表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

433/1996

心地よい感触で目を覚ましました



「ともあれ、ありがとうございます。リーザを見ててくれて。昨日に続いて遅くまで起きてるようですし、すみません」 

「ワフ」

「いえ、これも私の役目ですので。それに……こうして幼い子供を寝かしつけたり、寝顔を見るのも、良いものです」


 リーザを夜遅くまで見ててくれたライラさんに、感謝と謝罪をする。

 俺と一緒に、レオも小さく鳴いて頭を下げた。

 俺がディームに対し、レオとリーザが家族と言い放ったから、レオからしてリーザを娘のように思う気持ちも大きくなったのかもしれない。


 頭を下げている俺やレオに対し、ライラさんは笑って言ってくれる。

 見守るように、寝ているリーザを見る目は優しく、お世話好きだから以外にも母親のような優しさを感じた。


「こうしていると、私が母親のようになった気分で……孤児院の時の事も思い出しますが。……すみません、私なんかが……」

「いえ、リーザもそう思ってくれて、多分嬉しいと思いますよ」


 俺の考えを悟って、というわけじゃないだろうが、ライラさん自身もリーザの世話をする中で、母親のような気持になったらしい。

 元々、孤児院で小さい子の世話をする事が多かったそうだから、ライラさんはそういう母性とかが強いタイプなのかもな。

 俺はリーザじゃないから、はっきりと断言する事はできないが、リーザ本人もライラさんの事を慕ってるのは間違いないし、そう思ってもらえて嬉しいだろうと思う。

 実際、リーザが俺やレオ以外で一番懐いてるのは、ライラさんだしな。

 もしかすると、母性のようなものを感じ取ってるのかもしれない。


「それでは、私はこれで。……失礼します」

「ありがとうございました。ゆっくり休んで下さい」

「ワフワフ」


 連日遅い時間までリーザを見てもらった事に感謝しつつ、部屋を出て行くライラさんを見送る。

 レオも感謝をするように鳴き、右前足を上げて見送っていた。


「さて、リーザを起こしても悪いし……疲れたから、俺もさっさと寝るか」

「ワフワフ」

「……レオ?」

「ワフ?」


 ライラさんがいなくなり、リーザの寝息だけが聞こえる部屋で、疲れた体を動かして寝るために、ベッドの方へ移動。

 その途中、横に来たレオから香る、雨に濡れた後の匂い……。

 嫌な匂いというわけではないんだが……結構強く匂う。

 今まで気付かなかったが、雨に濡れた後に風呂へ入っていないレオは、結構な匂いをさせていた。

 さすがに、メイドさんや執事さんが、綺麗に水気を拭き取ったとはいえ、匂いまではどうにもできなかったんだろう。


 なんというか……雨の降る中散歩に連れて行った後、ちょっとした獣臭と雨の匂いが混じった感じだ。

 ある程度慣れてる俺はいいんだが……クレアさん達には、ちょっときついかもしれない。

 食堂ではソーセージの匂いがあったから、多分大丈夫だったんだろうが……。

 名前を呼んで、首を傾げてるレオを見ながら、決断を下す。


「明日、起きたらまず風呂に入るぞ」

「ワフ!?」


 俺の言葉に、驚いた様子のレオ。

 そんな!? とでも言っているようだが、それでもリーザを起こさないように小声なのは、レオの優しさ……か?

 ともあれ、レオが嫌がったとしても、これは仕方ない。


「もしかすると、リーザにも臭い……とか言われるかもしれないぞ? それは嫌だろ?」

「ワフゥ……ワウゥ……」


 頑張ったのに風呂なんて……と、トホホな様子のレオだが、やはりリーザに臭いと言われるのは嫌な様子で、しょんぼりしながらも、頷いて承諾する。

 今日はさすがに、レオを風呂に入れるのは時間も遅すぎるしな。

 寝る直前になって、嫌な事が決まってしまったレオはかわいそうにも思うが、元々雨に降られてた時点で、俺の中では決めてた事だからな。

 雨には埃も混じってただろうから、毛も少しくすんでるように見える。

 せっかく、元が綺麗な毛並みなんだから、嫌な匂いを放ったりせず、清潔にしておかないとな。


 せめてもの慰めと、寝ているリーザの近くに顔を乗せて、目を閉じるレオを見ながら、俺もベッドに入って就寝した。

 目を閉じる直前、リーザの人間と同じに見える鼻がヒクヒクと動いて、笑顔になった気がした。

 もしかすると、俺やレオの匂いを寝ていても感じ取って、安心したのかもしれないな――。



―――――――――――――――――――――



「ん……?」

「あ……」

「ワフ?」


 なんとなく、寝ていた自分の顔に、気持ちのいい感触。

 それを不思議に思い、自分の喉から小さく疑問の声が漏れる。

 夢でも見ているのだろうか……フサフサとした感触を顔に感じる。

 声が漏れた後に、聞き覚えのある声が二つ。

 リーザと、レオか?


「んあ……?」

「あ、パパ起きた?」

「ワフワフ」


 声の主が誰か頭で考えるのと一緒に、半分以上夢の中に行っていた意識が覚醒する。

 それと同時、さらに漏れた声に、リーザとレオが反応する声。

 朝かな?

 そう思って、閉じていた目を開けると真っ暗な視界。

 真っ暗……というより、何かに塞がれている?

 

「なんだ、これ……?」


 声を上げて、視界を塞ぐ物を両手で掴む。

 それは、フサフサとした毛でできており、寝起きの俺にとってもう一度睡眠に誘うような、柔らかい手触りだった。


「にゃふ! パパ、くすぐったいよ……」

「お? リーザか?」

「おはよう、パパ!」

「ワフ!」


 ふにふにと、視界を塞ぐ物に触れ、感触を楽しんでいると、近くからリーザが笑いを堪えるような声が聞こえた。

 その声に導かれるように、体を起こそうとすると、フサフサしていた者が顔から外れ、ベッドにモフンと落ちた。

 体を起こした俺の横には、背中を向けて顔だけをこちらに向けているリーザと、ベッドに顔を乗せてこちらを見ているレオだった。


「……おはよう。今の、リーザの尻尾だったのか?」

「うん! パパ、昨日は頑張ってたみたいだから、リーザの尻尾で楽しんでもらおうかなって。パパも皆も、リーザの尻尾や耳を触るのが、嬉しそうだったから。……耳は、顔に乗せられないし、尻尾の方が良いかなって、ママと相談したの!」

「ワフ!」

「そうか……あー、うん。ありがとな、リーザ」

「うん!」


 どうやら、俺の視界を塞ぎ、気持ちの良い感触で楽しませてくれていたのは、リーザの尻尾だったようだ。

 レオの毛並みとはまた違うが、リーザの尻尾も十分過ぎる程に触り心地がいい。

 おかげで、気持ち良く二度寝しそうだったぞ……?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かった。
[一言] 更新有り難う御座います。 ……幸せ、もふもふモーニングコール!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ