レオと協力して動く事にしました
「ディームという奴なんだけどな、エッケンハルトさんでもすぐに対処できる問題じゃないみたいなんだ。まぁ、色々調べてはいるし、時間の問題だとは思う」
「ワフワフ」
「でもな、このままにしておくと、いずれ捕まえるとしても……リーザを気楽に街に連れて行けないだろう? リーザにはなんの心配もなく、楽しく過ごして欲しいからな。孤児院で子供達と遊ばせたり、リーザの欲しい物を買ったりな。また屋台で美味しい物を食べるのでもいい」
「ワフ!」
「でも、いつ捕まるかわからないディームがいると、またラクトスに行った時、リーザが標的にされるかもしれないんだ。……ディームがいなくなっても、スラムの人達の考えがすぐに変わるわけじゃないが、それでも多少は安全になるだろ? だから……」
「ワフ。ワフワフ? ……ワウ!」
レオにリーザの安全をという目的と、どうするかを話し合う。
ディームが原因とわかった時からだが、レオは随分と乗り気だ。
「さすがに、すぐにどうにかできるとは思わないが……ともかく、行動をしたい。やってくれるか、レオ?」
「ワフワフ。ワフー、ワウ?」
「ははは、そうか、ありがとう。……さすがに、レオだけに任せるわけにはいかない」
レオに問いかけると、二つ返事のように頷いて了承してくれた。
むしろ、俺がやらなかったら、自分だけで行動を起こすと言うように、こちらを見て鳴いたが、それはちょっとな。
レオだけに任せたら、本当にラクトスを攻撃しかねないし……俺も何かしたいしな、自己満足かもしれないが。
昔の俺……それこそ、この世界に来てすぐの俺だったら、こうして自発的に動く事はなかっただろうな。
この世界に来て色々経験して、色んな人と出会って、リーザとも出会った。
……俺も、変わって来てるのかもしれないな。
「ただいま、パパー!」
「お帰りリーザ。お、ちゃんと綺麗になったな?」
「ワフワフ」
「うん。ライラお姉さんに洗ってもらったの!」
「そうかぁ、良かったな。――ありがとうございます、ライラさん」
「いえ、リーザ様のお世話は楽しいので、念入りに洗わせてもらいました」
「ははは、そうですか」
しばらくレオと話していたら、風呂から上がったリーザが体から湯気を出しながら、部屋へと戻って来た。
リーザがしっかり汚れを落としてきたことを確認し、褒めるのと一緒にライラさんへお礼を言う。
お世話好きなライラさんは、リーザを洗うのを楽しんだようだが……そのワキワキとしている手は何だろう?
もしかすると、風呂に入れるついでに、リーザの尻尾でも撫でて楽しんだのかもしれない。
「ライラさん、すみませんが……一つお願いがあるんです」
「はい、なんでしょうか? ……予想は付きますが」
「そうですか?」
「食事の時も、何か考えていらしたようですので。先程の話もありますし……」
「わかりやすかったですかね。ともかく、すみませんが、今晩はリーザを預かってくれませんか?」
「パパ、どうしたの?」
ライラさんには、俺が何かを考えていたのがわかっていたようだ。
レオにもバレてたし、俺ってそんなにわかりやすいのだろうか?
いや、レオは付き合いが長いし、ライラさんは使用人として、俺やクレアさん達の事をよく見ているからだろうな……多分。
気を取り直し、ライラさんにお願いすると、話を聞いていたリーザが俺に不安そうな視線を向けた。
「なんでもないんだよ、リーザ。ちょっとやらないといけない事があってね。大丈夫、すぐに帰って来るから」
「……そうなの?」
「あぁ、そうだ。リーザを置いて、俺がどこかへ行くなんて事は、絶対にないからな?」
「うん……パパを信じる」
リーザはリーザで、俺の様子に何かを感じ取ってるんだろう。
それでも、視線を合わせて話すと、信頼して頷いてくれた。
これが、屋敷へ来てすぐだったら、頷いてくれなかっただろうか……少しずつでも、リーザに信頼されてきているのを実感する。
「畏まりました。リーザ様がよろしいのであれば、私がお預かり致します」
「すみません、昨日もリーザを見ていて遅かったのに……」
「いえ、その分休ませてもらいましたから。リーザ様、昨日に続き今日も私がお相手しますが、よろしいですか?」
「うん! ライラお姉さん、優しいから好き!」
リーザはライラさんに随分懐いてるからな。
ライラさんの問いかけに、嬉しそうに頷くリーザ。
クレアさんやアンネさんにも懐いてるが……多分色々お世話してくれて、接してる時間が長いライラさんに一番懐いてそうだな。
「ありがとうございます、リーザ様。……それでは、タクミ様。準備もあるでしょうから、一旦部屋を移動し、リーザ様と過ごさせて頂きます。」
「はい、お気遣いありがとうございます」
「ワフ」
リーザを連れて、部屋を出て行くライラさんに、レオと一緒に感謝を込めて頭を下げる。
まぁ、ライラさんも嬉しそうにしていたから、もしかすると存分にリーザの耳や尻尾を撫でるつもりなのかもしれない。
それくらいは、報酬としてあってもいいかなと思う。
ライラさんなら、リーザが嫌がる事はしないだろうし。
「さて、それじゃ……」
「ワフ……」
レオと俺だけになった部屋で、準備をする。
一緒に声を出して、何かの準備をするよう動いたレオだが、俺と違って持つ物もないし、準備は必要ない。
単純に、待ってる間落ち着かなかっただけだろうと思う。
部屋の中をウロウロするレオをそのままに、出る準備を済ませる。
「……念のため、これも持って行くか」
準備の途中、手に持ったのはエッケンハルトさんより預かった刀。
レオがいてくれるから、滅多な事にはならないと思うが……ランジ村でオークと戦った時の事を思い出して、念のために持って行く事にした。
もし、いつもの剣が折れてしまったら、その時は代わりに使うつもりだ。
夜だし、暗いから、刀を持っていてもあまり見られないだろうしな……後で、エッケンハルトさんには謝っておこう。
「よし、それじゃレオ……行くか!」
「ワウ!」
準備を終えてレオに呼び掛け、意気込んで部屋を出た。
さぁ、リーザがイジメられていた元凶を、取り除きに行こう……!
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