あっさり混合魔法を成功させました
「おぉ、霧が出てる」
掲げた手の上を見てみると、そこからもやもやと霧が発生して広がっていた。
クレアさんの時と同じく、すぐに風に飛ばされて消えるが、意識を集中している間、ずっと霧は発生し続けていた。
「モヤモヤが出た! 凄い、パパ!」
「ははは、そうかい?」
手を挙げて喜んでるリーザに、笑って答える俺。
それで集中が途切れたのか、すぐに手から霧が出なくなった。
少し残念だが、一度成功したから、次からも失敗する事なく使えるだろう。
魔力を移動させる感覚も、何となくだが掴んだしな。
「……まさか、説明の途中で魔法を使うとは思いませんでした。しかも、成功してますし」
「え? あれでまだ、説明の途中だったんですか?」
俺が霧を発生させた場所……俺の頭の上あたりを見ながら、クレアさんが呟く。
クレアさんとしては、さっきの説明ではまだ不十分で、もう少し説明する気だったんだろう。
それを、途中で俺が勝手に魔法を使って成功させた、と。
それは確かに驚いても仕方ない……のかな?
「はい。もっと、魔力を二つに分ける意識の保ち方等を、お教えしようと考えていたのですが……タクミさんには不要なようでしたね」
「不要とまでは……でもクレアさんによる、それまでの説明がわかりやすかったからだと思います。見本を見せてくれて、わかりやすい説明だったから、すぐに成功させられたんですよ?」
「……そうでしょうか? でも、そう言って下さると、説明した甲斐がありますね」
「はい。なので、俺にとってクレアさんが不要、という事はないですから、安心して下さい」
「……タクミさんにとって……」
ん? 何やらクレアさんが俯いて考え込んだぞ?
俺、また何か変な事でも言ったかな?
クレアさんがわかりやすく説明してくれたから、魔法初心者の俺でも理解できたっていう意味で、不要じゃないと言ったんだが……。
「クレアお姉ちゃん、どうかしたの?」
「っ! いえ、何でもないわよ、リーザちゃん」
「そう? 元気ないの?」
「大丈夫。元気いっぱいよ? ちょっと、タクミさんが凄かったから、驚いちゃったの。リーザちゃんも、凄いって思うでしょう?」
「うん! 色んな魔法を使って、パパもクレアお姉ちゃんも凄い!」
「あら、私もなのね? ふふふ……」
俯いたクレアさんに、リーザが下から首を傾げながら覗き込むようにして、心配してた。
それを見たクレアさんが、心配そうなリーザを安心させるためだろう、すぐに顔を上げて、何でもないと笑顔になる。
リーザは俺だけでなく、魔法の見本を見せてくれたクレアさんも凄いと感じたようだ。
笑顔で尻尾を振って感動を伝えるリーザに、優しく笑うクレアさん。
うんうん、やっぱり、クレアさんは笑ってる時が一番だな。
時折、振られてるリーザの尻尾に視線を奪われ、手がそちらに行かないようにするのを、頑張って止めてるみたいだけどな。
「クレアさん、他にももっと、魔法の組み合わせってあるんですか?」
「タクミさん……はい。先程のように、基礎となる魔法以外にも、強力な魔法を組み合わせる事もできるそうです。ただし、その場合は呪文が長くなってしまいますが」
リーザの尻尾に、意識を奪われかけてるクレアさんを戻すため、魔法の組み合わせを聞く。
一瞬だけハッとしたクレアさんは、俺に視線を向けて、ようやく元に戻ったようで、組み合わせの説明をしてくれた。
強力な魔法の組み合わせか……魅力的な言葉のように聞こえるが、それを使うには、もっと魔法に慣れないといけないんだろうな。
それに、魔法が強力になり、使う魔力が多くなるにつれ、呪文も長くなるって事らしいから、そういった魔法の組み合わせとなると、相当な長さになるだろう。
確か、一昼夜唱え続ける魔法というのを、セバスチャンさんに以前聞いた事があるが、それほどではないにしても、数分とか唱え続ける事になる可能性もある。
そうなったら、魔力を集める事や、呪文を唱える事に集中して、戦闘なんかにはとてもじゃないが使えないだろうしなぁ。
「さらに言えば、三つ以上の魔法を組み合わせる事もできます」
「組み合わせは、二つだけじゃないんですか?」
「はい。二つだけでなく、三つ以上組み合わせる事もできます。ただ……」
「ただ?」
「これは難易度が極端に上がってしまうんです。当然ですよね、二つの魔法を組み合わせるだけでも、難易度が上がるのに、そこからさらに三つ四つと増やすのですから」
「確かに……そうですね」
さっきは何となくで成功した魔法の組み合わせだが、三つ以上となると……できる自信は今のところない。
「さらに言うなら、魔力の事だけでなく、魔法の効果までもを考えて発動させなければなりません。誰かが発動させた事のある魔法は別ですが、実質は新しい魔法を開発するのと同義ですね」
「新しい魔法ですかぁ……さすがにそれは、できそうにありませんね」
複数の魔法を混ぜ、結果どのような魔法になるかを考えないといけない。
さらには、呪文は魔力の返還と動作を決定させるのだから、その呪文も考えないといけないという事だ。
全く異なる性質の物を混ぜ、さらに別の物を作り出すような……理系の実験に似てるような気がした。
「実際、魔法を混ぜ合わせる事は、今まで三つまでが限界だろう、と言われています。今まで、4つ以上の魔法を組み合わせて使った人間は、ほとんどいないとされていますから」
「ほとんど、なんですか? 全くいないわけではなく」
「文献に記されているか、人伝の噂程度なのですが、4つ以上を組み合わせを成功させた人間がいる、という事になっています。ただし、ギフトを持っていたとも言われているので、それが本当に純粋な魔法の力だけなのか、ギフトを使っての事なのか、確認ができていないのです」
「成る程……ギフトだと純粋な魔法とは言えないし、その人以外には使えないですからね」
「はい、そうです」
実際に魔法を4つ以上組み合わせて、成功させた人というのは実在している事があったらしい。
けど、それがギフトの力によるものかもしれないのか……。
俺も同じようにギフトは持ってるが、『雑草栽培』とは違って、魔法に関係する能力だったんだろうな。
……ちょっと羨ましい。
けどまぁ、俺の能力だって、人の役に立つことが多いとわかったんだ、ない物ねだりするのはいけないな。
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