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411/1996

結局皆に知られていたようでした



 セバスチャンさんから渡されたのは、以前にクレアさんから見せてもらった事のある、金属にシルバーフェンリルが彫られた紋章だ。

 それがあれば、公爵家が身分の保証をする者としての証拠になるんだろう。

 その後のセバスチャンさんからされた注意も、当然だ。

 俺が今回自発的に動くのは、ディームを公爵家が表だって対処できないからこそなんだからな。

 さすがに、スラムの人間に見せびらかしたりはしない。


「あとは、こちらを……」

「これは?」


 さらに懐から折りたたまれた紙を取り出したセバスチャンさんから、それを受け取る。


「そちらは、私共で調べたディームの所在が数か所書かれております。街の地図と一緒なので、そこを調べるとよろしいかと。ただ……常に居場所を変えるので、別の場所にいるかもしれません」

「成る程……発見するためには、一気に調べないといけないわけですね」

「はい。数か所当たりを付けても、向こうは移動している。日を分けて調べても、以前の場所に戻る事も考えられるので、一気に調べるしかありません。そこに記してある場所にいればいいのですが……」

「ありがとうございます。助かりました、何のあてもなく、闇雲に調べるよりは全然マシです」

「ほっほっほ、正しい情報かどうかの確認は……タクミ様にお任せ致します」

「はい、任せて下さい」

「ワフ」


 渡された紙には、地図と一緒にディームがいる可能性のある場所を記した物らしい。

 隠れ家を常に変える相手だから、まだその場所にいるかはわからないが、なんの情報もなしに手探りで調べるよりはやりやすい。

 元々、数日がかりで調べようとしてたから、これがあるだけでも大分時間がかからなくなるだろう。

 最悪の場合、レオの鼻と気配察知とかに頼ろうかとか考えてたからな……相手の匂いも知らないのに。

 ……俺、無計画過ぎるな。

 自発的に動いても、もっとよく考えてから動くように気を付けないと……。


「それとですが……旦那様からは刀の使用許可が出ております」


 セバスチャンさんが、俺が剣と一緒に腰に下げている刀へ視線を向けながら伝えられる。

 エッケンハルトさんも、俺が動くとわかっていたようだ。

 ……うん、俺に隠し事とか、秘密の行動とか、向いてないな。


「わかりました。まぁ、刀は念のためなので、使わないように気を付けます」

「そうですな。くれぐれも、お気を付け下さいませ。ラクトスを壊滅させませぬよう、お祈りしておきます」

「ははは、そんな事はしませんって。それじゃあ……」

「はい、無事のお帰りをお待ちしております。クレアお嬢様も、首を長くして待っていると思いますよ?」

「……あ。あー……ははは、わかりました。細心の注意を払います」


 刀にそっと手で触れ、感触を確認しつつセバスチャンさんに頷く。

 玄関ホール中央に戻ったセバスチャンさんから、見送りの言葉と冗談を笑って受け止めながら、気を付ける事を約束する。

 最後に、セバスチャンさんがチラリと玄関ホールの端の方へ視線を向けながらの念押し。

 その視線が気になってそちらを見ると、柱の陰に見覚えのある人が佇んでいるのが見えた。


 多分、あっちは俺を隠れて見守ってるつもりで、こちらから見つかってないと思ってるのかもしれないけど、顔と体が半分くらい出てしまってる……隠れるの下手だなぁ。

 なんて、微笑ましく思いながら、セバスチャンさんに返すように、柱で見守ってくれてる人にも聞こえるように、少しだけ大きな声を出して、玄関を出た。

 ……多分、俺の前に出たら止めたくなるだろうから、隠れてるんだろうなぁ……気を失った時も、怪我をした時も、人一倍心配してくれてたし。

 自分が危ない目に合う事よりも、人が危ない目に合う事は嫌な人だから――。


「あ、そうだ……」

「ワフ?」


 屋敷を出ようとして、ふと思い立ち、振り返る。


「セバスチャンさん、帰ってくるまでにソーセージを用意しててもらえますか? レオがお腹を空かせるかもしれませんので」

「ワフ!? ワフッワフッ!」

「畏まりました。当屋敷でできる限りの用意をさせて頂きます……」

「ははは、多過ぎても食べきれませんから、程々で……」

「ワフッワフッ」


 玄関ホールの中央にいるセバスチャンさんに、ソーセージをお願いする。

 隣で聞いていたレオは、ご褒美がもらえると喜んでいる様子で、尻尾をぶんぶん振っている。

 嬉しいのはわかるが、尻尾の端が俺の体にペチペチ当たって少し痛いから、落ち着いて欲しい。

 それに、まずはディームの事を何とかしないといけないからな……今すぐ食べられるわけじゃない。

 まぁ、レオには頑張ってもらわないといけないから、これくらいのご褒美は用意してもらうべきだよな。


 そう考えながら、玄関ホールの隅で柱に隠れてる人物も、コクコクと頷いているのを確認して、頬を緩ませながら屋敷を出た。

 セバスチャンさんは、深々とお辞儀をして送ってくれた。

 それはいいんだが、レオ……尻尾痛い……。



「よし、行くぞレオ。少しだけ速めに走ってくれ。早く帰って、皆を安心させたいからな? ソーセージもあるし……」

「ワウ!」


 意気込み十分なレオの返事。

 好物のソーセージが待っているからか、それとも皆を安心させたいからか……両方か……ソーセージのためだけに頑張るのではないと思いたい。

 ともかく、屋敷を出てすぐレオの背中に乗せてもらい、ラクトスに向けて出発した。

 預かった紋章と、ディームの居場所が記された紙は、落とさないようにしまっておく。


 急いでラクトスに向かうように指示をして、レオに走ってもらう。

 速度は、ランジ村へ行くのを急いでいた時よりは、少し緩めだ。

 それでも、しがみ付いていないと危ないけどな。

 リーザやティルラちゃんが乗る時には出さない速度だ。


「やっぱり、皆わかってたんだろうなぁ。まぁ、セバスチャンさん達が皆に伝えたのかもしれないけど……」

「ハッハッハッハ……ワフ?」

「いや、門が開いてたからなぁ……」


 走るレオにしがみ付きながら、出発してすぐの事を思い出し、呟く。

 息を吐いていたレオが、俺の呟きに反応する。

 結構風の音がするが、それでも聞こえるとは……やっぱりレオの耳は特別なんだろうな。 

 そんなレオに説明するように話し、止めなかった屋敷の人達を思い、心の中で感謝した。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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