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実戦訓練をする事になりました



「ともあれ、タクミ殿達も来たんだ。食事をしながら、詳しい話を聞こう」

「はい。……頂きます」

「頂きます!」

「わかりました」

「そうですわね」

「はーい」

「ワウ!」

「キャゥ!」


 既にテーブルには、美味しそうな料理が並んでいた。

 俺達が揃った事で、エッケンハルトさんが皆に言って、一斉に食べ始める。

 ティルラちゃんとリーザは、レオやシェリーとも一緒に、街であった事を話している。

 子供ながらに、楽しい事なんかの共有をしてるんだろう。

 リーザが楽しそうだし、ティルラちゃんには感謝だ。


「そうか……そんな事があったのか。タクミ殿が見たという犯人は?」

「今、衛兵が捜索中だそうです。スラムにいるとは特定できているので、すぐに捕まると思います」


 衛兵さん達が捜索中だと言うのは、街を出る前に聞いた話だ。

 俺達が知っている情報と、騒ぎの後に調べた事で、スラムにいる犯人を、衛兵さん達が探し出し、捕まえる……という事みたいだな。


「タクミ殿、その犯人というのは、やはり?」

「はい。俺とエッケンハルトさんが、リーザを見つけた時にイジメていた数人のうち、一人だと」

「そうか……やはり、スラムでは獣人は良い扱いではないのだな。わかってはいたが……」

「お父様、スラムに関して、何か方策を練る必要があるかと思いますが……?」

「うむ。放っておくつもりはない。まぁ、すぐに改善するのは難しいだろうがな」


 スラムの人間が、全て悪い人間というわけではないから、どうにかする事を考えるにしても、難しい問題だ。

 リーザのような孤児もいるだろうし、もしかしたら石を投げた犯人もそうなのかもしれない。

 仕事が見つからず、まともに生活で来てない人もいるだろうし……俺にはどうしたらいいかまでは、わからないからな。

 クレアさんとエッケンハルトさんが話す横で、アンネさんが憤慨した様子で食事をしている。


 リーザが石を投げられて怪我をした……という事に怒っているようだ。

 随分リーザの事を気に入ってくれたみたいだが、そんなに勢いよく八つ当たりするように食べてたら、ソースとかが綺麗な髪に付いてしまいそうた。


「おぉ、そうだ。タクミ殿、ティルラ」

「どうしましたか?」

「なんですか、お父様?」


 クレアさんとの話を一段落させ、急に上機嫌になったエッケンハルトさんが、俺とティルラちゃんに声をかける。

 エッケンハルトさんのこの表情……微妙に嫌な予感がしてならない。

 ティルラちゃんは、リーザとの会話を中断させ、エッケンハルトさんの方へ顔を向けた。


「ようやくセバスチャンから許可が取れた。数日後にはなるが、二人を連れて、屋敷を出るぞ」

「セバスチャンさんの許可……屋敷を出るって、何処へ行くんですか?」

「ラクトスの街に行くんですか?」


 笑顔で、俺達を何処かへ連れて行くと言うエッケンハルトさん。

 セバスチャンさんの許可を取る必要があるとは、よっぽどの事のような気はするが……一体どこに?

 クレアさんは、この話を知っていたようで、額に手を当てて溜め息を吐いている。


「いや、街じゃない。フェンリルの森だ」

「フェンリルの……また、シルバーフェンリルを探しに行くんですか?」


 フェンリルの森に俺達を連れて行く……クレアさんの方を横目で見ながら、首を傾げる。

 以前はシェリーを発見して帰って来たが、結局シルバーフェンリルを発見する事はできなかった。

 一応、シェリーがいた事で、フェンリルが森にいる事の確認はできたが、また今回も探索に行くという事だろうか?


「いや、探索に行くのではない。二人の鍛錬のためだな」

「鍛錬……」

「うむ。二人の剣の鍛錬は続いているが、ここらで実戦も経験しておくのはどうかとな。まぁ、タクミ殿は既に経験済みだが、それでもいい鍛錬になるだろう。」

「そのための森ですか?」

「あぁ。森にはオークがいるからな。それを見つけ出し、倒す事が今回の目的だ。少し前から考えていたんだが、今日ようやくセバスチャンを説き伏せた」

「……はぁ……ですが、条件として、護衛を連れて行く事。さらに、レオ様が行く事が前提です」

「この通り、あまり乗り気じゃない様子でな? まぁ、レオ様が来てくれれば、危険はほとんどない事が約束されるから、条件に入る事になった。どうだ、来てくれるか?」


 森への探索ではなく、今回はオークを倒す事を目的とした鍛錬らしい。

 確かに、以前探索した時もオークにはよく遭遇したから、実戦を経験するという意味では、近場だし手頃なんだろう。

 それに、レオがいればもしもの時も助けに入ってくれるだろう……という考えか。

 溜め息を吐くセバスチャンさんは、珍しく疲れた様子を見せている事から、エッケンハルトさんからしつこく説得されたんだろう。

 以前、ティルラちゃんが従魔を……と言っていた時、悪巧みをしているように笑っていたのは、もしかしたらこの事を思いついたからかもしれないな。


「でも、どうしていきなりそんな事を? じっくり鍛錬をしてからでもいいんじゃないですか?」

「それも考えたんだがな。だが、私がいつまでもこの屋敷にいて、二人の鍛錬を見てやれるわけではない。さすがに、本邸に帰らねばならんのでな」

「それは、確かに……」


 エッケンハルトさんは、公爵様だ。

 当然仕事はいっぱいあるだろうし、この屋敷でその全てをこなす事はできないだろう。

 というより、例の店の件が片付いてからもずっと屋敷にいて、大丈夫だったんだろうか?

 さすがに、仕事を全て放り出してここにいる……という事はないだろうが。


「なのでな、最後というわけではないが、今のうちにできる限りのことをしようと思ったのだ。じっくり鍛錬するよりも、一度でも実戦を経験する方が、上達は早いからな」

「そうですね」


 実戦を経験する方が、ただ鍛錬をするよりも上達が早いと言うのは理解できる。

 俺自身、自分で経験して実感するところだ。


「タクミ殿がランジ村へ行けば、当然レオ様もついて行くだろう? 今のうちに、ティルラの方の鍛錬を、ある程度進めておきたいのだ」

「私ですか?」

「うむ。タクミ殿はもう既に実戦を経験しているが、ティルラはしていない。私の知らない場所で実戦を経験するような状況には、ならない方がいいが……それなら、まず目の届く場所で経験させてみては、と考えたのだ。レオ様がいなくなれば、護衛しかいなくなるしな……」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 あぁ、そう言えばこのお屋敷の主はお嬢様……。 公爵様、本宅を空けすぎたか?
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