表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

325/1996

屋敷内の人達からの要望があるようでした



「それでは、契約書に関してはそれでよろしいですね?」

「はい」


 あれから、薬草を普通に栽培する事ができたという事を前提として、クレアさんやセバスチャンさんと話しが進んだ。

 土地を扱うから、薬草を卸す時よりも、厳密な契約が必要な事も説明される。

 さすがに今すぐ契約を、という話では無いが、先に教えておいていざ契約する時に、戸惑う事がないようにとの配慮らしい。


「何かご質問や、疑問に思った事、要望などがあれば、すぐに対応させて頂きます」

「わかりました、お願いします」


 契約には、俺に執事を付ける事も含まれるから、じっくり考えて欲しいとの事だった。

 この場では思い浮かばない疑問も、時間が経てば浮かぶ可能性があるので、その際はセバスチャンさん達と相談するというのも決めた。

 まぁ、執事に関しては雇用契約のようなもんだな。

 さすがに日本のように、労働に際して厳密な規則や法律があるわけではなく、ざっくりとしたものだったが。


 日本で自分がやっていた仕事の事を考えると、もしこのまま順調に行って、雇う事になっても、過剰労働は絶対にしないと決めている。

 この世界で、ブラック企業のような考え方があるのかは知らないが、精神的にも肉体的にも追い詰められるような事は、させられない。

 そのためには、俺自身も頑張らないといけないとは思うけどな。


「では、正式な契約は、試験栽培の様子を見て、という事で」

「はい、それでよろしくお願いします。ですが……」

「何か、ありますか?」

「いえ、契約関係ではないんですが。この場にエッケンハルトさんがいなくても良いのかな? と……」


 領内の土地は領主の物。

 という事は、公爵家の当主であるエッケンハルトさんの物という事だ。

 本人がいないのに、その辺りの事を決めて良いのかな?

 代わりに、クレアさんがいるのかもしれないが。


「そこに関しては大丈夫です。今回は正式な契約ではない事もありますし、お父様には許可を取っています。素案を話し合うだけですから、問題ありませんよ」


 クレアさんが、俺の疑問に答えてくれた。

 その横で、セバスチャンさんも頷いてるから、本当に大丈夫なんだろう。


「多分、お父様はこの事を私に任せる事で、教育のつもりなんでしょうね。タクミさんなら、難しすぎる話や交渉といった事にもならないでしょうし……」


 公爵家の令嬢として、ちゃんとこういう事ができるのかの確認、とかもあるのかもしれないな。

 俺相手なら、緊張するような事もないし、無理難題を吹っかける事もない。

 説明は、ほとんどセバスチャンさんがやっていたが、こういう話をした……という事も重要なんだろう。

 俺も、会社に勤め始めた頃は、先輩に連れまわされて横で見ているだけ、とかあったしなぁ。


 そういった新人教育と同じとは言えないが、エッケンハルトさんからクレアさんに、経験を積ませようと言う試みなのかもしれない。

 ともかく、問題はなさそうだし、エッケンハルトさんも承知の上なら、大丈夫そうだ。


「あ、そうでした。もう一つ、タクミさんにお願いする事があったのです」

「ん、なんですか?」


 ここで話した事に納得し、ゆっくり考えるためにそろそろ退室するか……と考えていた時、クレアさんが思い出したように発言した。

 俺にお願いとは、一体なんだろうか?


「お願いというより、要望……ですかね。クレアお嬢様、それは今話さなくても良かったのでは?」

「屋敷の者達からの要望よ? 使用人達の満足度を上げるために、必要な事だと思うわ」

「そうですが……しかし、タクミ様が了承するかどうか」

「そこは、聞いてみないとわからないわ」

「えぇと、結局何の話なんでしょうか?」


 クレアさんが話そうとした事を、セバスチャンさんが咎めるように言って止める。

 けどクレアさんは、止める気がないようだ。

 セバスチャンさんは、俺が頷くかどうか悩んでるようだが、とりあえず話を聞かない事には判断できない。

 それだけ、難しい要望なんだろうか?


 使用人さん達かららしいが……もしかして、生活態度に問題があったか?

 それとも、俺の知らないうちにレオがどこかを汚したとか?

 うぅむ……。


「使用人達からの要望でもあり、私もお願いしたいのです。リーザちゃんの事なのですが……」

「リーザの? 何か問題があったんですか?」


 リーザが獣人だからとか?

 でもそれは、クレアさんが昨日屋敷に滞在する事を許可したから、問題はないはずだ。

 クレアさんを始め、使用人さん達も獣人を差別するような考えは、持っていないように見えるし……。

 誰か、俺の知らないところで、獣人を嫌ってる人がいるのだろうか?


「あぁ、タクミさんが心配するような事は何もないですよ。皆、リーザちゃんが屋敷に来た事を歓迎しています」

「クレアお嬢様や、旦那様が認めていますからな。それに、この屋敷にいる者で、獣人を差別する者はいません」

「はぁ、そうなんですか」


 俺が考えている事が顔に出ていたのか、すぐにフォローするように言うクレアさん。

 セバスチャンさんも、リーザを差別するような人はいないと断言してくれる。

 ホッと安心したが、だったら何の要望なんだろう?

 一息吐いた瞬間、顔が強張っていたのに気付いた。

 これじゃあ、変な心配をしていたと、クレアさん達に見抜かれるのも当然か。


「えぇとですね……リーザちゃんの尻尾、耳でもいいんですが……それを触りたいとの要望が多くて……」

「は?」


 少し言いづらそうに話すクレアさん。

 えっと、リーザの尻尾か耳、それを触らせて欲しい、と?

 何か問題があったのかと、身構えていた自分が、馬鹿らしく思えて来た。


「リーザちゃん……レオ様やシェリーもそうですけど、尻尾や耳が感情や動きに合わせて、動くじゃないですか? それを見た使用人達が、触れてみたいとうずうずしているようなのです」

「そ、そうなんですか……」


 確かに、そう見える雰囲気はよく知っている。

 クレアさんもそうだが、ライラさんやゲルダさんも、よくリーザの尻尾や耳に視線が行って、手がワキワキしていたからな。

 他の使用人さん達も同様だ。

 リーザが順調に、屋敷内で人気者になって来てる気がするなぁ。

 好かれる事は良い事だな、うん。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[一言] これはお触りタイムですね!?(手をワキワキさせながら)
[一言] >要望  やっぱ、それか~い!(笑)  なんか最近"なろう界"では、"モフリスト"が増えましたねぇ。  まぁ、ほのぼのとしていいとは思いますが、好き過ぎて暴走しないようにね(^^;a
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ