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ハンネスさんとアンネさんが対面しました



「私も年ですからなぁ……もしものために、付き添いにロザリーを連れて行ってくれと、息子夫婦に言われました。息子夫婦は村でワインに関する指示をするために、ここへは来れませんでしたが……」


 ロザリーちゃんを連れて来た理由はそういう事だそうだ。

 確かに、ハンネスさんはかなり年齢がいっているように見えるから、移動中にもしもの事があったらと心配になるのも無理はないか。

 セバスチャンさんと同年代に見えるから、まだまだ大丈夫……と思いたいが、セバスチャンさんが元気過ぎるだけだな、きっと。

 あの人と比べるのはいけない。


 ちなみに、ハンネスさんの息子夫婦……ロザリーちゃんの両親には、前回村に行った時に会っている。

 初日の宴で、ワインを飲んで美味しさに驚いている時、挨拶しに来てくれたっけ。

 夫婦ともに優しそうで、素朴な人柄といった感じだった。


「ワインのための、ブドウ仕入れに関しては大丈夫だと思います。俺が言っても、信じられないかもしれませんが……」

「いえいえ! ランジ村を救って頂いた方の仰る事なのです。私をはじめ、村の者で疑う者はいないでしょう」


 少し自信がなさそうに言うと、慌てて否定し、信じると言ってくれるハンネスさん。

 信頼というのは、こうして善行を積む事で得られていくんだなぁと実感。

 元々、信頼を得るためとか、色々考えて打算で助けたなんてことは一切ないけども。


 一応、全て信頼して任せるかどうか微妙ではあるが、アンネさんが保証はしてくれたから、ブドウの仕入れに関しては大丈夫だろう。

 伯爵家の人間である以上、そういったコネのようなものは使えるはずだ。

 ……微妙にズレたところがあるから、どこまで信用して任せればいいかわからないが。


「ありがとうございます。それで、用意してもらう畑の事なんですが……」

「その先は、私が話そう!」

「……エッケンハルトさん?」

「ワフ!」

「わっ!」

「っ!?」


 ワインを作る事と、畑の事を繋げるため、説明しようとした俺の言葉を遮って、扉を大きく開け放って入って来たのはエッケンハルトさんだ。

 ……また、話を外で聞いてたのかな?

 後ろにいるクレアさんは、エッケンハルトさんをジト目で見てるし、レオが咎めるような目で見ているし、間違いなさそうだ。

 じゃないと、その先は……なんて言葉は出て来ないしな。


 それにしても、エッケンハルトさんやクレアさんのさらに後ろ、一緒にアンネさんもいるようだが、どうしたんだろう……?

 ハンネスさんとアンネさんは面識がないはずだ。

 何故か神妙な面持ちで、緊張した雰囲気を醸し出してるが……リーザのための蝶々結びを継続しているおかげで、傍から見るとまるで緊張感はない。


「ハンネスさん、公爵家当主のエッケンハルトさんです。クレアさんとは、前回に会ってますよね?」

「うむ」

「お久しぶりです、ハンネスさん」

「こ、公爵様!? ししし、失礼しました! ランジ村の村長を任せられております、ハンネスと申します! ロザリーも、こっちへ……!」

「よい。レオ様と一緒に遊んでいるのだ、邪魔をしない方が良いだろう」

「は、はぁ……そうですか……」


 俺が立ち上がり、客間に入って来たエッケンハルトさんを紹介。

 何故俺が紹介しているのか疑問だが、セバスチャンさんもいないようだし、仕方ない。

 ハンネスさんはエッケンハルトさんを見た事がないらしく、俺の紹介に驚いて立ち上がり、謝罪と一緒に自己紹介。

 レオと一緒にいるロザリーちゃんを呼び寄せて、失礼のないよう挨拶させようとしたが、それはエッケンハルトさんに止められた。

 一緒に遊んでいるのを邪魔しないように……というよりは、入ってくるまで中の様子を窺ってた事を、レオの咎めるような目線を受けて、怖がってたりするからじゃないだろうか?


 ロザリーちゃんが一緒にいるから、レオは怒って行動を起こしたりしないとか……そんな事を考えてそうだ。

 こめかみに、一筋の汗が伝ってるし、鷹揚に頷いてるのに口元が引き攣ってたりするしな。

 ……レオを怖がるなら、覗きのような趣味を止めればいいのに……クレアさんには怒られてたはずなのにななぁ。


「んんっ!」


 エッケンハルトさんとレオを見比べていると、誤魔化すように咳ばらいをした。


「畑やワインなど、話す事は多いのだが……まずは……アンネリーゼ」

「……はい」


 ハンネスさんの方へ近づきながら、話し始めると思ったら、アンネさんに声をかけたエッケンハルトさん。

 その声に答えて、緊張した面持ちで前に出るアンネさん。

 だが、やはり蝶々結びをした縦ロールの先が、緊張感を台無しにしている。

 ロザリーちゃんの視線も、さっきからそこばかり捉えてるな。


「こちらの方は?」

「この者は、アンネリーゼ・バースラー。バースラー伯爵の一人娘だ」

「っ! では!?」

「うむ、配下の者を使い、ランジ村を襲わせた伯爵家の者だ」


 ハンネスさんが進み出たアンネさんを見て聞くと、エッケンハルトさんが紹介。

 バースラー伯爵の娘と聞いたハンネスさんは、弾かれたように顔をエッケンハルトさんに向け、目が飛び出しそうな程驚いている。

 まぁ、オークをけしかけて来たり、病の素となる玉を設置させたりと、ハンネスさんも事情を知る一人だからなぁ、そうなるのも仕方ない。

 それに、ワインを売っていた相手でもある。

 驚くハンネスさんに、エッケンハルトさんが頷いてバースラー伯爵がやっていた事を認める。


「そのような者が何故、公爵様のお屋敷に!?」

「まぁ、色々あってな。しばらく預かる事になったのだ。安心しろ、伯爵家は今後二度と悪さをする事はできぬだろう。――そうだな、アンネ?」

「はい。お父様のした事とは言え、伯爵家に連なる者として保証致します。それと……」

「良いのか?」

「もちろんです。この件は私の不徳の致すところでもありますので。貴族だからと驕る事は許されませんわ……クレアさんにも言われましたし」


 ハンネスさんにとっては、憎い相手となるかもしれない。

 直接の指示は、父親であるバースラー伯爵がやった事とはいえ、その娘なのだから。

 オークによって酷い怪我をした村人もいた、ワインが原因で病気になった人もいた。

 全て、俺が薬草で治したが……だからといってすぐに、憎む感情がなくなるわけじゃないよなぁ。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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[一言] 更新有り難う御座います。 ……そう言えば公式には謝罪無しですしねぇ……。
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