魔法の新しい使い方を知りました
「さて、それではまず、簡単に魔法の説明をしていきましょう」
「そうですね」
「私にも、魔法が使えるの?」
「そうねぇ……本当に使えるかどうか、私には判断できないわね。無責任に使えるとも言えないし……」
「魔法は、誰にでも使えるんじゃなかったんですか?」
自分でも魔法が使える可能性を知り、嬉しそうなリーザにクレアさんが難しい顔をして答えた。
以前、俺が魔法の説明を受けた時、人間には魔力が必ず備わっていて、魔法が使えると聞いた覚えがある。
それが確かなら、リーザにも魔法が使えるという事になるはずなんだが?
「いえ、人間であれば誰しもが使えるのです。ですが、獣人……となると……。獣人は人間よりも魔力が少なく、使う事を苦手とする者が多い、と聞いています」
「獣人は魔法が苦手……ですか」
「はい。魔法を使う者も獣人にはいるのは間違いありませんが、全ての獣人が使えるかと聞かれると……わかりませんね。魔力があるのは間違いないはずですけど」
獣人と人間の違い、かな。
リーザにも、魔力が備わっているのは間違いないだろうが、それを使って魔法が使えるとは保証できないようだ。
獣人は魔法を使うのが苦手……か。
発動ができないとか、そういう事なのかな?
「今度、ラクトスの街にリーザを連れて行って、イザベルさんに見てもらった方がいいですかね?」
「そうですね。イザベルなら、リーザがどれだけ魔力を持ってるか、調べる事ができますから。ともかく、今はまずリーザに、魔法の説明をして行きましょう」
「はい、お願いします」
「いい、リーザ? 魔法とは体内にある魔力を使って……」
クレアさんが俺とリーザの前に立ち、魔法のおさらいと説明を始める。
こうなるなら、ティルラちゃんとエッケンハルトさんの方で、リーザが教えてもらえば……とも思ったが、あちらの方を見ると何やら剣を取り出していた。
好奇心旺盛で、体を動かしたいティルラちゃんと、面白い事を率先してやろうとするエッケンハルトさんの二人が、真面目におとなしく魔法の勉強をする事はなかったようだ。
まぁ、向こうは近くにセバスチャンさんが控えているから、脱線し過ぎるようであれば、止めてくれるだろう。
魔法を初めて教わるリーザは、わからない事も結構あるみたいだが、一生懸命言われた事を記憶、実践しようとしていた。
魔法というものに興味があるのが、一番大きいんだろうな。
「難しいよ……」
リーザは、体内にある魔力を感知する事が難しいようだ。
確かセバスチャンさんも、初めて感知するのに手間取る事が多いって言ってたな。
俺が説明されて、すぐにできた事を驚いてたっけ。
リーザは顔をしかめながらも、体内にある魔力に意識を向け、感知しようとしているようだが、中々上手く行かないみたいだ。
「それでは、リーザの次に……タクミさん、準備はいいですか?」
「はい。いつでも大丈夫です」
クレアさんは、俺へと真剣な表情を向け、それに俺も頷いて答える。
リーザへの説明を終え、いよいよ俺への魔法の講義だ。
本来は、こっちが目的だからな。
リーザの方は、イザベルさんに魔力を調べてもらってから、本格的に教える事になった。
まぁ、リーザが魔法への興味をそのまま持っていたら、だがな。
「それではまず、セバスチャンに教えられた、光を放つ魔法を使ってみて下さい」
「わかりました。……ライトエレメンタル・シャイン」
ランジ村から帰って来てから、魔法を使う事はなかったが、感覚はよく覚えているので、すぐに魔力を手のひらに集中させ、呪文を唱えて魔法を発動する。
なんの問題もなく、手のひらには見慣れた光の球が浮かび上がった。
「凄い! パパの魔法!」
「ははは、これは簡単な魔法だからね」
手のひらに浮かんだ光の球を見て、リーザが喜ぶ。
魔法の説明は終わったから、レオと遊んでても良かったんだが……リーザが見たいらしく、そのまま俺とクレアさんの隣にいる。
ちなみにレオは、シェリーを頭に乗せて、ティルラちゃんが剣を頭上に真っ直ぐ掲げているのを、不思議そうに見ている。
……あっちは一体何をしてるんだろうか?
「発動は問題ないようですね。それでは、次にこれに魔法をかけて下さい」
「これにですか……」
クレアさんから渡されたのは、小さいナイフだ。
「タクミさんは、以前森へ探索に行った時、セバスチャン達が剣を魔法で光らせていたのを、見ていたと思います」
「はい」
確かあの時は、暗くて視界が悪く、剣を魔法で光らせる事で、視界を良くして探索を進めるためだったな。
セバスチャンさん達は、簡単そうにやっていたから、多分俺にもできるだろう。
そう思い、さっきと同じように魔法を使うために集中した。
「……ライトエレメンタル・シャイン。……あれ?」
「光らないよ?」
さっきと同じように魔法を発動したのだが、ナイフの刃は一切光っていなかった。
リーザもそれを見て、首を傾げている。
同じ使い方をしたのにどうして……そう思って手に持ったナイフを観察していると、手と柄の隙間から、光が漏れてるのに気付いた。
魔法は確かに発動していたようだ。
でも、どうしてナイフが光っていないんだ?
「ふふ、戸惑っていますね。私も、初めては同じ失敗をしました」
「一体どうして……?」
「タクミさんは、いつものように魔力を集め、発動させようとしましたよね?」
「はい」
魔力を集め、呪文を唱える事で魔法が発動するからな。
基礎中の基礎だから、当然の事だ。
「それだけだと、ナイフに魔法が宿る事はありません。魔力は体内にある事はわかっているはずですが、そもそもナイフはタクミさんの体とは別物なのです。ナイフには、魔力を通すようにし、そちらに魔力を移してからでないと、光を放つ事はありません」
「魔力を通す……」
「はい。自分の体とは別の場所に、魔力を移動させなければいけません。当然ながら、無理矢理通す事になるので、通常よりも多くの魔力が必要になります。集中させた魔力で、無理矢理ナイフに魔力を通す感覚ですね」
「成る程……」
ナイフのような物が相手だと、そちらに魔力を通す必要があるのか。
言われてみれば、確かにそうだ。
クレアさんに言われて理解した俺は、さっきよりも多くの量の魔力を手に集め、それをナイフに向かって押し流して行くような感覚で、魔力を移動させる。
多分、これで移動ができたのかな? そう思い、再び呪文を唱えた……。
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