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359/1996

見慣れた見慣れない武器がありました



「旦那様、お待たせ致しました」

「うむ」


 ティータイムが終わった後、エッケンハルトさんと俺、ティルラちゃんは鍛錬のために裏庭へ。

 ついて来たレオと、その背中に乗ったリーザとシェリー。

 さらに、エッケンハルトさんを監視するためなのか、クレアさんと興味本位のアンネさん。

 テーブルを用意して、俺達の様子を見る場を用意してくれた、ライラさんと他のメイドさん数名が裏庭に集まった。


 裏庭に集まった数分後、セバスチャンさんがニコラさんを含めた、護衛兵士さん3人を連れて来た。

 ニコラさん以外は、エッケンハルトさんがこの屋敷に来た時、護衛をしていた人達だな。

 ……ニコラさんもそうだが、護衛さん達もそれぞれ、何やら見覚えのあるような気がする武器を、一振りずつ持っている。

 ニコラさんは二振り腰に下げているが、護衛さん達は一振りずつ大事そうに両手で持っていた。

 何やら、粗末に扱ってはいけない宝を持っているかのようだ。


「ご苦労。では、片方を私へ。予備の一振りはタクミ殿に渡してくれ」

「はっ……どうぞ」

「ありがとうございます。……エッケンハルトさん、これは……?」


 セバスチャンさん達を労いながら、エッケンハルトさんは、立派な物を一振り受け取り、もう片方を俺に渡すように指示。

 予備と呼ばれた方を持った護衛さんが、俺に近付き、持っていた物を渡される。

 これはどういうことなのか、受け取った物を持ったまま、エッケンハルトさんに問いかけた。

 この異世界……今まで西洋風の剣はいくらか見た事はあるが、今受け取ったようなものは見た事がなかった。


 というよりも、この世界に来る前には、写真や映像では何度も見た事がある物だ。

 日本特有の武器、と言っても過言じゃない。

 今では美術品ともされる物だが、俺がここに来て使っている剣よりも、鞘に入っている状態でも細い武器。

 長さは……刃渡り70センチから80センチくらいで、全体で1メートルと少し……といったところかな?


 細さも相俟って、いつも使ってるショートソードよりも小さく見えるし、重さも若干軽い気がする。

 そう言えばエッケンハルトさんは、この刀を1本ではなく、一振りと言った。

 確か、刀は本と言うのも正しいが、一振り二振りと数える事もある。

 他にもあるらしいが……それはともかく、それを知っているという事は、刀の事がある程度正しく伝わっているという事なんだろう。

 日本のような文化を持つ国が、この世界にもあるのかな?


「見慣れずに驚いたか? それは、刀という剣だ。確か……太刀、とも言うのだったか? 詳しくは知らないが、長さや形によって色々な呼び方がされていて、面白い剣だぞ?」

「はぁ……そう、ですか」


 エッケンハルトさんは、俺が驚いているのは初めて見るからだと考えているようだが、実際は違う。

 見慣れている物だから驚いてるんだ。

 まぁ、鍛錬やら実戦やらで、いつも使ってるショートソードの方が見慣れては来てるが、それとは別の理由で、見知っている物だ。

 刀なんて、日本人なら一度は見た事があるだろうしな。

 実物はまだしも、写真や映像で、見た事がないという人はいないと思ってる。


「それは、あまり作られてはいない剣なのだが、タクミ殿にはそちらの方が合うかも……と考えてな」

「そうなんですか?」

「うむ。実際にタクミ殿が戦った場面は少ないが、イメージトレーニングでな。タクミ殿は、相手からの攻撃を受ける時、剣で受けるのではなく、なるべく全身を使って避けるだろう?」

「えぇっと……そうですね。剣で受けると、折れてしまうと考えて、躊躇してしまうので」


 イメージトレーニングで、想定敵と戦う時、相手からの攻撃……特にオークからの攻撃が来た時は、剣で受けるのではなく、避けるように意識してる。

 理由は、オークに力負けしたらとかもあるが、やっぱり剣が壊れてしまわないか……という恐怖感があるからな。

 実際にオークと戦った時、途中で剣が折れてしまった事も大きな理由だろう。

 あの経験から、剣で受け止めるという事はできる限り避け、避けられる攻撃であるならば、余裕を持って避ける事を考えてる。

 それを、エッケンハルトさんが見て、何か思いついたんだろう。


「まぁ、剣と剣を交えれば、どちらかの武器が破壊される事もあるのは当然だが……本来剣とは、そうやって使う物なのだがな。理想は、相手の剣を叩き折りながら、致命傷を与えると言ったところか」

「それは……さすがに、かなりの力が必要そうです」

「そうだな。こればかりは、一朝一夕でどうにかなる事でもないだろう」


 相手の剣を叩き折りながら……なんて、どれだけの力がいるのか……剣の重さや耐久も必要だが、何よりそれを振る方にも力が必要だ。

 数日……数カ月程度トレーニングをしたくらいじゃ、そんな膂力は得られそうにない。

 薬草があるとはいえ、さすがになぁ。

 あまり考えたくはないが、人対人となると、金属鎧で守られた体を斬り付けなければならないのだから、それが一番なのはわかるがな。


「今までタクミ殿が使っていた剣は、そういった力任せの場面も想定された物だ。当然、それだけ頑丈に作られているため、重い。それとは別に、こちらの剣……刀は別の考えで作られた物だ。できる限り細く、軽くして切れ味を追求し、身軽になった事で相手の攻撃を受け止めるのではなく、避ける事を重視し、相手を斬る事を目的とした武器だ」


 エッケンハルトさんの言っている事はわかる。

 剣は頑丈さも求められるから、その分使っている金属が多いうえ、剣身が厚く作られてるように見える。

 当然重くなるから、刀と比べたら身軽に動く事が難しい。

 日本の刀でも、打ち合う事ができなくはないが、細い分脆いため、すぐに折れてしまうのは時代劇を見ている人なら、何度も目にしていると思う。


 まぁ、さすがに手で持って折ったりとかは、簡単にはできないだろうがな。

 硬い岩とかに力いっぱい打ち付けたら、剣なら刃がかけるくらいだが、刀なら折れる……と言うくらいの違いか。

 脆いとはいっても、金属だし武器だからある程度は頑丈にできてはいるはずだ。

 確かに、剣で攻撃を受けず、全身で避ける事を考える俺には、刀の方が合っているのかもしれないな。


「だが、そうは言ったが、すぐに刀を使いこなせるとは限らないがな。避けるだけではなく、振り方、握り方等、通常の剣とは違う事が多過ぎる」


 そう言ってエッケンハルトさんは、持っている刀を鞘から抜き、美術品と言われる所以が理解できる程、美しい刀身を見せた。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[気になる点] 太刀 と 一般的に言う日本刀(打刀)は装着の仕方も姿形も全く異なる物ですが…
[一言] 更新有り難う御座います。 古来より[折れず・曲がらず・よく切れる]がよい刀と……。 流石に茎(なかご)に銘を切ったりは……ねぇ? これでタクミさんが公爵様に、刀銘を聞いたり、 バラして銘…
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