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ロエを作り過ぎてしまっていたようでした



「まぁ、許可も出ていないのに作っても、断られるかもしれませんが……その時は、自分で備えるために持っておけばいいだけですしね」

「……希少な薬草なのだから、昨日の事がなくともありがたく受け取るがな……そうか、森へ行くためか」

「はい。レオがいますし、護衛さん達もいます。エッケンハルトさんもいますから……オークで怪我をする可能性は低いでしょうけどね。……心配性過ぎましたかね?」

「いや、ありがたい。実は、もしティルラが怪我をしたらと思うと、気が気ではなかったのだ。おかげで安心できる。まぁ、護衛達はオーク程度で怪我をしたのなら、鍛錬が足りないのだろうがな」

「旦那様……それはさすがに」


 ロエは希少だから、受け取らないという事はないだろう……とは思っていたが、実際その通りになって少し安心した。

 それはともかく、やはりエッケンハルトさんもティルラちゃんの事が心配らしい。

 自分で言い出した事とはいえ、もしティルラちゃんが怪我をしたら……と考えてしまうのだろう。

 さっきのクレアさんとの話ではないが、やはり成長させたいという気持ちと一緒に、危険な事はさせたくないという親心があるのかもな。


 それにしても……フィリップさんから護衛の訓練の事を聞いていたから、納得できるが……やはりエッケンハルトさんは兵士さんには厳しいらしい。

 さすがに、セバスチャンさんが咎めるような視線を向けてるけども。

 以前聞いた時は、オークは兵士でも油断すると危ない魔物……という話だから、オーク程度と言ってしまえるのは、エッケンハルトさんくらいだろう。

 レオに剣を当てられるくらいの実力の持ち主だしな……あの時の模擬戦、ほとんど動きが見えなかったし、人間技とは思えない。

 ……むしろ、エッケンハルトさんは人間じゃない可能性も……いや、そうなると娘であるクレアさんやティルラちゃんもとなるから、考え過ぎか。


「ん、どうしたタクミ殿?」

「……いえ、なんでもありません。ともかく、ティルラちゃんもそうですし、俺や護衛さん達も含めて、誰かが怪我をした時に必要かなと思いまして。これだけ作っておきました」

「……多過ぎではないか?」

「タクミ様……このロエを市場で売るだけで、屋敷が一軒建つ程のお金が動きますが……」


 俺がテーブルに置いたロエを見て、目を剥く二人。

 あれ、そんなに多かったかな?

 えーと、森に行くのは俺とレオ、ティルラちゃんとエッケンハルトさんは確実だ。

 それと、多分お世話役として使用人さんが数人と、護衛さんもいるはずだから……最低でも十人くらいはいるはずだ。


 レオはともかく、俺やティルラちゃんは実戦を行う事になるから、必要かもしれないし、使用人さんや護衛さんにもしもの事がないよう、用意する必要もある。

 さすがに他の薬草を作ったりもするから、ギフトの使い過ぎに気を付ける以上、大量に用意する事はできないが……大体一人当たり二つは欲しいところだと思う。

 人数がはっきりわからないから、念のため少し多めに作っておいたため、今テーブルに置かれているロエは、三十個になっている。


「むしろ、少ないかなと思うくらいなんですが……」

「……森に行く者が、それほど怪我をするとも思えん。というより、ロエがそれだけ必要ならば、そもそも危険な場所過ぎるだろう? レオ様もいるのだから、杞憂だと思うぞ?」

「そうですかね……まぁ、確かに」


 レオもいるのだから、オークやトロルドの危険は少ない。

 大量に押し寄せてきたら危険だが、以前に森へ行った経験からするとそんな事もなさそうだ。

 シェリーを見つけたのだから、フェンリルがいる事は間違いないだろうが、それもレオがいるから大丈夫……そう考えると確かに多過ぎたかもしれないな。

 何日滞在するかはまだ決まっていないようだが、一日一つロエを使えるくらいの量か……俺も行くから、突発的に作る事もできるだろうし……エッケンハルトさんの言う事ももっともだ。


 森へ行った人達が全員、大量にロエを使う程の場所なら、危険すぎてティルラちゃんを連れて行く事もできないだろうな。

 心配性というか、念のためにと考えていたが……ちょっとそこまで考えていなかったな、反省しないと。


「ロエがある分には、困る事はないだろうが……この数だと……」

「市場で買い集めるならば、お屋敷が一つ建てられそうですな」

「あー、そうかもしれませんね……」


 ロエ一つ家一軒に近い値段と考えると、三十軒分……屋敷一つ建てる費用も賄えそうだ。


「まぁ、ロエは森へ向かう者達のため持って行くとして……余った物は他へ回せば良いだろう。タクミ殿も卸値で構わないという事なのだから、兵士達用に貯蔵するうちのいくつかと考えればいいだろう」

「え? いや、これは森へ行くためですし、俺も使うかもしれないので……お金は……」

「それはいけませんぞ、タクミ様。公爵家とタクミ様は正式に契約を締結しております。……正直に申しますれば、これだけのロエを他の薬草とは別に頂いて、卸値とはいえ相当な金額になりますから、痛手にはなりますが……そこはしっかりと、払わせて頂きます」

「そうだな。タクミ殿は、我々にお世話になっているからと考えていそうだが、契約を結ぶ者同士として、甘えるわけにもいかない。卸値分は、払わせてもらうぞ」

「はぁ……なんというか、先走って大量に作ってしまいました。すみません……」


 エッケンハルトさんは、昨日話したように使わなかったロエは兵士さん達用にする事を考えたようだ。

 それはいい事だし、俺としても有効活用してもらえればいいんだけど、勝手に作った物なのに卸値とは言えお金を頂くのは躊躇われる。

 セバスチャンさんの言うように、卸値と言っても、相当な金額になるから、いくら裕福な公爵家といえど、予定にないお金を払うのは厳しいはずだ。

 しかし、遠慮しようとした俺に対して、エッケンハルトさんは契約を持ち出して払うといった姿勢を崩さない。


 セバスチャンさんもエッケンハルトさんの言葉に頷いているし……これは辞退できそうにないな。

 報酬がもらえるのは、個人としては喜ぶべきことかもしれないが、お世話になってる公爵家に思わぬ出費をさせてしまった事に、申し訳なくなって謝った……。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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