表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

344/1996

リーザが起きてしまいました



「ごめん、起こしてしまったね?」

「……んー、ううん。先に寝てしまってごめんなさい。パパが帰って来るのを、まってるつもりだったのに……」

「ははは、いいんだよ。まだまだ慣れない事ばかりだろうしね。リーザが疲れてもおかしくないんだし。それに、薬の調合もやってもらったからね」

「うん、頑張った。パパ……私、お手伝いちゃんとできてた?」

「もちろん。リーザのおかげで助かったよ」

「ワフワフ」


 薄く目を開けたところで、俺の姿が見えたんだろう。

 顔を上げて目を擦り、まだ少し眠そうにしながらも、体を起こしたリーザ。

 本当は、俺の帰りを待っていてくれたみたいだ。

 無理をして欲しくはないが、帰りを待っていてくれる子がいるというのは、いいなぁ。


 これが父親としての感動なのか……なんて事を考えつつ、リーザと話す。

 どうやら、リーザは興味があった事とは別に、薬の調合で俺の手伝いをしたかったらしい。

 頑張らなくてもいいのに、と思う反面、そんなリーザの考えが嬉しかった。

 レオも、俺に同意するように、優しい目をして頷いてるしな。


「さて、途中で起きたから、もう眠いだろ? ベッドに行って、今日はもう寝よう?」

「……ううん。まだ、パパやママと一緒に話したい」

「でも、眠くないのかい?」

「少し寝たから、大丈夫。もっと、パパやママと一緒にいたいから」

「そうか。それじゃあ、いつ寝てもいいように、ベッドに乗って、それから話そうか?」

「うん、わかった」


 素直に頷いて、レオから離れ、ベッドに座るリーザ。

 座るんじゃなくて、横になって欲しかったんだが……まぁいいか。

 リーザは、寝れば俺やレオと、一緒にいられないと考えてるのかもしれない。

 それはもしかしたら、お爺さんを亡くした事が関係してるのかもしれないな……もしかしたら、嫌な夢を見る事があるのかもしれない……というのは考え過ぎか。


 それに、俺やレオが夢に出て来なければ、リーザにとって一緒にいない事と同じなのかもしれない。

 子供らしい考え、なのかもな。


「それじゃあ、なんの話をしようか……」

「なんでもいいよ。パパやママとお話できたら、それだけで楽しいから」

「そうかい? なら……」


 笑顔で嬉しい事を言ってくれるリーザ。

 俺やレオと話す事が、リーザにとっての楽しみになるのなら、多少寝不足になっても付き合おう。

 さすがに、途中でレオに止められそうだがな。

 ともあれ、リーザとゆっくり話すいい機会だ。

 色々聞きたい事はあるが、まずはクレアさんから頼まれてた事を話してみよう。


「えぇと……リーザは、獣人の掟って知ってるかい?」

「うーん……知らない!」


 リーザは、クレアさんやセバスチャンさんが言っていた、獣人の掟の事は知らないらしい。

 生まれて間もなくスラムに捨てられたのなら、教える人はいなかっただろうし、仕方ないか。

 リーザを拾ったお爺さんも、獣人の差別はなくとも、詳しくは知らなかったんだろう。


「そうか。簡単に言うと、獣人には守るべき掟があって、それを破ると怒られるらしいんだ。まぁ、ここは獣人の国じゃないから、怒る人はいないだろうけどね」

「そうなんだ。どういう事をしたら怒られるんだろう?」

「確か……簡単に知らない人について行かないとか、だったかな」

「んーと、お爺ちゃんから聞いた事があるよ。知らない人は、リーザをイジメる人かもしれないから、ついて行っちゃいけないって」

「うん、そうだね。誰かもわからないんだから、ついて行ったら危ないかもしれないからね」


 言ってて思ったが、やっぱりこれって子供へのしつけのような気がして来た。

 それにしても、知らない人に……か。

 俺やエッケンハルトさんは、突然リーザの前に現れ、イジメられてる所を助けたが、その後すぐに孤児院に連れて行ったっけ。

 それを考えると、リーザが知らない人について行った事にならないか?


「えーと……リーザ。俺に付いて来てしまったけど……いきなりすぎたかな?」

「お爺ちゃんじゃない人が助けてくれたのは、驚いたけど……大丈夫、私にはパパやママが優しいってわかるから!」

「そ、そうか。うん、それなら良かった」


 一応、リーザは初めてレオを見た時に怯えたが、あれは見た目の事もあったし、集団でいじめられてたすぐ後だからな、仕方ない。

 リーザには、獣人としての感覚なのか、それとも特殊な力なのか、俺やレオが悪い事をするとは感じなかったみたいだ。

 まぁ、子供は意外と大人のする事をしっかり見ているから、そこから判断したのかもしれないしな。


 しかし、獣人は何故こんな掟が必要なのだろう?

 リーザはちゃんと周囲を見て判断しているから、こんな掟は必要ない気がするんだが……。

 いや、リーザは特殊なだけで、他の獣人にとっては必要なのかもしれないな。

 スラムで育ったから、周囲の状況が原因で警戒心は強いだろうし……今はそうは見えないが。

 ともかく、獣人の事をよく知らない俺が、ここで考えてても仕方ないな。


「あと、そうだな……リーザは、尻尾や耳を触られるのは苦手かい?」

「んー、パパやママなら全然大丈夫。でも、いっぱいの人に触られるのは苦手だよ……前にも、引っ張られたり、痛い事されたから……」

「ワフ!」

「そうか……とりあえず、レオは落ち着け。気持ちはわかるけどな」

「……ワゥ」


 獣人の掟とか関係なく、耳や尻尾はあまり触られたくないらしい。

 スラムで、イジメられてる時に弄られてしまった事があるようだ。

 まぁ……獣人の特徴である耳と尻尾は、目立つからなぁ。

 リーザの話を聞いて、憤慨した様子のレオがすくっと立ち上がるが、落ち着けるように声をかけておく


 放っておくと、怒ったままスラムに突撃しそうだな……レオが行ったら、ラクトスの街が混乱してしまいかねない。

 俺も少しは怒ってるが、レオ程じゃない。

 そういう事もあるかも……とは予想してたから。

 一応俺の言葉で、レオは納得いかないながらも、おとなしくお座りしてくれた。


「よしよし。リーザ、やっぱり耳や尻尾って触られると嫌なのか?」


 落ち着いたレオの体に手を伸ばし、ゆっくりと撫でながらリーザに聞く。

 耳や尻尾に触られるのが嫌なら、クレアさんには断っておかないといけないし、俺もリーザと接する時に気を付けないといけないからな。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 アルファから此方に移ってきました。 ……やはり、耳とシッポは特別!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ