、知っておいた方がいいか。俺がわかる事くらいだけどな」

「ワフ、ワフ」


 以前にも森に入った経験から、ある程度リーザにも話して聞かせる事にする。

 リーザにねだられたからというのもあるが、備えのために教えておいて損はないだろうしな。

 俺が森の事を話して、楽しそうに聞くリーザから、時折質問が来て、それに答えると言うのを繰り返す。

 まったりとした時間だが、レオはそんな俺達の様子を見て、ゆらゆらと尻尾を揺らしながら機嫌良さそうにしていた。


 時折、俺が間違った事を言うと、レオ先生から鋭い指摘がワフッときたけどな。

 ……サバイバルに近い事は、最初からレオが説明したらいいんじゃないかなぁ……なんて考えつつも、パパの威厳とばかりに話せる事をリーザに話した。


「ん、リーザ。もうこんな時間だぞ? そろそろ寝ないと、明日に影響するから」

「えー、もう少し話してたいよー」


 ふと懐中時計を見てみると、いつもなら既に深い眠りに入っている時間。

 二十六時を回ったあたりだった……日本だと二十四時か……どちらにせよ、十分に深夜だ。

 大分長い事話してたんだな……と思いながら、リーザに懐中時計を見せながら、寝るように言う。

 しかしリーザは、まだ話したりないようだ。


 もしかすると、明日森へ行くという事で軽く興奮状態のようになっているのかもしれない。

 俺も小さい頃は、楽しみにしてた遠足に行く前日に、興奮して中々寝られなかったなぁ……。

 結局、寝坊して遅刻しかけるか、早く起きて寝不足になるかのどちらかで、辛い思いをするんだけどな。

 まぁ、あの頃は遠足が楽しかったから、辛いよりも楽しいというのが圧倒的に勝ってた。


「駄目だぞ? 早く寝ないと明日起きられないかもしれないし、元気が出なくて皆に迷惑をかけてしまうかもしれないんだ。ほら、横になって……」

「うー、わかった……」

「ワフ」

「あぁ、おやすみ、レオ」

「……ママ、おやすみなさい」


 不満そうにしているリーザを、ベッドに体を横たわらせて、寝る体制を取らせる。

 その様子を見守っていたレオが、ベッドの近くで丸くなったまま、そっと一声鳴いてお互いお休みの挨拶。

 そっとリーザに毛布をかけてやり、俺もベッドに横になる。

 明日森へ行くのは遠足で楽しむ事ではなく、魔物との戦闘が目的だ。


 移動中はレオに乗せようとは思うが、それでも寝不足だったり、元気がなかったら他の皆が心配したり迷惑をかけてしまう恐れがあるからな。

 寝られる時に寝て、ちゃんと体調を整える事も、森へ入る時には必要だ……と思う。

 少し不満そうにしていたリーザだが、レオが目を閉じ、俺も横になった事で観念したのか、毛布を首元まで引き寄せて目を閉じた。

 偉いぞ、ちゃんと寝る気になってくれたな。

 これなら、安眠薬草も必要なさそうか……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……既に”遠足”扱い……。
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