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320/1996

簡易薬草畑を作りました



「ふむ、考えていたより数が多いが……大丈夫か、タクミ殿?」

「えぇ、まだ大丈夫なようです」

「頑張るのは良い事だとは思いますが、あまり無理はなさらぬよう、お気を付け下さい」

「はい」


 日の当たる場所、日陰の場所とそれぞれ同じ数の薬草を作り、リーザと一緒に満足そうにそれを眺めていると、エッケンハルトとセバスチャンさんに心配された。

 ふと見ると、レオも少し俺を窺うような視線を向けてるな。

 まだ気絶するような事はないが、心配を掛けないように気を付けないとな。


「さて、それじゃあこのうち半分は、摘み取っていきますね」

「はい。……旦那様」

「うむ、わかっている」

「……エッケンハルトさんもやるんですか?」


 摘み取って、『雑草栽培』を使って状態変化をさせるまでが、薬草作りだ。

 薬草のある方へ俺が手を伸ばそうとすると、セバスチャンさんに声をかけられたエッケンハルトさんが、腕まくりをするような仕草をしながらこちらへ来た。

 今回は俺一人でやる事だと思ったし、まさかエッケンハルトさんが手伝ってくれるとは思ってなかった。


「……昨日の件でな。他の使用人たちの手を使わないよう、私がタクミ殿を手伝う事になったのだ」

「あー、そうなんですね」

「うむ。それでなんとか、昨日はあまり遅くならずに寝られたのだ」


 誰が言い出したかはわからないが、エッケンハルトさんは俺を手伝う事を条件に、説教を短くしてもらったらしい。

 だから、朝のクレアさんがエッケンハルトさんに、まだ言い足りない感じだったのか。


「私も、手伝う! パパのお手伝い!」

「リーザもかい? まぁ、難しい事はないからいいか」


 エッケンハルトさんが手伝おうとしているのを見たからなのか、リーザも俺を手伝うと言い出した。

 今日作った薬草は多いから、手伝ってくれるのは助かる。

 別に危険な事でもないし、ただ薬草を摘み取るだけなので、リーザにも手伝ってもらう事にした。


「えーとな、ここをこうして……」

「はい!」

「旦那様、違います。いえ、そこです、そこを採るのです」

「……むぅ、中々難しいな。しかし、そこまでわかっているなら、セバスチャンが手伝っても……」

「これは、旦那様がやる事なのです。私は間違えて迷惑をかけないよう、指示させてもらいます」

「くっ……」


 俺とリーザ、セバスチャンさんとエッケンハルトさんでペアになり、それぞれ薬草のどの部分を採ればいいのかを教えながら、薬草を摘みとって行った。

 こういう事は慣れないのか、セバスチャンさんに厳しい指摘をされるエッケンハルトさん。

 それとは反対に、意外と器用な手先で、教えた事をすぐに吸収し、てきぱきと動くリーザ。

 向き不向きってあるんだなぁ……いや、年の違いかな?



「さて、それでは後は任せて下さい」

「うむ」

「どうするの?」


 皆で協力して摘み取った薬草を、種類別に並べ、いつの間にか用意されていたテーブルの上に置く。

 それを同じ種類の物を複数の上に乗せ、『雑草栽培』で状態を変えて行く。

 薬草を使える状態にするのだが、この作業は誰かに手伝ってもらう事はできない。


 俺がやる事を、また目を輝かせながら見守るリーザ。

 見る事が新鮮で、楽しいのかもしれない。


「これでラモギは終了っと。次は……」

「やっぱりパパ凄い! どうやってやったの?」

「これも、『雑草栽培』の能力の一つなんだ」

「へぇ~」


 俺の手のひらで、一瞬にして乾燥し、さらに粉末にまでなったラモギを見て、目をまん丸にして驚くリーザ。

 さっきから、リーザは驚きぱなしだ。

 それも嬉しそうにしてるから、能力を見せた甲斐があるな。

 驚きながらも喜んでるリーザに、気分を良くした俺は、次々と薬草へ状態変化をかけていく。


 状態が変わった物はセバスチャンさん指導のもと、エッケンハルトさんがまとめて種類別で布に包んでいた。

 これも、手伝いの一つなのか。

 というか、いつの間に布なんて用意したんだろう……テーブルもそうだし。

 やっぱりセバスチャンさんかな? 結局、セバスチャンさんにも手伝ってもらってるな。



「よし、これで終わり……っと」

「終わり―」

「お疲れ様です、タクミ様」

「ぬぅ……中々繊細な作業なのだな」


 最後の薬草への状態変化が終わり、それをエッケンハルトさんに渡す。

 リーザは嬉しそうに両手を上げ、俺の言葉を真似している……ちょっと可愛いな。

 セバスチャンさんが労ってくれる中、エッケンハルトさんの方へ視線を向けると、布に包む作業も少し苦戦しているようだった。

 繊細な作業って程でも無いと思うんだが……ミリナちゃんやライラさんは、すぐにできたし。


 もしかして、エッケンハルトさんは不器用なのかな?

 剣はあんなに器用に扱うのに……いや、これとあれでは勝手が違うか。

 むしろ、エッケンハルトさんが不器用というのも、細かい事を気にしない性格を考えると、納得するものがあるな。


「それじゃ、えっと……これとこれと、これはミリナちゃんに渡して来ます。後は、カレスさんの店にお願いします」

「はい、畏まりました」

「うむ、ご苦労だった」

「エッケンハルトさんも、お疲れ様です」

「私も行くー」

「ワフ」


 調合して、薬にする薬草を持ち、ミリナちゃんに渡すためテーブルを離れる。

 他の薬草はカレスさんの所へ卸す分だから、セバスチャンさんに任せておけば大丈夫だろう。

 薬草のストックがあるようで、今日はニックも来ないみたいだしな。

 リーザとレオが俺について来て、一緒にミリナちゃんの所へ向かう。


 摘み取っていない薬草は、これからどうなるかの観察に入るから、とりあえずはこのままだ。

 ずっと張り付いて、見ていないといけないものでも無いしな。



「あ、ミリナちゃんとゲルダさん」

「師匠!」

「タクミ様、如何なさいましたか?」


 屋敷の中を移動し、客間に向かう途中にゲルダさんと一緒にいるミリナちゃんを見つけた。

 お客さんや、他の事で使ってなければ、客間が新人の使用人の教育に使われる事があるみたいだから、以前と同じようにそこにいるかもしれないと、客間を目指して来たが、当たりだったようだ。

 ミリナちゃんとゲルダさんは、すり鉢を持って客間に移動中だった。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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