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リーザの服ができました



「そうですか。タクミさんの所とは少し違うのですね。その足りない物を探し出すか、新しく作る事ができれば、同じ物ができるのでしょうか?」


 クレアさんは、俺のいた場所であった料理に興味があるようだ。

 今まで知らなかった味だから、好奇心の強いクレアさんらしいな。


「完全に同じ物ができるかどうかまでは……料理する人が違えば、味も違うでしょうし。けど近い物はできると思いますよ」

「そうですか。近い物でも、いずれ食べてみたいものですね」

「はい」


 俺にとっては、懐かしの味になるからな。

 まだこの世界に来て数カ月程度だが、既に恋しいと思う物もある……特に米だなぁ……やっぱり、それを食べて育ってきてるから、米を求めてしまうものなのかもしれない。

 薬草畑が落ち着いて、生活に余裕ができたら、ゆっくりと探して見るのもいいかもなぁ……。

 ヘレーナさんと相談して、新しい味を求めて色々な料理を……というのも楽しそうだ。


「クレアお嬢様、タクミ様。そろそろ服の用意ができる時間かと」


 クレアさんとまったり話していると、時計を示したライラさんに時間を教えられた。

 懐中時計で五時だから……日本では十六時前くらいか。

 そろそろ、十四時間あるこの世界の時間と、日本の十二時間との違いにも慣れてきたな。


「それじゃあ、そろそろハルトンさんの店に戻りましょうか」

「そうですね。タクミさんとゆっくり話ができて、楽しい時間を過ごせました。ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ楽しかったですよ」


 座っていた椅子から立ち上がり、お互いにお礼を言い合う。

 一瞬だけ、微笑んだクレアさんが眩しく見えたが、それは傾き始めた日が、クレアさんを照らしていたからかもしれないな。


「お待ちしておりました。できあがっておりますよ。こちらです」

「ありがとうございます」


 ハルトンさんの店に入り、リーザのために改良してもらった服を、数着受け取る。

 これで、しばらくはリーザの着替えには困らないだろう。

 仕立ててもらってる服もある事だし、リーザの身の回りの物は揃ったな。


「早速だけど、リーザ。着替えてごらん?」

「いいの?」

「あぁ、もちろんだ。リーザが着るための服だからな。ライラさん、すみませんが……」

「はい、畏まりました。ハルトンさん、着替えのための場所は……」

「案内させます」


 受け取った服をリーザに見せ、今すぐに着替えるように言う。

 レオは外だし、俺から離れて知らない人に囲まれて不安がるといけないから、ライラさんにお願いして一緒に行ってもらう事にする。

 俺から服を受け取ったライラさんは、ハルトンさんに言って着替えのための試着室へ、リーザと一緒に案内されて行った。


「パパ、どう!?」

「おぉ、似合ってるぞ、リーザ」

「可愛いわよ、リーザちゃん」

「えへへへ……」


 ライラさんの手伝いもあって、すぐに着替えて出て来たリーザはその場でくるりと回って、俺に服を自慢するように見せる。

 やっぱり女の子なんだな……新しい服は嬉しそうだ。

 俺とクレアさんがリーザを見て、似合ってると言うと、照れたようだ。


 リーザの服は、柔らかそうな生地で作られており、着心地も悪くはなさそうだ。

 問題の尻尾をどうするかだが、スカートの後ろ部分に穴が開いており、そこから尻尾を出してるようだ。

 服が邪魔にならないだろうが、これだけだとお尻とかが見えてしまうため、そこにフリルが付けられ、尻尾を通した後は穴が見えないような仕組みになっていた。

 フリルから、フサフサの尻尾が出ている姿はリーザに似合っててとても可愛い。


「……んー、ママにも見せて来る! ライラお姉さん、行こう!」

「ははは、レオが喜ぶといいな。ライラさん、すみません」

「いえいえ。では……」


 新しい服が余程嬉しいのか、レオにも見せたいと、ライラさんを連れて外へ向かうリーザ。

 自分のための服というか、獣人用の服というが初めてで嬉しいんだろうな。

 クレアさんとニコラさんの二人と一緒に、外へ出るリーザを微笑ましく見送る。


「タクミ様、こちらもご用意させて頂きました。どうでしょうか?」

「帽子ですか?」

「はい。私共はそうする事はありませんが、人によっては獣人と見るだけで訝しがる人もいます。なので、隠す場合に最適かと……」


 ハルトンさんが出して来たのは、ニット帽に近い作りになっている帽子だった。

 ニット生地で作られてるそれは、二か所に動物の耳の形の小さな袋のような物が取り付けられ、そこに耳を収められるようになっている。

 左右から垂れ下がっている部分は、先の方にボタンが付いている事から、顎の下で止めて帽子が外れないようにするためだろう。

 リーザの耳を隠すために、この帽子を作ったのか。


 ハルトンさんは遠回しに言ってくれてるが、スラムの事を考えると、リーザを見て嫌悪感を示す人間がいたって不思議じゃない。

 幸い、ハルトンさんやハインさんは、そんな事はなかったが……今日街を歩いているだけで、わずかながらもそんな視線を感じる事があった。

 ほとんどの場合、レオが先に察知してリーザをその視線から隠すように動いていたけどな。

 これまでを考えると、状況を見て隠す事も考えないといけないのだろう。


「わざわざ作って頂いたんですね。ありがとうございます」

「いえいえ。これからも贔屓にしてもらうためですからな」


 頭を下げる俺に、そう言ったハルトンさんだが、リーザが出て行った店の出入り口を見て微笑んでいる。

 リーザが嫌な目に合わないように考えてくれたんだろう、優しい人だ。


「渡した服の中にも、尻尾が隠せるようゆとりを持たせた物もあります。仕立てさせて頂く物も同様に。用途によって着替えると良いかと思います」

「何から何まで、ありがとうございます」


 耳よりも大きく、目立つ尻尾を隠す事も考えてくれていたらしい。

 リーザの動きや感情に合わせて動くから、尻尾は特に目立つからな。

 耳を隠すときは、一緒に尻尾も隠す服を着せればいいか。

 ハルトンさんに感謝をし、追加で帽子の料金も払う。


 さすがに、お店だからこの辺りはサービスじゃないよな。

 まぁ、無料でとか言われても、気遣いが嬉しいから、喜んで払わせてもらうが。

 しかし、お金を取り出してお代を払っていた時の事だ――。


「ガウ!!」

「っ! レオの声? ……っ!」

「タクミさん、外で何か……あっ!」


 支払いを終え、ハルトンさんにお礼をしつつ、クレアさんと店を出ようとしたら、外からレオが大きく吠える声がした。

 おとなしくしてたはずのレオが吠えるなんて、一体何があったんだ?

 何があったのかはわからないが、あのレオが吠えるんだ、ただ事ではなさそうだ。

 クレアさんを置いて、すぐさま俺は店を出た……。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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