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考え違いを報告しました



「ほっほっほ、この事を聞いたら、リーザ様も大層喜ぶ事でしょう」

「いや、その……それは止めて下さい。恥ずかしいので……」

「うむ、タクミ殿が恥ずかしそうにするのも、また良いな。だろう、クレア?」

「そうですね……はっ! んんっ! いえ……タクミさんに失礼ですよ、お父様」

「そろそろ認めてしまえばいいものを……」


 リーザにまで教えようとするセバスチャンさんを、なんとかお願いして止めてもらう。

 こういうのは、本人に話したりはしないもんだ……よく知らないが。

 顔が熱くなっていて、確実に赤い顔をしている俺を観察し、エッケンハルトさんが楽しそうだ。

 エッケンハルトさんに声をかけられたクレアさんは、同意する途中で我に返り、父親を睨む。

 それに対し、何故か溜め息を吐くように呟くエッケンハルトさん……二人の間で何かあるようだが、なんだろうな?


「あぁ、そう言えば……エッケンハルトさん、セバスチャンさん」

「ん、何だ?」

「どうされましたか?」

「ディームの事なのですが……帰りにニックと会って少し話をしたんです」

「ほぉ、ニックと言うと、あのタクミ殿が雇った男だな?」

「どんな話をされたのですか?」

「それがですね……」


 クレアさんをからかうようにしていたエッケンハルトさんに、セバスチャンさんにも声をかけ、ニックと話した事を伝える。

 確かニックは、公爵家が出てくれば、臆病者のディームは逃げるばかりで、スラムの人達が蜂起するような事はないだろうと言っていた。

 ニックが元々スラム出身である事と一緒に、ディームの事を皆に教える。

 臆病者で、誰も信頼せず、誰からも信頼されていない……寂しい奴だな。


 誰も信頼しないという部分に、スラムで暮らしていてなのか、それまでの過去で何かあったのかもしれないが、あまり同情する気が出ないのは、リーザを標的にしたという事があるからだろう。

 信用しない代わりに、誰かを利用し、力でのし上がる……というのも一つの手ではあったんだろうが、俺にはそれを真似する気も起きなければ、参考にする気も全くない。

 ……これから、人を雇って誰かの上に立つという事が予定されているが、お互い信頼できる関係を築きたいものだ。


「ふむ、成る程な。……セバスチャン、我々は見誤っていたようだな?」

「そのようですな。衛兵達の捜査から逃れ、スラムのボスとして周辺の街を含めてまとめ上げた人物。狡猾な者と考えて、もし何かがあった時には武力蜂起によって暴れる……と考えていました」

「だが、タクミ殿がニックから聞いた限りでは、違うようだ」

「はい。臆病な人物で、誰も信頼しないと……確かに、スラムで生活している人物には、そのような人も多くいるようです。臆病なために、居場所を悟らせず、隠れ住んでいたと考えると、確かにその通りと思わざるを得ません」

「騙された……というよりは、我々が勝手にそう思い込んでいたのだろうな。自信過剰というわけではないと思うのだが、公爵家や街の衛兵の捜査力は高いと思っている。だからこそ、その手から逃れる者を過大評価していたと」

「そうですな……」


 この世界について、俺はまだよく知ってると言えるわけではないが、公爵家というだけで絶大な権力があると思ってる。

 何せ、貴族の位で言うと、王家の次にあたるわけだしな。

 王家の上には、国王様というのがいるんだろうが、とにかく国でもかなり上の地位という事になる。

 その公爵家が指揮する人達や、俺が見る限りではしっかり治めてる公爵領の中にある街の衛兵。

 人数も多いのだろうし、その捜査から逃れていたというのは、偶然もあるのかもしれないが、それだけで凄い事だ……真似をしようとは思わないけどな。


 だからこそ、エッケンハルトさん達上から見てる人達は、ディームの事を狡猾で、色々と企んでいるのだと考えたのかもしれない。

 上に立つ人というのは、最悪の事態の想定をしなければならない事がある……というのは何処かで聞いた話だが、それもあって、もしかするとディームがスラムをまとめ上げて武力蜂起をする……ディームだけを公爵家が捕まえると、スラムの人達が動き出す……なんて事を考えてしまったんだろう。

 スラムには色々な人が集まって来るのだから、そこのボスとして君臨しているというだけでも、そういう評価をしてしまった一部分なのかもなぁ。


「お父様……つまり、お父様とセバスチャンがしっかりと、そのディームの事を把握していれば、タクミさんは危険な事をせずに済んだと……そういう事ですよね?」

「う、うむ……まぁ、そうなるな……」


 さっきまでエッケンハルトさんにからかわれていたクレアさんは、反撃の糸口……とは考えてないかもしれないが、ジト目になって問いかける。


「これに関しましては、私の調査不足でした。申し訳ありません」


 そんなクレアさんに対し、怯むエッケンハルトさんだが、セバスチャンさんは素直に非を認め、頭を下げて謝った。

 まぁ、さすがにセバスチャンさんが、謎な情報網を持っているとしても、全て知る事ができるわけじゃないから、仕方ない。

 でも、何故か俺が家族について叫んだ事は知ってるんだが……追及するとまた恥ずかしい目に遭う可能性もあるし、そこはかとなく踏み入れてはいけない領域のような気がするので、触れない事にしようと思う。


「セバスチャンは情報を集めた責任があります。ですが、それを判断したのはお父様なはずです。私にも、下手に手を出すと危険だから、それとなく調べるだけにしておけ……というのは言われていました。ですが実態は……」

「ま、まぁ、クレアが手を出すと、手痛いしっぺ返しが待っている可能性はあったのだぞ? それに、治安の悪いスラムの事だからな……戦闘もできないクレアが、直接乗り込わけにもいかないだろう?」


 クレアさんの追及に、汗を流しながら弁明するエッケンハルトさん。

 一応、エッケンハルトさんが言う事はわからなくもない。

 スラムだから、治安が悪いのは当然だろうし、女性であるクレアさんが手を出すべき問題じゃない……とエッケンハルトさんは考えていたんだろう……多分。

 娘が何か危険な事に関わってしまう……という心配もあったんだろうな、とも思った。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 常に最悪を想定するのは為政者なら……ねぇ? ……と、なるとお嬢様はまだまだですかね……。
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