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耳隠しの帽子は喜んでくれました



「そうだ、リーザ。これを被っておくといいぞ?」

「ん?」


 リーザの魔法はいずれ……という事で少し談笑し、イザベルさんの店を出る前に思い出した。

 ハルトンさんが作ってくれた、リーザ用の耳隠し帽子だ。

 受け取った後、すぐにレオが怒るという騒ぎがあったから、すっぽり頭から抜け落ちてた。

 これをしていれば、獣人と知られる事が減って、余計な騒ぎに発展する事は少なくなるだろう。


「ほら……どうだ?」

「んー……ちょっと耳がムズムズする。けど、可愛い!」

「ははは、そうか。ハルトンさんに感謝だな」

「似合ってるわよ、リーザちゃん」

「中々可愛いじゃないか」


 帽子を取り出してリーザに被せ、顎下でボタンを留めてやる。

 耳を収める部分があるとはいえ、少し耳が押し潰されてる感じなんだろう、難しそうな顔をしていたが、魔力検査をした水晶に移る自分の姿を見て、気に入ったようで笑顔になった。

 外から見ると、耳のある部分が二つ、こんもりと盛り上がっているが、これだと獣人の耳は隠せてるだろう。

 今は服を変えてないから尻尾が出てるが、そちらも隠す服にしたら、単なる可愛い女の子にしか見えないと思う。

 クレアさんとイザベルさんも、微笑んで帽子を被ったリーザを褒めてる。


「えへへへ……」


 皆から褒めれて少し照れ臭そうにしてるリーザだが、喜んでるのは間違いないだろうから、買って良かったと思う。

 気が付いて用意してくれたハルトンさん、ありがとうございます。


「それじゃ、イザベルさん。また来ますね」

「イザベル、またね」

「はいよ。今度はリーザと一緒に、もっとゆっくりできる時間に来な」

「ははは、そうですね」

「お婆ちゃん、またねー!」

「あぁ、またね。タクミやクレア様に、存分に甘えるんだよ?」

「うん!」


 イザベルさんと話して、店の外へ。

 リーザを孫のように可愛がってるとわかって、ここに来て良かったな。

 スラムでの事や、さっきの騒動はあったが、リーザの事を獣人だからと差別しない人がいるのは、救いに思えた。

 リーザを拾ったお爺さんの事も聞けたしな。


 お爺さん……レインドルフさんに関して、多くはわからずとも、ちゃんとリーザを可愛がっていた事がわかったのも嬉しい。

 リーザから聞くだけで、どういう人なのか今まで全くわかってなかったしな。

 悪い人ではないという事くらいは、リーザを見ていればわかるが。


「ママー、見て見て!」

「ワフ?」


 外へ出たリーザは、まずレオの前へかけて行き、俺が被せた帽子を見せる。

 多分、ハルトンさんの店から出た後も、こうして服を披露していたんだろう。


「ワフ、ワフワフ」

「でしょー、可愛いよね。パパに買ってもらったの。これがあると、耳を隠せるからって」

「ワフー。ワウ?」

「まぁ、ハルトンさんが用意してくれてたんだけどな」


 可愛いと褒めるように、頷いて鳴くレオに対し、嬉しそうに買ってもらった事を報告するリーザ。

 それを聞いて、まるで気が利くな? とでも言いたげに俺を見て鳴くレオ。

 実際はハルトンさんが気を利かせてくれたんだけどな。

 しかしレオ、そうやって俺を見て首を傾げるという事は、俺が気が利かないみたいじゃないか……。

 まぁ、気が利く方とは、自分でも思ってないが……。



「ふんふん……ふ~ん……」


 レオに乗り、上機嫌なリーザと一緒に、ラクトスの西門へと向かう。

 そろそろ日が沈み始めて、暗くなって来たから屋敷へ戻らないといけない。

 リーザは鼻歌を歌うようにしながら、歩くレオの揺れに合わせるように、体を揺らす。


「こうしてると、獣人という事もわかりませんね」

「そうですね。レオに乗っていれば、リーザの尻尾も隠れますし」


 微笑ましく揺れているリーザを見ながら、クレアさんと話す。

 レオには綺麗で長い毛があるから、リーザが背中に座ると、尻尾が毛に埋もれて見えなくなる。

 さらにレオは俺達が見上げる大きさだから、尻尾を上向きに伸ばさない限り、見える事はないだろう。

 こうしていると、ただ上機嫌な女の子にしか見えないな。


「リーザちゃんが怪我をした事は別として、連れて来て良かったようですね」

「そうですね。リーザとも色々話せましたし……イザベルさんのように、知り合いも見つけられました。これまでより、リーザとの距離が近く感じますね」

「はい。屋敷では私達にも、遠慮をしているように感じましたから」

「多くの人が好意的に接して来る事に、慣れていないんでしょうね。俺に対しても、やっぱり遠慮のようなものは見え隠れしてましたから」


 ハルトンさんの店や、ハインさんの店での事。

 さらにはイザベルさんとの関係で、ようやくリーザは警戒心が解けたように思う。

 屋敷に居ても、少しずつ和らいではいたと思うが、街での事でそれが早まったのは間違いない。

 それを考えると、石を投げられてからの騒動や、クレアさんに抱き締められた事もプラスに働いたんだろう。

 ……まぁ、リーザが怪我をした事だけは、許せないとも思うが。


「タクミさんは、リーザちゃんを怪我させた犯人が捕まったら、どうしたいですか?」

「突然なんですか?」

「いえ、獣人の事をよく知らないための、差別や迫害だとは思いますが……タクミさんならどう判断するかを聞きたくて……」

「そうですね……」


 リーザに対して、石を投げ、怪我をさせた事は許せないと思う。

 直接その瞬間を見たわけじゃないが、想像しただけで怒りの感情が沸いて来るくらいだ。

 かといって、犯人を厳しく処罰すればいいわけじゃないとも思っている。

 おそらく犯人は、俺とエッケンハルトさんがスラムへ行った時、リーザをイジメてたうちの一人だからな。


 リーザをイジメたり、石を投げたのは、獣人に対して知識がないというのが一番だろう。

 スラムで暮らしてて、鬱屈した思いがあって、標的にしやすかったというのもあるかもしれないが。

 ともあれ、真実を知らないというだけで、すんなり処罰してしまうのは、なんとなく違う気がする。

 まぁ、やった事は許せないから、ある程度は罰せられるべきだとも思うけどな。


 あとは、犯人が若い事か……。

 はっきりとした年齢はわからないが、俺が見る限りでは中学生か、よくて高校生くらいの……十代前半くらいに見えた。

 まだ子供と言ってもいい年齢だ。

 少なくとも、孤児院を出る年齢ですらないと思う。

 そんな子を、厳しく処断するのもな……難しい。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 ……奉仕労働でもさせるか? まぁ、イキってる子供には無理か……。 大人からして無理解だろうし……。 今更、認識を変えるのは……ねぇ?
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