魔力を調べることになりました
「レインドルフは腕が立つようだったし、スラムの人間はそれを知っていた。だからリーザに手出しはできなかったんだろうけど、レインドルフがいなくなったって事は……」
「はい……俺が見つけた時、リーザは数人に囲まれてイジメられてました……」
リーザを発見した時の状況や、ついでにさっき起こった事をイザベルさんに伝える。
俺から事情を聞くイザベルさんは、イジメられていた事に顔をしかめる部分もあったが、獣人だから……という部分で、ある程度納得してもいるようだった。
やっぱり、噂を曲解し、正しい教育を受けずに、そのままになっている人達は、獣人に対する偏見や差別があるらしい。
イザベルさん自身は、リーザの事を知っているのと、噂が出た当時を知っているから、獣人への差別意識はないとの事だ。
むしろ、リーザの事を語るイザベルさんは、優しい目をしていたから、レインドルフさんの事とは別に、可愛がってくれてるんだろう。
店に入る前、リーザが優しいお婆ちゃんと言っていた事からも、それは伺える。
偏見の目で見たり、差別をする人を相手に、リーザが懐く事はなさそうだしな。
「パパ、綺麗になった! お婆ちゃんありがとう!」
「ははは、リーザ良かったな」
「そうかい」
イザベルさんと話して、お互いの情報を共有していると、奥で顔を洗っていたリーザが元気に戻って来た。
ライラさんに洗われて、綺麗に水気も取ってもらったようだ。
スッキリした事を誇るように言いながらも、イザベルさんにちゃんとお礼。
うんうん、しっかりお礼を言えるのは偉いな。
イザベルさんの方は、リーザの方をちらりと見ただけで、素っ気なく返した。
もしかしたら、照れてるのかもしれない。
イザベルさんの年齢から考えると、リーザは孫と言ってもおかしくないだろうしなぁ……と考えながら、見ていると、口元が少し吊り上がっていた。
やっぱり、嬉しいらしい。
「えへへ、お婆ちゃん……」
「おやまぁ、どうしたんだい? 前まではこんなに甘える子じゃなかったと思うけどねぇ」
「うん、パパやママ……クレアお姉ちゃん達に言われたんだ。我慢する必要はないって」
「そうかい……」
リーザが、カウンターの内側にいるイザベルさんの所へ行き、軽く抱き着いた。
それを受けて、少し驚いた様子のイザベルさんだったが、リーザの言葉を聞いて目を細め、優しく微笑む。
俺達がリーザに言った事、少しはわかってくれてるみたいだな……やっぱり子供は遠慮や我慢をせず、しっかり甘えられる人には甘えた方がいい。
尻尾をフリフリと動かしているリーザの頭に手を乗せ、優しく撫でるイザベルさん。
その手つきは撫でるのに慣れてるようで、レインドルフさんが生きていた時も、そうしてリーザと優しく接していたというのがよくわかる。
そうしてると、孫と祖母のように見えて、微笑ましいな。
「甘えるのは良い事だね。優しくしてくれる人には、目一杯甘えると良いよ。――それはともかく、パパやママってのはどういう事なんだい? まさか、クレア様が……?」
「いえ、私ではなく……」
「ははは、ママはレオの事ですよ。リーザが呼びたがったので、そのままにしてます」
「噂のシルバーフェンリルかい。こりゃまた、リーザは凄い存在の庇護下にあるんだねぇ」
俺達と同じように、リーザに甘える事を優しく教えるイザベルさん。
撫でる手つきはそのままに、俺やクレアさんに向かって首を傾げた。
何故か口ごもったクレアさんの後を継ぎ、俺がイザベルさんへ説明。
レオがママという事に、また驚いた顔をさせたが、シルバーフェンリルの事がどういう魔物なのか知っているのか、リーザが守られてる事に喜んでいる様子だ。
レインドルフさんといい、イザベルさんといい、スラムでリーザを迫害する人がいても、ちゃんと案じてくれる人がいるようで、良かったな、リーザ。
「タクミ様、この機会にリーザ様の魔力を調べてもらっては如何でしょう?」
「あぁ、そうですね。丁度良いかもしれませんね」
「魔力を調べるのかい?」
和やかにリーザやイザベルさんと話していると、ライラさんが思い立ったように提案してくれた。
そういえば、以前クレアさんから魔法を教えてもらう時に、リーザの魔力の話になったな。
その時も、イザベルさんの店で調べてもらおうと考えたから、丁度良い。
時間もそうかからないだろうしな。
「お願いしてばかりで申し訳ありませんが、お願いできますか?」
「準備はすぐにできるから、構わないよ。それじゃ、ちょっと待っていておくれ」
「あ、すみません。お茶を淹れたいのですが、構いませんか?」
「あぁ、いいよ。そのかわり、あたしのも淹れておくれ」
「はい、畏まりました」
イザベルさんにリーザの魔力検査をお願いすると、すぐに頷いてくれた。
リーザから体を離し、準備のために奥へと引っ込もうとするイザベルさんに、ライラさんが声をかける。
休憩のためというか、昼食以来飲み物も飲んでいないから……と考えたんだろう、ありがたい。
イザベルさんが承諾し、皆の分のお茶を淹れるため、ライラさんも奥へと向かった。
「お待たせ。それじゃ、魔力を調べるかね」
「以前ここに来た時は調べなかったんですか?」
「レインドルフは、調べようとはしなかったね。まぁ、リーザが大きくなってからって、考えてたんじゃないかい?」
「それはありそうですね」
まだここにリーザを連れて来てた頃、レインドルフさんが生きてた頃は、今よりもリーザが小さかった。
今でも小さく、魔法を使う事を考えるのに適しているかはわからないが、いずれ調べようと考えてたのかもしれない。
俺が今使えるようになった魔法程度なら、生活に転用できて便利だしな。
ティルラちゃんも、この間の魔法講義で初めて魔法を習ったようだし、あまり子供に教えるという事はしないのかもしれない。
ティルラちゃんが、魔法を使えるようになったかはともかく、成長しないと使えない……というよりは、変に使うと危ないから、なんて考えもありそうだ。
木造の家とかで、火の魔法を使うと危ないしな。
ちなみにライラさんは、俺達の分のお茶を淹れてくれた後、外にいるヨハンナさん達やレオにもと、店の外へ向かった。
鞄を持って行ったから、レオには牛乳だろうけどな。
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