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騒ぎは沈静化してくれたようでした



「やはり、タクミさんはとても素晴らしい方だと、改めて感じます」

「いや……えっと……」


 クレアさんに尊敬するような眼差しで見られてるが、そんな大層なものじゃない気がするんだけどなぁ。

 まぁ確かに、いざという時に動けるかどうかは、人間性が出る事らしいが……。

 というか、この視線……どこかで感じた気がするな。

 ……あぁ、ティルラちゃんか。


 初めて会った時、シルバーフェンリルであるレオと対等にしている、という事で、ティルラちゃんに尊敬の眼差しで見られたんだな。

 笑顔もそうだが、似ている部分が多々あるのはやっぱり、姉妹だからか。

 そんな事を考えながら、クレアさんから褒められて嬉しいような、照れるような時間を過ごして、ライラさんを待った。



「お待たせ致しました」


 しばらくして、ライラさんがニコラさんとヨハンナさんを連れて戻って来た。

 さっきまでの時間は楽しくもあったんだが、気恥ずかしくもあって、ライラさんが戻って来た時には、思わずホッとしてしまった。

 レオから、何やら面白そうな目で見られている気もしてたしな。


「向こうの方はどうでしたか?」

「はい、タクミ様達が去った後、しばらく騒然とした様子でした。衛兵も駆け付けて来ましたが、事情を説明し、共に民衆への説明をさせて頂きました」


 ホッとした様子を隠しつつ、合流したニコラさんに、あの後の事を聞く。

 衛兵さん達も駆け付けて来たのか……まぁ、あれだけ人が集まって、騒ぎになってたんだから当然か。

 もしかしたら、誰かから魔物が……なんて通報もあったのかもしれないしな。


「リーザに石を投げられた事も、ですか?」

「はい。私達も見ていましたので、その事も説明しております。石を投げられて、こちら側の人が怪我をした事、それをレオ様が怒ったと」

「石を投げた犯人の方は、衛兵が探す手筈になっております。周囲に集まった人たちは、事情を聞き、概ねレオ様が怒った事を納得した様子でしたね」


 石の説明と、怪我をした者がいると説明し、レオが怒るのも当然という説明をしたんだろう。

 ニコラさんが説明し、その後をヨハンナさんが継ぐように教えてくれた。

 犯人はスラムの少年だが、衛兵さんが探すのなら、そちらに任せよう。

 俺達が下手に関わって、スラムの人達から恨まれるのは避けたいしな。

 けど、あれだけ周囲にはっきりとした影響を及ぼし、レオの怒った姿を見たのに、皆すぐに納得してくれたのか……。


「すんなり納得してくれたんですか?」

「さすがに全員が……というわけではないでしょうけど、ほとんどが納得した様子でした。以前にも、レオ様と触れ合った者もいたようで……それに最近、街中でタクミ様とレオ様が仲良くしていた事も大きかったようです」

「俺とレオが?」

「はい。御館様とご一緒されていた時もそうですが、タクミ様がレオ様と仲良く過ごされていた事が、良かったのだと考えます。民衆は、それを見ていたのだと」

「ニコラさんが言ったように、レオ様と触れ合った者がいたのも、大きな理由でしょう。何も理由がなく、人を襲ったりはしないと、周囲に話してくれていました」

「そうですか……あまり大きな問題にならなかったのなら、良かったです。ですが、レオと触れ合った事のある人ですか……?」


 何度か、この街にレオと一緒の訪れ、周囲の人達が慣れるように過ごしていた甲斐が、多少はあったみたいだ。

 それにしても、レオと以前にも触れ合った事があるとは……一体誰だろう?

 カレスさんの店で、薬草を売り始めた時に集まった人かな?

 でもあの時、レオと触れ合ったのはほとんど子供だったはずだし……。


「えぇと……レオ様を崇拝するように、素晴らしさを周囲に伝えていました。クレアお嬢様とレオ様の事を知っているようでしたが?」

「エメラダ、かしら?」

「あぁ、エメラダさんかぁ……」


 少しだけ懐かしい名前だ。

 確か、俺とレオが初めてラクトスの街に来た時に、出会った人だな。

 レオを撫でて、触り心地の良さに恍惚としてた女性だ。

 あの人の、あの時の様子から、レオを崇拝するように周囲に……というのは、簡単に想像できる気がするな……。


 ニコラさんやヨハンナさん、衛兵さん達に協力して、集まった人たちにレオの事を伝えてくれたらしいから、今度会った時に必ずお礼を言おう。

 いや、あの人ならレオに触らせてあげれば満足しそうだが……お礼はお礼で、ちゃんとしないとな。

 大きな問題に発展する事がなく、安心して、続きの報告を聞きながら、俺達はイザベルさんの店へと移動を開始した。

 早く行かないと、屋敷に戻るまでに日が暮れるからな。



「あれ、ここって……?」

「ん、リーザ、知ってるのか? まぁ、目立つ店だから、知っててもおかしくないか」


 広場から離れ、イザベルさんの店が見えてきたあたりで、レオに乗っていたリーザがふと声を上げた。

 スラムで暮らしてたから、同じ街にあるイザベルさんの店を、見た事があるのかもしれない。

 相変わらず意味があるのかもわからない、六芒星が描かれた看板や、黒い扉、周囲の家とは違う壁の色等……目立つから、一度見たら忘れられそうにない。


「知ってるというか、何度か入ったよ? 優しいお婆ちゃんがいるお店!」

「リーザちゃん、イザベルの事を知っているの?」

「うん。お爺ちゃんと一緒に何度か来てた。いつも優しく撫でてくれるから、好き!」

「そうなのか……」


 リーザを拾ったお爺さんは、イザベルさんと知り合いだったのだろう。

 何度もリーザを連れて来て、一緒に話してたのか。

 何しに来てたかとかは、これからイザベルさんに聞けばいいか。


「それじゃ、レオはまたお留守番だな。すまないが、おとなしくしてるんだぞ?」

「ワフ!」

「先程のような事がないよう、細心の注意を払います」

「すみません、お願いします」


 店に入れないレオは、いつもの通り外で待つ事になる。

 ハルトンさんの店の前での事があったから、軽く注意するように言ったが、レオは任せてと言うように鳴きながら深く頷いた。

 ニコラさんも、真剣な様子で請け負ってくれた。

 とはいえ、さすがにさっきのような事が何度も起こらないだろうし、リーザも中に入るから、同じ事は起こらないだろうけどな。


 まぁ、念のためだな。

 ニコラさんと一緒に、ヨハンナさんも周囲に視線を巡らせながら、頷いている。

 ここは、ハルトンさんの店より、周囲の人が少ないから、さっきのように人が集まる気配がないのもありがたいな。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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