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刀の鍛錬も追加されました



「むぅ、そうか? わかりやすく動いたつもりなのだが……」

「旦那様、まずは刀の基本的な事をお教え致しませんと。剣との違いすら理解できないのではないでしょうか?」

「「っ、っ!」」


 俺とティルラちゃんの言葉に、首を傾げるエッケンハルトさん。

 セバスチャンさんがフォローするように言ってくれたので、それに便乗して俺もティルラちゃんも首を縦に振った。


「そうか……わかった。それでは、まず握り方だな。剣とは違って……」


 ようやく基礎から教えてくれるようになった事で、剣との違いを実感しながら鍛錬が始まった。

 握り方から振り方まで、大きな違いはそれほどないのだが、ショートソードやロングソードは、押して斬る事の多い剣であるのに対し、刀は引いて斬る剣だ。

 そのために、刀は反り返ってるらしいんだが、日本でもそうだったのかはわからない。

 ともかく、日本の剣術ではなく、この世界で育った刀の剣術を習う事になったが、思ったよりもこれがしっくり来るような気がした。


 俺が日本人だからだろうか、たまたま俺にこの世界の刀が合っていたのかはわからないが、日が暮れ始める頃には、エッケンハルトさんが感心するほど、まともに刀を振れるようになっていた。

 さすがに、模擬戦で見たような動きをする事は、まだできないけどな。

 これも、今まで両刃剣の方で、鍛錬をしていた下地があったからだと思う。

 何もしていないのに、刀を持って日本人だからという理由で、すぐになれる事ができるわけないしな。


 ちなみにティルラちゃんは、刀を持ってはみたものの、しっくり来なかったらしく、首を傾げるばかりで、結局いつもの剣に戻っていた。

 エッケンハルトさんは使いこなせる刀を、娘のティルラちゃんが受け継いでくれないとわかって、ショックを受けた様子だったのが、印象的だな。

 元々、エッケンハルトさんは、剣よりも刀の方が得意らしく、真面目に戦闘をする場合は剣ではなく刀を使うらしい。



「それにしても、刀なんてこの世界にあったんですね? てっきりない物とばかり思っていました」

「うん? タクミ殿は、刀を知っていたのか? 先程は、驚いていたようだったが」


 鍛錬を終えて、少しだけ手に馴染むようになった、鞘にしまわれた刀を見ながら、タオルで汗を拭きながら聞く。

 屋敷もそうだが、ラクトスの街でもランジ村でも、建築様式は西洋風だったし、文化的にもそちらが近いようだったから、日本の刀があるとは考えていなかった。

 ラクトスの店で見たのも、西洋剣ばかりだったしな。


「えぇ。俺が以前にいた世界……国では、刀を使う事が多かったようです。俺が産まれた時代では、もうあまり使われていませんでしたが……」

「そうなのか……刀は素晴らしい剣だと思うが、使われていないのか……」


 現代には、銃火器があったからなぁ。

 刃物を武器として持つ事がないとは言わないが、多くの場合はナイフの類だ。

 そもそも、銃刀法があるから、許可もなく携帯する事なんてできないしな。


「こちらに来てから、両刃の剣しか見た事がなかったので、刀があったのに驚いていたんですよ」

「成る程な、だからさっきのような驚き方か。ふむ……そうだな……セバスチャン?」

「はい、クレアお嬢様やアンネ様は、屋敷の中に戻られております。ティルラお嬢様は私が……レオ様とリーザ様は……」

「そこは、タクミ殿に任せるしかないな。タクミ殿、すまないがリーザとレオ様に、先に屋敷の中へ戻っていてもらえるよう言ってくれないか?」

「え、はい……わかりました」


 なにかあるのか、少し考えたエッケンハルトさんは、セバスチャンさんを呼んで確認をする。

 クレアさん達は、既に屋敷の中に戻っているため、この場にいるのは俺とレオ、リーザとティルラちゃん、エッケンハルトさんとセバスチャンさんだ。

 あとは、簡易薬草畑を見ている執事さんくらいだな、シェリーはクレアさん……正確にはアンネさんに連れて行かれた。


 言われた通り、レオとリーザに先に屋敷へ戻って、食堂で夕食を待つように言い、向かってもらう。

 少しだけリーザが不安そうな顔をしたが、レオが襟を咥えて連れて行った……レオの口にぶら下げられたリーザは、体がプラプラするのが楽しいらしく、喜んでたな……良かった。

 ティルラちゃんは、セバスチャンさんと一緒に屋敷へ戻る。

 簡易薬草畑を見てくれている執事さんと距離を取り、これで誰にも話を聞かれない状況になった。


 ここまでして、何か重要な事を話すのだろうか?

 刀と言うだけで、そこまで重要な事だとは思えないんだが……。

 というか、今までも重要な事のような気がしても、実は違ったという事が多かったから、今回も似たようなものだろうな。


「刀に関しては、詳しい事はわかっていないのだ。ある程度の事は、貴族家当主以上なら知らされているのだが、さすがにこれを教えることはできん」


 と思ったが、今回は本当に重要な事だったらしい。

 貴族家当主でさえ、ある程度しか知らない事なんて、さすがに軽々しく教えてもらえるわけないか。


「という事は、刀の事は秘密事項となるんですか?」

「うむ、そうなるな。見せておいてすまないが、話せる事は少ない。王家……国が関わっている事だからな」

「そうですか……では、作られてるのはこの国で、となるんでしょうか?」

「まぁ、それくらいは予想ができるか。刀を作っているのは、王家直轄領……つまり王都とその周辺になるな。詳しい場所は言えないが、そこで作った物を王家と一部の貴族当主へと売り出されるわけだ」


 ふむ、日本のような文化のある国があって、そこから輸入しているのではと思ったが、この国で作ってるのか。

 だとすると、刀を作る技術を持った人が、この国に来たのか、それとも独自に開発したのか……。

 剣を使う事が当たり前な場所で、刀を作る技術が新しくできるとは、あまり思えないんだが、何かしら原因があるのかもしれないな。

 ともあれ、刀に関する事は多くが秘匿されているようだから、無理に詮索するのは止めよう。

 下手に知ってしまって、何かから狙われたり、エッケンハルトさんの立場を悪くしてもいけないからなぁ。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 [たたら製鉄]や[折り返し鍛練]なんかも……。
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