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306/1996

客間で話す事になりました



「そんな格好で変な行動をしてたら、不審人物にしか見えませんよ、お父様」

「……ふむ。まぁこの格好には色々と理由があってな。とりあえず、客間ででも話そうか」

「そうですね」


 ようやく、気付いてくれた事に安堵したエッケンハルトさん。

 落ち着いた様子に戻って、客間へと行こうとする。

 クレアさんからの説教や怒りが飛んで来ない事に、安心してるようですけど……エッケンハルトさんを見る目は結構鋭い気がしますよ?


「……お父様。先に事情を聞く事を優先させますが……後で説教ですからね?」

「……はい、わかりました」

「ワフゥ……」

「?」


 客間へ移動する途中、エッケンハルトさんへ向かってクレアさんがポツリと呟く。

 それを聞いて、項垂れながら移動するエッケンハルトさんだった。

 やっぱり、クレアさんにはバレてて、怒られないという事はないようだ。

 さっき気付かないようにしてたのは、やっぱりわざと何だろうなぁ。

 リーザはそんなエッケンハルトさんを見て、キョトンとしてる。

 ……威厳とかが無くなるから、あまり見ないようにしてあげて欲しいな……。



「成る程……そういう事情なのですね」

「はい。レオが気付いていなければ、リーザは今も……」

「確かにそうですね……しかし、何故ラクトスに獣人が……」

「クレア、その事は今すぐにはわからないだろう。誰かが連れて来たのかもしれないし、もしかしたら獣人と隠して街に入った者が、置いて行ったのかもしれん。調べはするが……こういう事はわからない事が多いな……」

「……そうですね」


 客間に移動し、クレアさんにリーザを連れて来た事情を話した。

 いつの間にか、セバスチャンさんとライラさんも、一緒にいる。

 ……セバスチャンさん、いつもよりニコニコしながらエッケンハルトさんを見てるな……この後説教かな?


「失礼します」


 セバスチャンさんの、いつにないニコニコ顔に戦慄していると、客間にヘレーナさんが入って来た。

 一緒にゲルダさんもいる。


「ヘレーナ。ご苦労」

「はい。こちら、言われていたブドウジュースでございます」

「ありがとうございます」


 ヘレーナさんとゲルダさん、ライラさんも手伝って、皆の前にブドウジュースが注がれたグラスが置かれる。

 さらにおかわりもできるように、セバスチャンさんがピッチャーのようなものを受け取っていた。

 客間へ移動する途中、俺が頼んでブドウジュースを持って来て欲しいと言ったからだな。


 ワインを煮詰めないといけないから、作るのに手間がかかるだろうし、もしすぐに無いようであれば夕食の時でも良いと言っていたんだけど……既に用意されていたようだ。

 ティルラちゃんやレオ、シェリーがよく飲むから準備してたのかな?

 ヘレーナさんは、皆に行き渡りおかわり用も渡したのを確認して、退室して行った。


「……これは?」

「ブドウでできたジュースだよ。水を飲むより、こっちの方が美味しいからね。飲んでもいいよ?」

「うん……頂きます」

「我々も頂こう」

「はい」

「ワフ」


 用意されたブドウジュース入りのグラスを持って、皆で一斉に飲む。

 レオが魔法で作ってくれた水だけでは足りなかったのか、俺もエッケンハルトさんも勢いよく飲んだ。

 レオの方も、顔を突っ込むようにしてバケツサイズで用意されたブドウジュースを飲んでる。

 牛乳の時より、勢いが良くないか?

 ……帰りの道中、レオだけ水を飲んでないからかもしれないな。


「ん!」

「どうしたんだい?」

「美味しい!」

「だろう?」


 俺やエッケンハルトさんを始め、他の皆は既に何度か飲んだ事があるため、その美味しさに驚く事はないが、一口飲んだリーザは驚いて勢いよく顔を俺に向けて来た。

 その表情は、驚きと喜びが混じったもので、見ているこっちも微笑ましい。

 美味しくて喜んでるのか、尻尾も一緒にブンブン振られてる。

 反応がレオに似てるな……まぁ、尻尾のある動物はそんな感じなのかもしれないな。


 視界の片隅で、ライラさんとゲルダさんが、リーザの尻尾を見て手をワキワキとさせていたのが面白い。

 後で、リーザに断って触らせてもらえば良いかもしれないな。


「ん……コクコク……美味しいよ、パパ!」

「うん、そうだね。美味しいね。いっぱいあるから、しっかり飲むんだよ」

「「「「パパ!?」」」」

「ん?」


 リーザが満面の笑みでブドウジュースを飲みながら、俺に喜びを伝える。

 それを微笑ましく見ながら、頷いて満足するまで飲むように言った。

 普通の水でさえ、特別美味しい物のように感じるリーザだから、これには驚いただろうし、存分に堪能して欲しい。

 作ってくれていたヘレーナさんには、後でしっかりお礼を言っておこう。


 しかし、そんな微笑ましい状況でも、リーザの言葉を聞いた人達が驚いて大きな声を上げた。

 クレアさんやセバスチャンさん、ライラさんやゲルダさんの4人だ。

 エッケンハルトさんは、苦笑してる。


「……タクミさん……パパ……とはどういう事なのですか? もしかして……この子はタクミさんの……?」

「いやいや、俺の子供って事は無いですからね!」

「……本当に?」

「本当です! エッケンハルトさんが証明してくれますよ! さっき話した通り、偶然レオが発見して、ラクトスの街で会ったんですから!」

「……お父様?」

「ん……本当だ。タクミ殿の言う事に嘘はないぞ」


 驚いた後、クレアさんは俯き加減になりながら、俺へと問いかける。

 なんだかクレアさんの雰囲気が、少し怖い気がするんだが……気のせいか?

 ともあれ、変な誤解をされないよう、必死に弁解する。

 エッケンハルトさんも、俺が行った事を本当だと肯定してくれた……若干、汗をかきながらだが。

 クレアさんの雰囲気、今までで一番怖い気がするな……。


「……だとしたら、何故パパなのですか……? タクミさんにはそのような趣味が……」

「いえ! そんな趣味はないですって! その……帰りの途中、急にリーザが言い出したんです……」

「ん? パパはパパだよ?」

「……リーザ……そんな無邪気な笑顔で言われても……今の状況じゃ逆効果な気が……」


 恐ろしい雰囲気を放つクレアさんに、焦る俺。

 エッケンハルトさんは、クレアさんに怒られる時、いつもこんな気分だったのか?

 驚いた仲間であるはずの、ライラさんとゲルダさんはクレアさんの雰囲気に、少し引いてる感じだし、セバスチャンさんは何やら楽しそうだ……くそう。

 エッケンハルトさんは、こういう状況で頼りになりそうにない……明後日の方向を見て我関せずの態度だしな。

 背中に冷たい汗が流れるのを感じつつ、クレアさんが納得してくれるまでひたすら事情の説明をした。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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