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313/1996

試作の薬酒を試飲しました



 試作ワインの後味の悪さ……苦いような甘すぎるような……。

 これは、調合した薬を混ぜたからだろうか?

 ミリナちゃんと調合した薬は、こんな後味になるような物じゃなかったんだが……混ぜてみるまで結果はわからないものだなぁ。

 一口飲んだ後、口の中に残る苦みや甘みは、少ししつこく癖があるとの言い方が正しいと思えた。


「ふむ……飲める事は飲めるが、これは昨日のロゼワインと比べてしまうとな……セバスチャン?」

「そうですね……確かに皆様が仰っているように、後味が苦手に感じる方もおられると思います。味の観点で言いますと、ロゼワインの方が良い物であると言えますね」

「だろうな。しかし、このワインは味を追求した物ではないはずだ。その辺りの方はどうなのだ?」

「それに関しては、もう少々お待ち頂ければ実感ができるかと……」


 エッケンハルトさんが話し掛け、後ろでグラスを持っていたセバスチャンさんが答える。

 テーブルについてる人達だけじゃなく、使用人さん達も一緒に試飲しているようだ。

 見れば、ライラさんもワインの入ったグラスを持っている。

 皆で試飲して、効果を確かめる……という事らしい。


 今回のワインは、味というよりも健康促進を目的とした物。

 味が良いに越した事は無いが、そちらよりも重要なのはその効果。

 ヘレーナさんの言葉で、皆は静かに待つ事にしたようだ。


「……ふむ?」

「お父様、どうされましたか?」


 少しの間待っていると、エッケンハルトさんが首を傾げて声を漏らした。

 その様子に気付いたクレアさんが、そちらへ顔を向けながら聞く。


「いや……なんだか少し、体が熱くなってるように思えてな。量はそんなに飲んでいないのに、酔ったわけではないと思うが……」

「……確かに、言われてみれば……」

「私も、顔が火照って来ましたわ……」

「そうですね。確かに体が温かい気がします」


 エッケンハルトさんに言われて気付いたが、確かに体が火照って来ているような、少し熱くなってきている気がする。

 言われてないと気付かないような、小さな変化だが、確かに感じられる。

 ワインには当然アルコールが入っているから、体温が上昇するのもわかるが……それが多少なりとも実感できるほどの量を飲んでいないはずなのに、だ。

 そもそも、俺はワインをいくら飲んでも酔えなかった事から、ランジ村のワインでは体温上昇とかを感じることは無かった。

 なのに、今回はそれを感じる……酔っているわけじゃないとすると、これが薬の効果……なのかな?


「これがこのワインの効果……か?」

「はい。その通りでございます。薬を混ぜた事により、体内の魔力を活性化し、体の調子を整える作用があるようです」

「ふむ……以前、調合する前の薬草で体感した事と同じ事ですな?」

「はい、セバスチャンさん。その通りになります」


 エッケンハルトさんが視線を巡らせ、頷きながら答えるヘレーナさん。

 セバスチャンさんが追加で質問をし、それにも頷いた。

 確か、調合する前には、魔力を活性化させる事で、栄養を全身に行き渡らせ健康を促進する……という考えだったはずだ。

 成る程、魔力が活性化する事で、体の中がほんのり温かいのか。


「という事は、薬草状態の効果をそのまま薬にでき、さらにワインに混ぜても効果が損なわれていないという事ですね?」

「はい。そうなると思います」


 俺も質問し、それに頷くヘレーナさん。


「魔力に作用する物は数少ないですが……ワインを介して、というのは初めてでございます。どれほどの効果があるのか、もう少し調べる必要があるでしょうが……これは……」

「良い物ができたと言って間違いないな。魔力に作用して、それが悪い物ではない。少なくとも、今体内で感じている感覚は拒否反応でもなんでもないからな」

「そうですね。ただ、魔力に作用し過ぎる……というのも良い影響が出るとも限りません。その辺りは、もう少し考える必要があるでしょう」

「ふむ……そうだな。タクミ殿はどう思う?」

「俺ですか? そうですね……魔力に関してはわかりませんが……こういった健康に関する物は、過剰に摂り過ぎる事は推奨されていませんでしたね。まぁ、何でもそうかもしれませんが……」


 過ぎたるは及ばざるが如し……だったかな。

 何事も度が過ぎる事は良くない……といった格言だったと思う。


「そうか……ならば、飲む量を限定する事で飲み過ぎに注意した方が良いかもしれないな」

「はい。多くても、1日グラス1杯程度としておいた方が良いかもしれませんね」


 日本でも、健康に関するドリンクとかは、1日での摂取量に制限があった。

 いや、制限というか、1日でそれ以上飲んだら、逆に悪い効果になる可能性があるよ……というくらいの指標だったかもしれないけど。

 ともかく、魔力に作用なんて、俺にはよくわからない事なんだから、無責任にいくら飲んでも大丈夫とは言えない。

 ある程度飲む量を制限して、経過を見て行く方が良いと思う。


「それなら、クレアが酔っておかしな事になる心配もないな」

「お父様! 私はもうあんなことにはなりません! これからは十分に気を付けます!」


 エッケンハルトさんがからかうように言って、クレアさんが慌てて反論。

 まぁ、からかう意味ではないが、確かにクレアさんにはちょうど良いかもしれないな。


「ははは、まぁクレアの事はおいておいてだ。タクミ殿、効果をはっきりとさせるために、これからもこのワイン……薬酒だったか……を作ってくれないか?」

「はい。ミリナちゃんと協力して、ワインに混ぜる薬の調合をしていきます」


 これから効果をちゃんと調べるためには、ある程度の量が必要だろうから、その覚悟はしていた。

 まぁ、薬を調合するのにちょっとした手間がかかるから、大量には作れないだろうが……。

 ミリナちゃんには頑張ってもらおう……もちろん俺も頑張るが。



「……中々有意義な夕食だったな」


 薬酒の試飲も終わり、落ち着いた雰囲気でのティータイム。

 エッケンハルトさんにとっては、色々とあったが有意義と思えるものだったようだ。


 リーザはティルラちゃんやシェリーと一緒に、レオに甘えるように抱き着いてゆっくりしてる。

 美味しい食事と、美味しいブドウジュースで、すっかり上機嫌だ。

 クレアさんとアンネさんは、何やら話し合っているようだが、小声なので俺の方まで聞こえないし、何か怪しい雰囲気なので、関わらない方が良いと本能が言っている気がした。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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