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44/1981

最初の森は公爵家縁の森でした



「……初代当主様と言うと、シルバーフェンリルと懇意にしていたという、あの?」

「そうです。その初代当主様がシルバーフェンリルと初めて会ったのが、あの森とされています。そこで初代当主様はシルバーフェンリルと対等の立場で、友人のような関係になったという伝説が残っているのです」


 あの森で初めて会ったのか。

 でも、実際どうやってシルバーフェンリルと仲良くなったんだろう?

 話を聞く限りだと誰にも従わず、誰にも勝つ事の出来ない魔物として恐れられている。

 レオを見てると、シルバーフェンリルは人を襲ったりする事は無さそうだが、それはレオの場合。

 こちらの世界に最初からいるシルバーフェンリルは、人を襲ったりしないんだろうか?


「その初代当主様はどうやってシルバーフェンリルと仲良くなったんですか?」

「……それが……わからないのです」

「わからないんですか?」

「語り継がれている伝説や、当家にのみ伝わる口伝、初代当主様の半生を綴った文献等、どれを探してもシルバーフェンリルと、どうやって親しくなったのかは伝わっていないのです」

「……そうなんですか」

「ですが……一部の文献に書かれているのは、あの森でフェンリルの群れに囲まれて初代当主様が危機に陥った事。そして、そこにシルバーフェンリルが現れたという事が書かれています」

「フェンリルの群れ……シルバーフェンリルとは違うんですか?」

「通常のフェンリルは、レオ様のようなシルバーフェンリルとは違ってもっと体が小さく、動きも遅いのです。それでも人間からすると速い動きで翻弄され、魔法も火と氷の魔法を操る厄介な魔物です。それに、シルバーフェンリル程鋭く無くとも、その牙と爪は人間程度なら容易に切り裂く事が出来ます」


 フェンリルっていうのは、シルバーフェンリルよりは弱いようだが、それでも人間からするとかなり危険な魔物ではあるみたいだな。

 ……フェンリルの群れに囲まれた初代当主様は、生きた心地がしなかったんだろうなぁ。


「初代当主様がフェンリルの群れに囲まれた事、そしてシルバーフェンリルと出会った事。これらの事からあの森はフェンリルの森と呼ばれているのです」

「フェンリルの森……」


 話を聞く限り、随分と危険な魔物であるフェンリル。

 そのフェンリルの群れや、シルバーフェンリルと出会った場所という事なら、そう呼ばれてもおかしくないだろうな。

 でも、俺が森を彷徨っていた時や、クレアさんが一人で森に入った時もフェンリルは出て来なかったな……。


「フェンリルって、まだ森にいるんですか?」

「それが……初代当主様亡き後、シルバーフェンリルと元々森にいたと思われるフェンリルの群れを見たという人はいないそうです」

「そうなんですか……」


 フェンリルの森と呼ばれる場所。

 気付いたらその場所にいた俺とレオ。

 そして、シルバーフェンリルになっていたレオ。

 シルバーフェンリルと懇意にしていた人の血筋であるクレアさんと出会った森。

 ……作為的とまでは言わないけど、何かしら運命的な物を感じるな……。


「ただ……」

「ただ?」


 どうしたんだろう、クレアさんが悩むように考え込んでる。

 何かあの森にあるんだろうか?


「確かに初代当主様亡き後、フェンリルの姿を見た者はいないのですが……あの森は伝説となった地。なので森を恐れ敬う意味を持ち、近づく人は少なく奥まで調べられていません。……本当にあの森にフェンリルがいないというのが確かだとは言えないのです」

「……ふむ」

「……もしかしたら、まだあの奥にフェンリル、もしくはシルバーフェンリルが存在しているかもしれません……」

「誰も入らない奥に潜んで暮らしているかもしれない、というわけですね?」

「はい……」


 しかしどうしたんだろう、クレアさんが凄い熱を持って伝説の話をしてる。

 穏やかな雰囲気の人で、あまり熱くなって語るような人って感じじゃないと思ってたんだけど……。

 あ……でも、そういえば。

 ティルラちゃんが病で臥せっていた時、薬草を求めて一人で屋敷を飛び出したのはつい数日前の事。

 意外とお転婆なところがあるんだった。


「……タクミさん、ここから先は危険も伴うので……断って頂いても構いません。ですが、私としては受けて下さると助かります」

「……はい」


 何だろう……何か知ってはいけない秘密とか?

 命を狙われるような危険がある情報とかを聞かされるんだろうか?


「タクミさん。レオ様を連れて私とあの森の奥まで行ってくれませんか?」

「……え?」

「「「クレアお嬢様?!」」」

「?」

「ワウ?」


 クレアさんの発言に激しく驚いたのは、セバスチャンさんとメイドさん達。

 そりゃ驚くよな……あの森はオークとかいたから危険な森のはずだ。

 仮説ではあるが、奥にはフェンリルが群れでいるかもしれない。

 しかもシルバーフェンリルもいるかもしれないという事だ。

 危険なのは間違いないだろう。

 セバスチャンさん達は、すぐさまクレアさんに詰め寄った。

 ちなみにじゃれ合っていたレオとティルラちゃんは、話しを聞いていなかったのか状況がわからず首を傾げてる。


「お嬢様! 例えタクミ様やレオ様と一緒とはいえ、危険過ぎます!」

「そうです! もしお嬢様の言うように奥にフェンリルがいるのだとしたら、人間が入って帰って来られるとは思えません!」

「お嬢様、考え直して下さい!」

「……ちょっと……貴方達……」


 セバスチャンさん達三人は必死でクレアさんを止めようとしてる。

 まぁ、一人で危険な森まで薬草を採りに行くような人だからな。

 クレアさん自身、冗談で言ったんじゃないだろうけど、本当に実行しそうだから必死で止めたくもなるだろう。


「お嬢様! どうか、どうかお考え直しを!」

「そうです。お嬢様にもしもの事があったりしたら!」

「お願いします! 考え直してください!」

「……」


 おや? クレアさんが黙ったぞ?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでよろしくお願いします。

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完結しました!
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