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アンネさんに『雑草栽培』の事を教えました



「おはようございます、タクミさん、レオ様、リーザちゃん」

「おはよう、ティルラちゃん。今日も元気そうだね」

「ワフワフ」

「おはよう、ティルラお姉ちゃん!」

「はい、ティルラは今日も元気です! リーザちゃんも元気そうですね!」

「うん!」


 朝の支度を始めようとした辺りで、部屋に来たのはティルラちゃん。

 元気いっぱいに挨拶した後、同じく元気なリーザと一緒に笑い合う。

 ティルラちゃんにも、リーザは随分懐いて来てるようだ。

 段々と、この屋敷での生活に慣れて来てくれているようで、嬉しいな。



「おはようございます」


 ティルラちゃんに、リーザの朝の支度を任せ、俺は自分の支度を済ませて合流し、食堂へ移動。

 食堂には既に、クレアさんとエッケンハルトさん、アンネさん達が待っていた。

 アンネさん、今日も蝶々結びをしてるんだ……リーザに怖がられないためだが、その縦ロールはそれでいいのだろうか?

 などと疑問に思いながらも、皆に挨拶をして、いつものようにテーブルにつく。

 すぐに朝食の用意がされ、皆で食べ始めた。


「あ、そうだ。昨日の雇う人達のリスト、見ました」

「お、そうか。どうだった?」

「気に入った人はおられましたかな?」

「っ!」

「ん?」


 食事中、昨日疑問に思った事を質問するため、話し始める。

 エッケンハルトさんは少し面白そうに、セバスチャンさんは表情を変えず、俺に顔を向けた。

 クレアさんだけは、食事をする手が止まって、ビクッと体を反応させたが……この反応、やっぱり俺が見てどう思ったか気にしてるようだ。

 アンネさんは、そんなクレアさんを見て首を傾げ、ティルラちゃんやリーザ、レオやシェリーは食事に夢中で、あまりこちらの話を気にしてそうにない。


「そうですね……何人かは雇おうと思う人がいましたが、いくつか質問してもいいですか?」

「はい、なんなりと」

「えぇとですね……」


 持って来ていたメモを取り出し、いくつかの質問をセバスチャンさんにする。

 時折エッケンハルトさんも交えながら、疑問が解消されて納得していった。

 クレアさんは、俺からいつ自分の事が聞かれるのかと、気が気じゃないようで、あまり食事が進んでないな……。

 これ以上焦らすのは意地悪かと思い、クレアさんの事に触れようと思うが、その前に一つだけ、聞いておかないといけない事がある。


「あとは……そうですね……その、俺の事に関してはどうなっていますか?」

「タクミ殿の事……と言うと、薬草の製造方法に関してですかな?」

「はい。あまり広めるべきじゃない事だとは思いますが、何も知らせないのも……と思いまして」

「そうですな……旦那様?」

「うむ、そうだな。良い機会だ」


 俺の『雑草栽培』の能力は、いろいろと便利なためできる限り広めるべきではない、という事になっている。

 だがさすがに、一緒に働く事になる人達に対して、能力の事を何も教えないと言うのは不誠実だと思うし、場合によっては不信感につながる可能性はある。

 まぁ、ある程度は教えるつもりで、セバスチャンさん達も考えているんだろうとは思うがな。

 だから、人物の情報が書かれている中に、口か堅いかどうか、噂話をするかどうかという項目があったんだしな。


 俺がセバスチャンさんに聞くと、エッケンハルトさんに聞くように顔を向けた。

 エッケンハルトさんは、一生懸命に食べているリーザやシェリーを見ながら、微笑ましそうにしているアンネさんの方に視線を向け、呟いた。

 アンネさん……?


「私達と一緒にいるのだ。いつまでも、隠しておけるものでもないだろう。それに、知っていた方がこの先やりやすいだろうからな」

「そうでございますね。タクミ様、よろしいでしょうか?」

「教える、という事ですね。エッケンハルトさん達がそう判断したのなら、大丈夫だと思います。それに、目の届く範囲にいるのであれば、おかしな事をしないでしょうし」

「うむ、そうだな」


 どうやら、アンネさんに俺の能力を教えるという事らしい。

 今まで、アンネさんには俺の能力の事は、はっきりと伝えていなかったから、一緒にいる時は能力の事はぼかしていた部分が多い。

 さっきも、アンネさんがいるから、はっきり『雑草栽培』を……とは言えなかったしな。

 とは言え、俺自身うっかりする事もあるし、エッケンハルトさんやクレアさんが、何かの拍子に言った言葉で、察した可能性は否定できない。


 セバスチャンさんから、というのだけはなさそうだが。

 アンネさんが、これまで俺達といて、薬草の話をどう感じていたか、だな。

 まぁ、俺や公爵家の人達の目がある中で、変な事は考えないと思うし、何かをやらかそうとしても、止められるから、教えても問題はないだろうと思う。

 縦ロールに蝶々結びとか、突拍子のない事をやらかすから、不安がないわけではないが……。


「んん! アンネ、少しいいか?」

「何ですの、公爵様?」

「うむ、タクミ殿の事なのだがな……」


 咳払いをして、気持ちを切り替えたエッケンハルトさんが、アンネさんに話し掛ける。

 リーザやシェリーを見ていたアンネさんは、急に声をかけられて驚いた様子だったが、すぐに気を取り直し、エッケンハルトさんへと真面目な顔を向けた。

 すぐに雰囲気を察したりと、こういう所は、ちゃんと教育されてる貴族……という事かな。

 クレアさんは、まだ自分の事へ話が行かなかったと、焦れてしまっているようだが、真面目な話なので顔を引き締めている。


「タクミさんの事ですか? 何でしょう……私と結婚させてくれるという話ですの?」


 アンネさん、まだその事を諦めてなかったのか。


「そうではなくてだな、タクミ殿が持つ、特殊な能力の事だ」

「その事ですか。タクミさんは、薬草や薬の知識が特別豊富なのでしょう? それと、シルバーフェンリルをも懐柔する……人間としては、特殊ですわね」

「……あー、そうではなくてだな」


 アンネさん、俺のギフトについては一切気が付いていなかったようだ。

 まぁ、それだけ上手く隠せていたと言うべきなのか、アンネさんが抜けてると言うべきなのか。

 レオに怯えたり、シェリーを可愛がったり、リーザに懐かれるためにはどうしたらいいかを考えたりと、そちらに忙しくて、俺に関する事はあまり考えていなかったのかもしれないな……。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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