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住む場所という事を考えていませんでした



「タクミ様は大丈夫なのですが……その、レオ様が……」

「ワフ?」

「ふむ。家の大きさか」


 俺を見た後、視線をずらしてロザリーちゃんといるレオの方を見るハンネスさん。

 自分が見られた事で、再びこちらを向いて首を傾げるレオ。


「確かに、タクミ殿だけならまだしも、レオ様も住むとなれば、大きな家が必要だな」

「あー……確かに、そうですね……」

「なんだ、タクミ殿。考えてなかったのか?」

「あはははは……はい……」

「タクミ殿も、抜けている所があるのだな……」


 むぅ、エッケンハルトさんに抜けてると言われてしまった……。

 ハンネスさんも、頭をかきながら頷く俺を苦笑して見ている……クレアさんも。

 だが今回は、確かにその通りで、レオが住む場所……というよりも、スペースの事を考えてなかった俺が抜けてると言わざるを得ない。

 屋敷は十分過ぎる程の広さがあるため、あまり気にしてないが、確かにラクトスに行くとレオは大きすぎて店には入れないからな。

 もしかすると、屋敷に慣れ過ぎた事と、以前のように小さい頃のイメージがあるからかもな。

 マルチーズの大きさなら、スペースなんて一切気にしなかったのに……。

 

「まぁ、その事なら心配するな。畑を予定している場所の近くに、家を建てる予定だからな。村長の許可が下りれば、すぐに取り掛かるよう準備していたのだ」


 この事は、既にエッケンハルトさんによって考えられてた事のようで、元々準備していたらしい。

 けど……。


「あの~家を建てる費用とかは、どうなるんですか?」


 考えてなかった事に、少し体を小さくさせて恐縮しながらも、手を上げてエッケンハルトさんへ聞く。

 お金に関しては、薬草を公爵家に継続して卸しているし、なんとかなるとは思う……けどあまり、費用が高すぎるのはなぁ……しがないサラリーマンだった俺にとっては、気後れしてしまいそうだ。

 相手は公爵家だし、とんでもない屋敷を建ててしまいそうだしなぁ。

 例えば……この屋敷のような大きさとか? 大きすぎて自分の家とは思えなさそうだ。


「それについても心配ない。クレアも住む事になるのだから、公爵家で持とう。どーんとデカイ屋敷を作る予定だ」

「え?」

「お父様、私は普通の家でも十分ですと、前に言ったはずですが?」

「……クレア様も、というのは?」


 エッケンハルトさんの言葉で、俺の目が点になり、クレアさんは不満顔、ハンネスさんは首を傾げてよくわかっていない表情だ。

 少し話しただけで、これだけ皆に色んな表情をさせるエッケンハルトさんは、さすが公爵様だなぁ……とか考えてる場合じゃない!


「いやいやいや、大きな屋敷までは必要ないですよ! レオが不自由しない程度で! それに、全て費用を持ってもらうのも、気が引けます!」

「タクミ殿なら、そう言うとは思っていたがな……だが、クレアだぞ? クレアが小さな家で満足するはずがあるまい?」

「お父様、私をどこぞの令嬢と一緒にしないで下さい。私は、普通の家でもやっていけます」


 勢い込んで、エッケンハルトさんに言い募る俺。

 ハンネスさんがポカンとしてるが、この際それは置いておこう。

 この屋敷みたいな大きな家でしかも、公爵家に費用を持たれたら、自分の家という気がしないし、多分あまり落ち着かない。

 エッケンハルトさんとしては、クレアさんに小さな家で住まわせたくないようだが、当の本人は不満顔で文句を言ってる。


「だがなクレア。料理を含めた家事はできないだろう? 今まで使用人が全てをやっていたのだ」

「それくらい……ランジ村に行くまでに習います!」

「どう思う、タクミ殿?」

「え? そこで俺に聞きますか? えっと……すぐには、無理かなぁ……と」

「タクミさん!?」


 今まで使用人に囲まれて育って来たクレアさん。

 当然、現状では家事をする事はできないから、というのがエッケンハルトさんの主張。

 対してクレアさんは、今からでも家事を習って、ランジ村に行くまでの間にできるようになると主張する。

 俺に飛んで来た質問を考え……クレアさんには悪いと思ったが、できないと考えた。

 クレアさんからの視線が痛いが、こればかりはなぁ……。


「いえ、その……クレアさんがずっと家事をできないとは、言ってませんよ?」

「だったら……どうしてですか?」


 エッケンハルトさんだけなら、過保護だとか、いつもの事で済まされるが、俺にまで否定されて、ちょっと泣きそうな表情のクレアさん。

 もしかしたら、女性として家事ができないと思われたくない……と考えているのかもしれないし、ちょっとかわいそうだと思うけど、実現は難しそうなんだよなぁ。


「クレアさん、どうやって家事を覚えるつもりですか?」

「それは……この屋敷にいるメイドに教えてもらって……」

「それはいつですか?」

「えっと……今日から?」

「無理だな」

「ですね」

「その通りかと」

「セバスチャンまで!? どうして無理だって言えるの!?」


 クレアさんに幾つか質問して、エッケンハルトさんが結論を出し、それに俺だけでなくセバスチャンさんが頷く。

 ハンネスさんは取り乱したクレアさんを見て、目を白黒させながら置いてきぼりになってるが、この際ちょっと待っててもらおう。


「クレアさん……昨日の夜、正確には今日からですが、忙しくなったでしょう? それに、俺にはわかりませんが、あの事が片付いてもまだまだやる事があるのではないですか?」

「そうだな。それに、森へ行く話もある。私はいつまでもこの屋敷にいるわけではないし、ティルラもまだまだ勉強せねばならん。そんな中で、家事を習っている暇があるのか? ランジ村に行くのは、数日後というわけではないが、数年後というわけでもないのだぞ?」

「それは……」


 俺とエッケンハルトさんの言葉に、口ごもってしまうクレアさん。

 そもそもに、エッケンハルトさんはいつまでもこの屋敷にいるわけではない。

 森へ行く予定があるが、その後は本邸へ戻る予定なのだし、スラムの件もあって、クレアさんがやらなければいけない事は多いはずだ。

 それくらいは、俺にもわかるからなぁ……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 公爵様「準備は全て整えた!(……セバスチャンが(小声))」
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