表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

446/1996

『雑草栽培』の事をハンネスさんに伝えました



「確かに、薬草を作ると言っても、量ができる事はあまり想像できないな。そもそも、自ら育てようとする事が、この国では異例だ。ほとんど、自生している薬草を取って来るばかりだからな。……タクミ殿、セバスチャン?」

「大丈夫です。ハンネスさんは村長なので、正しく知っておく必要があるでしょう」

「私も同じくです。元々、情報は共有する事で、話は付いていましたから。問題ないでしょう」

「うむ」

「?」


 当然出て来ると思われた疑問に対し、エッケンハルトさんが頷いて肯定しつつ、俺やセバスチャンさんに目配せする。

 それを受けて、俺も頷きながらハンネスさんに教える事を承諾し、セバスチャンさんも同意してくれた。

 ハンネスさんは、目配せしたエッケンハルトさんや、頷く俺達を見て首を傾げている。

 何を教えるかと言うのは、俺のギフト……『雑草栽培』の事だ。

 ランジ村で薬草を作るのだから、村長であるハンネスさんには伝えておかないと不誠実だし、薬草畑が上手く行くかどうかも判断できない。


 雇う人たちには、俺が『雑草栽培』を使って薬草を作る場面を見る事が多いため、ある程度は教えるつもりだが、それはハンネスさんも同じ。

 通常では考えられない方法で薬草を作るのだから、教えておかないといくら信用されているといっても、いずれ不信感が募ってしまうかもしれないからな。

 まぁ、このあたりは元々エッケンハルトさんとも話していたし、わざわざ俺やセバスチャンさんを確認したりしなくてもいい事だ。

 多分、パフォーマンスというか、重要な情報を扱う……と見せるためなんだろうと思う。


「実はな、タクミ殿には特殊な能力が備わっている」

「特殊な能力……ですか?」

「うむ。聞いた事はないか? ギフト、という能力を」

「ギフト……神からの贈り物と言われる能力……でしたか。はい、私も長く生きていますので、話くらいは聞いた事があります。見た事はないので、噂話に過ぎないと思っていたのですが……まさかそれが?」

「そうだ。タクミ殿にはギフトの能力がある。そして、そのギフトは薬草を作る事ができるというものでな? おかげで、薬草の種類や育つ環境に左右されず、しかも数を作る事ができる」

「薬草を作るギフト……それは本当なのですか? いえ、確かに村に持って来られたラモギは多く、数日で集められるとは思えない数でした。それに確かあの時……足りなかったら言ってくれとも……」

「そうなのか?」

「はい、確かに言いました。村の人達のほとんどが病に罹っていたので……人数は聞いていましたが、効きが悪かったり、実際に必要な数が少なくて足りないなんて事がないように、ですね」


 少し多めに、ラモギを作って村に向かったが、それでも足りるかはわからなかった。

 ハンネスさんが村を離れている間に、別の人が病に罹ったりしてるかもしれなかったしな。

 それに、咳き込む症状があるため、乾燥して粉末になっているラモギを飲み込めず、いくつか無駄にしてしまう事も考えてた。

 まぁ、結局は俺の杞憂で、皆水と一緒にしっかりラモギを飲んで、病が治ってくれたんだけどな。


「そうか。すぐには信じられないのも無理はないが……タクミ殿はいつでもどこでも、薬草を作り出す事ができる。そのおかげで、今回の疫病騒ぎはすぐにおさまってくれた。……もし、タクミ殿の協力がなければ、という事は考えたくないな」


 正確には、薬草じゃなく雑草……だけどな。

 品種改良など、人の手が入っていない植物を作り出せる。

 あと、どれだけの数を一度に作れば限界があるのかは、まだよくわかってないが、能力を使い過ぎると突然倒れてしまうという事もあるから、それだけに頼るのはちょっと危険だ。

 だからこその薬草畑なんだが。


 あと、俺が協力しなかったら……というエッケンハルトさんの言葉も、大袈裟じゃないかもしれない。

 病ですぐに死ぬような、重い症状ではなかったにせよ、体力の少ない人は危ないし、当然病に臥せっていたら働けない。

 あのままラモギが行き渡らず、病が蔓延したままだったら、ラクトスやその周辺の村々はどうなっていたのか……人が相手ではない分、対処も難しいしな。

 それこそ、スラムにいたディームが、周辺のスラムも巻き込んで武力蜂起した方が、対処もしやすく被害も少なかっただろうなぁ。

 どちらも、起こらないに越した事はないけどな。


「そう、ですか。ギフトが本当にあるとは……。いえ、公爵様方やタクミ様がそう仰られるのなら、そうなのでしょう。実際に、多くのラモギを用意して下さり、村は救われましたから」

「ありがとうございます」

「そうか、信じてくれるか。まぁ、信じなくとも、タクミ殿に実演してもらえば信じざるを得ないんだがな」


 ハンネスさんは、余程俺と公爵家を信頼してくれてるらしい。

 今まで噂話と考え、実際にあるとは思っていなかった能力の事を、すんなり信じると言ってくれた。

 ありがたい事だ。

 人に信じてもらう以上、裏切らないよう頑張らないとな……と、薬草畑への意欲が沸いてくる。


 あと、エッケンハルトさんが言ってるのは、初めて会った時に実演した事だろう。

 クレアさんやセバスチャンさんもいた事で、既にほとんど信じられていたかもしれないが、実際に見た方が手っ取り早いと、『雑草栽培』を使って見せた。

 あの時は……薬草を卸す契約とかもあったから、見せる事も重要だったしな。


「それは、見てもよろしいものなのですか?」

「ん? あぁ、構わんぞ。ギフトは誰かに見られたからといって、なくなるものでもない。あまり広める事はして欲しくないが、見るくらいなら構わんだろう。なぁ、タクミ殿?」

「そうですね。実際に見てもらった方が、理解も早いかもしれません。ですが、それをどうしてエッケンハルトさんが言うんですか?」

「はっはっは! 私とタクミ殿の仲ではないか!」


 どんな仲なんだろう?

 まぁお世話になってるし、エッケンハルトさんが代わりに許可を出したからって、怒る程でもない。

 見てはいけないなんて、鶴の恩返しのような能力でもないしな。

 エッケンハルトさんの言うように、広めてしまったら俺が狙われる事も考えられるから、そこは注意して欲しいが……俺は鶴になって飛び去ったりはしない。

 レオに乗って走り去るかもしれないが、それは危険な時の最終手段だな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……ギフトの発動条件が”考えるだけ(?)”で良かった!? 某・ジ○リの作品(隣のト□ロ)みたいに、      「ン~~~マ”!」とか踊らないで……。(>~<)>(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ