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シェリーはトロルドがトラウマになっているようでした



「構わん。どうせ、そろそろ夕食の時間にもなるからな。ゆっくり話す時間もあまりとっていなかったのだ、たまにはいいだろう」

「それでお父様、レオ様に何か話があるとの事ですけど?」

「タクミ殿から聞いていないのか?」

「あー、説明するよりも連れてくる方が先と思って……エッケンハルトさんが呼んでいる、としか言っていません」

「そうか、わかった。えーとだな……?」


 クレアさんがエッケンハルトさんに話しを促し、皆にはまだ説明していない事を告げると、レオの方へ顔を向けて話し始めた。

 まずは、レオにシェリーの事を聞く事からみたいだな。


「ワフ……ワーフワウ。ガウガウ、ワウー」

「……レオ様はなんと?」

「適当にオークと戦わせると言っています。場合によっては、それ以外の魔物とも。多分、見つけられるかどうかによって変わるのかと」


 森へ行った後のシェリーはどうするのか、レオが答えて、俺が通訳。

 リーザと違って、確実性は低いかもしれないが、ほとんど間違っていないだろう……俺が言った後にレオも頷いてるし。

 通訳はリーザに頼んでも良かったんだが、森へ付いて来なかった場合、代わりに俺が通訳する必要があるため、その練習みたいなものだ。


「ふむ、成る程な。それでは、シェリーはティルラやタクミ殿と同様、オークとの実戦を積ませると考えていいのですかな?」

「ワフ! ワフワフ? ワウ!」

「そうだけど、オーク以外の魔物とは戦わないのかと聞いてますね。トロルドあたりがいいだろうとも」

「キュゥ!?」


 レオとしては、俺やティルラちゃんとは違い、シェリーにオーク以外の魔物と戦わせる事も考えているようだ。

 ダイエット計画と共に、フェンリルとして鍛える目的もあるから、多少俺達よりも厳しめにするんだろう。

 ……盗み食いをした事を、レオがまだ怒っているとかではないと思いたい。

 あと、トロルドというのを聞いた瞬間、シェリーが弾かれたように顔を上げて、声を上げた。


「……どうしたの、シェリー?」

「キャゥキャゥ……キュゥ……」

「そうなのね。――シェリーは、トロルドとだけは戦いたくないと言っていますね。どうなのでしょうか、レオ様?」

「ワフゥ……ガウガウ! ガウ!」

「キュゥ……」


 シェリーを膝の上に乗せていたクレアさんが聞くと、元気がないながらも説明するように鳴いた。

 従魔となっているおかげで、シェリーの言っている事がわかるクレアさんが通訳してくれる。

 それによると、シェリーはトロルドとは戦いたくないらしい……声にも元気がなかったし……もしかしたら、以前森の中でやられていた事があるため、トラウマのようになっているのかもしれない。

 複数で囲まれ、痛めつけられ、瀕死にまでなっていたんだから、仕方ないか。


 だがレオは、溜め息を吐くようにした後、シェリーを厳しく叱るように吠える。

 それでさらにシェリーがしょんぼりしてしまったな……。

 えっと、レオが言ったのは……トロルド如きにフェンリルが臆するんじゃない! とかそんなところかな。

 エッケンハルトさん達にも、レオがどういったのかを教える。


「ふむ……確かに魔物としての強さは、本来フェンリルの方が上だな」

「そうですな。トロルドは、体の大きさと力という点では凄まじいのですが、フェンリルと比べますと、危険度は全く違います。素早く動き、木々をも斬り裂く爪と魔法を持つフェンリル。大してトロルドは、その巨体から繰り出される力任せの攻撃……動きが遅いので、フェンリルであれば軽々と避けられる事でしょう。……実際に見た事はありませんが」

「まぁ、魔物同士が争う場面なぞ、早々見られるものでもあるまい。……トロルドは、オークより上だが、フェンリルとは比べるのもおかしい程の差がある……というのが、我々の認識だな」

「ワフ!」

「キュゥゥ……」


 トロルドとフェンリルを比べて、どちらが強いかを話すエッケンハルトさんとセバスチャンさん。

 俺は直に戦った事はないが、ランジ村に向かう途中にレオが倒すところを見た事はある。

 遠めだったが、確かに動きは遅く見えたな……俺が戦ったら、避けられるかどうかは別として。

 力が強い分、遅い動きでも当たってしまえばひとたまりもないだろうから、俺からすると十分に脅威なんだが……エッケンハルトさん達に同意するように、力強く頷いたレオにとっては、取るに足らない相手のようだ。

 ……さらにシェリーがしょんぼりしてしまったな。


「ワフ?」

「ん、なんだ?」


 しょんぼりした様子のシェリーを見て、どう言おうか悩んでいると、レオが俺に鼻先を向けて、首を傾げた。

 何やら俺に聞きたい事があるらしい。


「ワフワフ、ワフ?」

「それは、さすがに用意されるだろう。――セバスチャンさん、シェリーもそうですけど、皆の食事はどうなりますか?」

「食事ですか? 以前と同じように、森へ入る執事やメイドがご用意させて頂きます」

「そうですか、ありがとうございます。――だそうだぞ、レオ?」

「ワフゥ……」


 レオの心配はどうやら食事の心配だったみたいで、セバスチャンさんに聞いてみると、前回ライラさんが調理してくれていたように、今回も用意してくれるとの事だ。

 話の最中に食事の心配とは、レオも食いしん坊だ……と思いかけたが、どうやら違うらしい。

 セバスチャンさんや、俺の言葉を聞いて、少しだけレオが考える仕草。

 顔をしかめるレオなんて、嫌な匂いを嗅がせてしまった時以来だなぁ……なんて考えつつ、その様子を眺める。


「……ワフ! ワフワフ、ワーフ。ワフワフ?」

「キャゥ!?」

「あー、成る程……そういう事か」


 何やら思いついた様子のレオは、それを伝えるために鳴き始める。

 えっと、何々……シェリーはオークを倒して、その場で食べ物を得るから、調理は任せられる? とかそんな感じかな?

 通訳した言葉を、セバスチャンさんに伝えて聞いてみる。

 ちなみに、さっきから驚いた様子のシェリーは、スルーされている。


 レオによるダイエット計画に関わる事なので、誰も口を挟めないんだろう。

 フェンリルを正しく鍛える方法なんて、俺やクレアさん達にはわからないしな。

 シルバーフェンリルであるレオに任せる事にしてるからな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……まぁ、素材(オーク)は有っても料理がなぁ……。
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