表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

319/1997

『雑草栽培』をリーザに見せました



「タクミ殿、まずは薬草作りが先か?」

「そうですね。街で売る薬草と、ワインに混ぜるため調合する薬草を作る必要があります」

「タクミ様、そのうちいくつかを、採取せずそのまま経過を見るのは如何でしょうか?」

「よく作る薬草を、増やすという事ですね?」

「はい。ラモギもそうですが、ワインに混ぜる薬の元になる薬草は、多くの数が必要になるかと思われます。可能であるなら、そちらを通常栽培し、増やす事ができればタクミ様の負担も減らせるかと」

「確かにそうですね、わかりました。では、今から作る予定の薬草を……それぞれ5個から10個くらい多く作って採取しないようにしておきます」

「はい、それでよろしいかと。場所は、こちらでよろしいですか?」


 まず街や薬のための薬草を作る事レオ、エッケンハルトさんに言い、それを聞いたセバスチャンさんに提案される。

 何の種類を通常の栽培にするか、あまり考えて無かったが、セバスチャンさんの提案に従えば、数種類の薬草で経過を見る事ができる。

 本当は、昨日屋敷に帰ってから、俺が考えなきゃいけない事だったんだが……リーザの事があったからな。

 さっき、エッケンハルトさんに言われるまで忘れてた。

 ……もっと色々考えられるようにならないとなぁ。


 ともあれ、気を取り直してセバスチャンさんが示した、栽培するための場所を見る。

 裏庭の中でも、いつも薬草作りをしている場所よりも、隅の方だ。

 レオが走り回ったり、ティルラちゃんが遊ぶのに邪魔にならない位置なんだろう。

 いつもなら、どの場所で作っても、全部すぐに摘み取るから、どこでも良かったんだが、今回は薬草をそのままにするからな。


「えぇと、日当たりも良さそうですし、十分だと思います。あと、日当たりの悪い、陰になった場所でも試したいのですけど?」

「日当たりの悪い場所、ですか? それでしたら、こちらです」


 薬草と言っても、一概に同じ環境で育つ物じゃない。

 日当たりが悪く、湿気が多い場所の方が育つ物だってあるはずだ。

 それぞれの場所で薬草を作り、適した環境を見てみる必要があるだろう。

 植物の多くは、光合成をするから、日当たりのいい場所が適してると考えがちだけだから、セバスチャンさんが戸惑うのもわからなくないけどな。

 あとすぐできそうなのは、あげる水の量を調節するくらい……かな?


「パパ、何するの?」


 セバスチャンさんと話し、薬草を作る場所を確認していると、リーザが首を傾げながら聞く。

 ギフトの事を知らないのだから、わからなくて当然なんだが、リーザとしては、俺が何をするのかに興味があるんだろうな。

 

「えぇと、エッケンハルトさん、セバスチャンさん?」

「うむ、タクミ殿がいいと思うのであれば、構わないだろう」

「言い方は悪いですが、リーザ様は獣人なので、広まる事は少ないかと思われます」

「わかりました。それでは、リーザに俺の能力を話します」

「ワフ」


 リーザにどう説明したものかと考え、エッケンハルトさんとセバスチャンさんを見る俺。

 エッケンハルトさんは頷き、セバスチャンさんは大丈夫だと判断した。

 セバスチャンさんが言ってるのは、多分獣人だから、俺の能力の事を他の誰かに言っても、易々とは信じてくれないかも……という事だろう。

 本人は差別をしている雰囲気はまったくなく、リーザを見る目は優しいのだが、貴族を補佐する役目として、そういった事を言わないといけない事もある、のかもしれないな。


「えぇとね、リーザ。俺にはちょっと変わった能力があるんだよ」

「そうなの? どんな能力?」


 リーザと目を合わせ、少しだけ真剣な雰囲気を作ってから話し始める。

 この屋敷にいる人達以外の人には言ってはいけない、と前置きをしてから、ギフトの事、『雑草栽培』の事を教えて行く。

 さすがに、こことは別の世界から……というのはまだ教えないでおいた。

 一気に色々教えても、混乱してしまうかもしれないからな。


「ギフト……? 『雑草栽培』? よくわかんない」

「んー、そうだね。じゃあ、見せてあげるからしっかり見ておくんだよ?」

「うん、わかった!」


 リーザは、さすがにギフトの事を聞いた事がなく、理解する事ができなかったようだ。

 俺の他には、この国に今はいないみたいだし、一部の人しか知らない事なんだろうな。

 アンネさんとかも、もしかしたら知らないのかな?

 そんな事を考えながら、リーザから少し離れて、セバスチャンさんに指定された場所に行く。


「わくわく……」

「ははは、そんなに期待しなくても、派手な事は起こらないよ?」


 期待に満ちた目をして、俺を見ているリーザ。

 よっぽどなのか、わくわくとまで口に出して言ってる。

 その様子を、レオやエッケンハルトさん達が朗らかに眺めていた。


「さて、まずは作り慣れたラモギから……」


 ここ最近で、一番ラモギを作ったから、もうほとんど意識しなくとも作れる。

 さすがに全く想像しないという事はないが、もう慣れた作業だ。

 手を地面に付け、ラモギを想像して、『雑草栽培』が発動するように少しだけ集中。

 数秒もせず、地面から複数のラモギが生えて来た。


「……! 凄い! 凄い! 何で、何で?」

「ははは。これがギフトで、『雑草栽培』っていう能力なんだよ」

「はぁ~……。パパ凄い!」


 地面に手を付けただけで、何も無いはずの所から植物が生えて来る、という光景を見たリーザは、目を輝かせたままで、とにかく凄いを連呼し、喜んでいた。

 喜んではしゃいでるのはいいが、ちゃんと注意はしておかないとな。


「さっきも言ったけど、この能力の事は、あまり人には言わない方がいいんだ。だから、リーザも誰かに言わないようにね?」

「うん! パパとの秘密、絶対に守る!」

「ワフ」


 嬉しそうに頷くリーザ。

 これなら、ちゃんと秘密を守ってくれる……かな?

 子供だし、ポロっと言ってしまう事があるかもしれないから、そこは俺とレオでしっかりと見ておこう。

 まぁ、この屋敷にいる人は、アンネさん以外なら大丈夫だが。


 俺の能力を見て、尻尾をブンブン振り、耳をピクピクさせているリーザを微笑ましく見ながら、いつもより多くの薬草を作った。

 今回は、街へ卸したり、ミリナちゃんへ渡す物だけじゃなく、通常栽培ができるかの研究でもあるからな。

 リーザが嬉しそうに見ているのを感じて、ちょっとだけ頑張ってしまったが……とりあえず気絶する様子はないので、大丈夫だろう。

 気を付けないとな。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ