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リーザにノックを教えました



「……見間違いじゃないな……何を考えてるんだろう? というより、ここに名前があっても大丈夫なのか?」

「ワフワフ」

「いい機会とか、そういう物じゃない気がするんだが……これも、セバスチャンさんへの質問事項だな。……いや、本人へ直接聞くか?」


 最後に書かれていた名前……クレア・リーベルトと確かにそこに書かれていた。

 公爵家の令嬢であるクレアさんが、貴族でもなんでもない俺なんかに雇われるって、大丈夫なのかと思う以前に、駄目だろう。

 何を思ってここに名前が書かれているのかわからないが、ともかく、明日必ず聞いておかないとな。

 レオが後ろで、いい機会だと言うように鳴いたが、いい機会とかそれ以前の問題な気がしてならない。


「はぁ……一体何を考えて……って、もしかして?」

「ワフ?」


 朝、この書類を受け取った時、クレアさんの挙動がおかしかったのは、このせいなのかもしれない。

 俺がクレアさんの名前を見た時、どうツッコムのか試してたとか?

 ともあれ、それを見たエッケンハルトさんは、クレアさんを面白そうに見ていたから、皆知ってる事なんだろうと思う。

 それなら、セバスチャンさんも知ってるのか……いや、知らないわけはないだろうが。


「これだけは、絶対に聞いておかないといけないな」

「ワフ」

「お風呂上がったー!」

「リーザ様、お部屋に入る時はノックを致しませんと」


 メモにしっかり書き記し、重要事項と示すように丸で囲んで忘れないようにしておく。

 全ての内容を見終えて、メモも終えた頃、リーザが勢いよく扉を開けて部屋に戻って来た。

 風呂から上がったばかりだから、髪が湿っていてホカホカとした湯気を立ててる。

 その後ろから、リーザを注意するようについて来たのはライラさん。


 元気があるのはいい事だが、男の部屋にノックもしないで入るのは駄目だぞ、リーザ。

 それだけ、信頼してくれて、遠慮がなくなって来た証拠なのかもしれないが。


「駄目だぞリーザ、部屋に入る時はちゃんとノックだ」

「そうなの?」

「あぁ、そうだ。急に入って来たら、中にいる人が驚くだろう? 自分の部屋ならいいが……誰かがいたら驚かせてしまうからな?」

「……うん、わかった。今度からちゃんとノックするね!」

「うん、いい子だ」

「にゃふふ……」


 こういう事は、今のうちにちゃんと注意した方がいいだろうと、部屋に入って来たリーザを注意しておく。

 俺の言葉を聞いたリーザは素直に頷いて、次からはノックするように気を付けてくれるようだ。

 聞き分けのいいリーザを褒めるように、耳と一緒に頭を撫でる……まだ湿っている髪は、乾いてる時とはまた違った触り心地だ。

 嬉しそうに笑うのはいいが、やっぱり猫っぽいんだな……。


 今まで、ノックとかマナーが必要じゃなかったんだろうから、最初は仕方ない。

 俺も十分にマナーをわきまえているとは言えないが、最低限の事は教えておかないとな。

 ……この機会に、俺も一緒に学ぶというのも悪くないか。

 その場合、リーザへの威厳はなくなりそうだが、元々威厳なんてある方じゃないしな。


「ライラさん、ありがとうございます」

「いえ、リーザ様は昨日と同じく、おとなしくしてされていましたので」

「そうですか。――リーザ、偉かったな」

「えへへ……ライラお姉さんも、ゲルダお姉さんも、優しくしてくれるから好き!」

「うふふ、ありがとうございます、リーザ様」


 リーザを部屋に送り届けるために、付いて来てくれていたライラさんにお礼を言う。

 今日もおとなしくしていたらしいリーザを褒めると、照れたように笑った後、無邪気な笑顔で言った。

 ライラさんやゲルダさんにも懐いたようで、何よりだ。

 リーザの言葉を受けて、嬉しそうに微笑んでお礼を言うライラさん。


 そういえば、ライラさんは孤児院出身だったっけ……ミリナちゃんとも以前から知り合いだったし。

 もしかすると、その時に小さい子の面倒をみたりとかして、慣れているのかもしれないな。

 優しくて面倒見のいいライラさんは、子供から好かれそうだし。


「それでは、私はこれで。ゆっくりとお休み下さい」

「はい、ありがとうございます。おやすみなさい」

「おやすみなさい、ライラお姉さん!」

「ワフ」

「はい、ふふ」


 俺達に向け、一度礼をしたライラさんに、俺達もお休みの挨拶を返す。

 リーザもレオと一緒に挨拶をし、それを見て微笑んだまま、ライラさんは部屋を退室して行った。


「さて、それじゃ俺も、風呂に入るとするか」

「行ってらっしゃーい」

「ワフ」


 座っていた椅子から立ち上がり、少しだけ固まった体を伸ばしつつ、着替え等を持つ。

 久しぶりに、座って書類を見ていたから、体が固まってしまったかな。

 風呂に入って、ゆっくり体を伸ばそう。

 リーザとレオに見送られて、風呂へ入るために、部屋を出た。


 ……さすがに、レオは自分から風呂に入りたいなんて言わないか。

 あまり嫌がらなくなっただけでも、いいか。



 風呂から上がった後は、丸くなってるレオにくっ付いて寝ているリーザを、起こさないように気を付けつつ、ベッドへ寝かせ、俺も一緒に寝る事にした。

 今夜は、リーザが寂しい夢を見ないといいな。



――――――――――――――――――――



「えへへへ……」

「……ん」


 ふと、近くで誰かが笑ってる声がした気がして、目を覚ます。

 ぱちりと目を開けて、横を見てみると、スヤスヤと寝ているリーザが笑っていた。

 寝る前に考えていたように、今日は楽しい夢を見ているようだ。


「……アフ」

「レオ、おはよう」

「ワフワフ」


 いつから起きていたのか、レオが顔だけをベッドに乗せて、こちらを覗き込んでいた。

 口を大きく開けて、あくびをしていた。

 リーザを見るために、早くから起きてたのかな?


「むにゅ……ん……」

「おはよう、リーザ。起きたかい?」

「……おはよう……ございます、パパ、ママ」

「ワフゥ」


 俺が体を起こすと、それに釣られるようにリーザが目を開けた。

 今日は寂しい夢を見なかったからか、昨日とは違って涙の跡なんかはない。

 リーザは目を擦りながら体を起こし、俺とレオに向かって挨拶。

 レオも尻尾を振って、応えるように鳴いて挨拶をする。

 泣いた跡のない笑顔のリーザに安心し、朝の支度をするため、俺とリーザはベッドから降りた。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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完結しました!
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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[気になる点] 風と火の魔法でドライヤーとか?風と水で雷とかはやらないんですか?
[一言] 更新有り難う御座います。 ……まさかのお嬢様!? いやぁドリル嬢はもしかして? とも思ったり……。 小ネタ ノックの回数: 二回:トイレの在/不在 三回:親しい人を訪ねる 四回:初見/…
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