セバスチャンさんが意気揚々と説明をしました
「実際に見てもらうのは後にして、まずは薬草畑について話し合いましょう。ハンネス様の方では、既に許可をする方向で考えていらっしゃいますね?」
「……はい。タクミ様やレオ様が村に来ると言うのなら、歓迎こそすれ、断る理由はありません。それに、公爵様にも関係する事ですし。それに、村でそういった事が行われるのなら、活気が出ると村の者達も歓迎するでしょう」
「それはよろしゅうございました。では……」
エッケンハルトさんが話し、俺やクレアさんが途中途中で話に入ったりとして、中々進まない事に痺れを切らしたのか、セバスチャンさんが話をまとめ、ハンネスさんから許可が出る事を確認する。
続いて、薬草畑に関する事で、現在屋敷の裏庭で数を増やす方法や栽培方など、研究中である事を説明。
……セバスチャンさん、さっきから説明したそうにしてたからなぁ。
場としては、公爵様であるエッケンハルトさんと、薬草畑を作る俺、場所の提供をする村長であるハンネスさんが話す段階だから、控えていたようだが、ついに我慢しきれなくなったか……。
ある程度重要な話はしたつもりだし、ハンネスさんも許可を出す事を考えてみたいだから、口を出したというのもあるんだろうな。
元々、詳しい話を聞くために屋敷を訪ねてきて、許可は出すつもりだったのかもしないけども。
「そして……こちらですね。このワインと薬酒を、ランジ村で製造し、広く売り出そうと考えております」
「このワインは……村で作った物と違うようですが? こちらも……」
薬草畑の説明を終わり、そこからワインを作る事へと話が変わる。
セバスチャンさんが、メイドさんに言って人数分用意してもらったのは、ロゼワインと薬酒だ。
薬草とワインを混ぜる事で作る物だから、ランジ村にはこれからもワインを作ってもらいたい……という話だな。
……最初からこの話をしててもよかっただろうに、何故か色々と話が逸れてしまったな。
多分、俺が住む家を考えてなかった事と、クレアさんが家事を……という話のせいな気がするが。
「こちらは、ロゼワインと名付けました。味や香りはランジ村の物ととほぼ変わりませんが……見た目が綺麗でしょう?」
「確かに……ん。言われたように、味も香りも村で作っている物と変わりません」
まずはと、ロゼワインの説明から始める。
ワイングラスに入ったワインは、綺麗なピンク色をしていて、人によってはうっとりする程の美しさだ……と思う。
勧められて一口飲んだハンネスさんは、ランジ村のワインと同じ物である事を確認し、頷く。
さすがに作っている村の村長だけあって、ワインの味は把握しているようだ。
「ランジ村のワインは確かに美味しいのですが、それだけだと他のワインと同様の物として、評判にはなりづらいでしょう。そこで、このロゼワインです。味は元から変わっておりませんが、これを瓶に詰めて売る事で、見た目で差を付ける事ができます。特に、女性には人気が出ると推測致します」
「そうですな……確かにその通りです。今までワインをラクトスに卸してはいましたが、特別売れているというわけではありませんでした。一応、贔屓にして下さるところもありはしましたが……病が広まった事で、それもなくなりました……」
どこぞの通販番組のように、ロゼワインのアピールポイントを話すセバスチャンさん。
ハンネスさんも頷きながら、今までの状況を考えて納得している様子だ。
そうか……ラクトスでは多く売れてなかったんだな……美味しいのに……他のワインの味を知らない俺が言う事じゃないか。
それにしても、既に病とワインの関わりが噂で広まってるみたいだな。
ラクトスの病は既に落ち着いているが、それでも原因にワインがあった事は、勘のいい人は気付いたのかもしれない。
贔屓にしていた人やお店も、病の原因という噂が広まった事で、取引を止めたとの事だ。
人の口には戸は立てられぬ……とは言うが、こればっかりは仕方ないか。
噂がただのデマならまだしも、事実でもあるしな。
「そうですか……噂は既に……ですが、そこでこのロゼワインです。今までと違う美しい見た目! そして変わらないランジ村のワインの味! さらには! 公爵家が保証をするという事で、格別の信頼が得られます!」
急に勢いを増して、セバスチャンさんがロゼワインをハンネスさんに売り込み始める。
どうやら、説明をする事で気が高ぶってる様子だが……本当に通販番組みたいになってますよ?
「……というわけで、このロゼワインをラクトスで広め、他の街や村にも卸すために作って欲しいのです」
「はぁ……それはわかりました。確かにこの美しさと公爵様方からの口利きなら、噂を気にせず売る事ができると思われます。ですが……作り方が……この色は、どうやって出すのですか?」
「それは……ラモギです!」
少しだけもったいぶるように、溜めを作ったセバスチャンさんが、ラモギを混ぜたワインである事を説明する。
ラモギは水などに漬け込むと、薬効成分のおかげなのかなんなのか、色が出る。
それを利用し、ワインに混ぜる事で綺麗なピンク色を出せるとかなんとか……完全に偶然できた物なんだけどなぁ。
ハンネスさんに説明するセバスチャンさんが、恍惚としている様子なので、話の腰を折ったりはしないが。
そしてラモギを混ぜた事で、病の素が消えるという事を聞いて、ハンネスさんが驚いていた。
今飲んだワインは、ラクトスかどこかで無事だった物を使ったと考えていたらしい。
俺が買い取って持ち帰ったワインを使って、病にも罹らないようにした……と説明すると、凄く尊敬するような目で見られた。
エッケンハルトさんとかがいなかったら、拝み始めるんじゃないかと思うくらいだ。
さすがにそれは止めて欲しい……俺を拝んでも御利益なんてないから……他の人達がいてくれて良かった。
その後、薬酒の説明も終わり、こちらはすぐに売れる物ではなく、少しずつ効果を実感して売れて行く物だと、以前俺がエッケンハルトさんに言った事と同じ説明をした。
味や香りで売るのではなく、体を元気にするという効能で売り、しかも少しずつ売れる数を増やしていくという事に、ハンネスさんは驚いていた。
こちらではあまり、そういった売り方はしないみたいだからだろう。
まず味ありきで、わかりやすく売るのが多いらしいからなぁ……。
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