レオがソーセージを食べ終わりました
ディームに関わる話が終わり、レオがソーセージを食べているのを見守る俺を残し、明日は早くから動くために少しでも寝ておく事として、クレアさんとエッケンハルトさんは食堂から出て行った。
食堂を出る直前、安眠薬草を求められたので、メイドさんに部屋から鞄を持って来てもらって、中に入ってる薬草を渡しておいた。
俺が原因で遅くまで起きてたんだから、少しでも休めるようにこれくらいはな。
……感覚強化の薬草や、身体強化の薬草も含めて、売り物用以外の薬草が少なくなってるから、明日あたりに作って補充しておこう。
「ワシャワシャ……ワフゥ……ワウ?」
「食べ終わったか。皆、話も終わって部屋に戻ったぞ?」
夢中でソーセージを食べていたレオが、皿に載せてあった物を全て食べ終え、満足そうに息を吐く。
そこで顔を上げて、クレアさん達がいない事を初めて知って、不思議そうに首を傾げた。
どれだけ夢中で食べてたんだレオ……好物だからだろうが、スラムで鋭く人や音を感知していたのはなんだったのか……と思わざるを得ない。
「ほらレオ、喉も乾いただろ? 食べてばかりじゃなく、ちゃんと水を飲むんだぞ?」
「ワフ! ガフガフ……」
クレアさん達について、食堂を出て行ったセバスチャンさんが置いてってくれた、レオ用の水を、床に置いて飲ませる。
さすがに、バケツのような入れ物を、テーブルに置くわけにはいかないからな。
牛乳でも良かったんだが、ラクトスとの往復をして男達を捕まえたり、大量のソーセージを食べたレオだから、水の方が喉の渇きを潤せるだろう。
「タクミ様、リーザ様の事なのですが……」
「リーザがどうかしたんですか?」
レオが勢いよく水を飲んでいる様子を見守っていると、食堂に残ってくれたメイドさんから声をかけられた。
リーザはライラさんに任せてきたはずだから、ちゃんと見てくれてるはずだけど……どうかしたんだろうか?
「ライラより報告されております。なんでも、タクミ様とレオ様が屋敷を出発してしばらく後、寂しくなられたようで……今はタクミ様のお部屋で休んでおられます」
「そうなんですか……やっぱり、まだ離れるのは早かったかなぁ?」
「ライラも一緒にいたようですが、眠くなってきた段階で、タクミ様やレオ様がいない事で寂しくなった……という事のようです。我々が付いておりながら、寂しく思われたとの事、申し訳ありません」
「いえいえ、まだまだリーザは小さいですからね。お世話してくれるだけでもありがたいのに、これ以上を求めたら、罰が当たりますよ」
「罰……ですか?」
「あはは、まぁそこは俺が以前いた場所での、言い回しという事で……」
リーザの事を話し始めたメイドさんは、ライラさんより幾つか年齢を重ねているようで、メイド長とも言える風格がある。
俺やレオのお世話係となったライラさんと違い、よくクレアさんの傍で見ていた事が多いから、もしかしなくてもそういう役割なんだろう。
今は、クレアさんが部屋に戻ったので、他の使用人さんの代わりにここにいるんだろうと思う。
それにしても、よく懐いてるライラさんがいても、リーザは寂しがったか……。
遠慮がなくなって、屋敷の人達にも心を許し始めたと思ったが、まだ少し早かったのかもしれない。
今まで寂しい思いはして来たんだろうが、俺やレオには特に懐いてる事もあって、眠くなって感情が溢れて来たのかもしれないな。
お世話してる相手を、寂しい思いにさせた事を謝るメイドさんだが、そこまで求めるのは、さすがにな。
そもそも、リーザを置いて出た俺が悪いのだし、メイドさんを責めるつもりは毛頭ない。
「ワフゥ……」
「お、飲み終わったか。満足したか?」
「ワフ!」
「それじゃ、部屋に戻ろうか。リーザが寂しくしてるみたいだからな」
「ワウ!」
水を飲み干して、満足した溜め息を吐いたレオ。
それを見て、部屋に戻るように声をかける。
勢いよく頷くレオを連れて、メイドさんに挨拶をして食堂から部屋へと向かった。
「タクミ様、レオ様も、お帰りなさいませ」
「ただいま戻りました、ライラさん」
「ワ……ワフ……」
部屋に入ると、ベッドの傍で座っていたライラさんが立ちあがり迎えてくれる。
こちらにお辞儀をするライラさんに挨拶をしながら奥を見ると、ベッドにはリーザが健やかな寝息を立てて寝ている様子だった。
俺の後から部屋に入って、リーザに帰って来た挨拶をしようとしたレオが、奥にいるリーザが寝ているのを見て、一瞬大きな声を出そうとしたのを途中で止め、囁くような小さな鳴き声でライラさんに挨拶をした。
「リーザ、寝てるんですね。寂しがっていたと聞きましたが」
「はい。タクミ様達が出て行く少し前、リーザ様に用意していた部屋にてご一緒させて頂きましたが……しばらくすると、不安になったようです。そこで、少しでもタクミ様達の気配が残っているであろう、この部屋に来たがるようになって……」
「そうですか……まだ、少し早かったですかね」
「そのようですね」
「ワフ? ワフワフ」
「レオ、起こすなよ?」
「ワウ」
部屋を出る時に持っていた荷物は、返って来た時に迎えてくれたメイドさん達に渡してある。
剣や刀は既に部屋に持って来られていたし、濡れた服や借りた外套は、洗濯してくれてるんだろう。
ライラさんと話しながら、その確認をし、リーザが寝ている様子を見る。
そういえば、リーザ用の部屋ってのもあったんだったな。
そこでライラさんと一緒にいたはずなのに、俺やレオが近くにいないという事もあって、眠くなって来たのと一緒に、寂しくなってしまったのか。
屋敷に連れ帰ってからは、俺やレオと一緒に寝てたから、寝る時にいないのが特に寂しくなったのかもしれない。
嫌な夢を見たりした事もあるようだし、起きたら俺やレオに抱き着いてたりした事もあったから……まだまだ甘えたい年頃なんだろう。
というか、リーザの年齢ならまだ親に甘える事が当然だしな。
話してる俺とライラさんの横を抜け、ベッドに寝ているリーザを窺うように顔を近付けるレオに、一応起こさないように注意しておく。
レオはわかってるようで、小さく囁くような声で鳴いて返事をした。
リーザが寂しがってたと聞いて、少し心配になったのかもしれないな。
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