表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

292/1996

レオが怯えられてショックを受けました



「ワフ? ワフワフー」

「……ひぃ!」

「ワフゥ! ワフワフ。ワーフ、ワーフ!」


 どうしようかと考えていたところ、レオがのそりと少女に近付き、大きな顔で少女の顔を覗き込んで鳴く。

 ちらりと少女が顔を上げ、レオの顔を見た瞬間、また蹲って体を震わせ始めた。

 ……急にあの大きな顔が目の前にあったら、驚いても仕方ないか。

 レオは、怯えなくても大丈夫と言ってるようだけど、恐怖に支配されてる少女には伝わってないようだ。


「た、食べられる!」

「ワフ!? ワフワフ! ワフーワフー!」

「はぁ……レオ、怖がらせるだけだから、ちょっと離れておいてくれ」

「ワフゥ……」


 少女が食べられると勘違いして叫んだ言葉に、レオが驚いたようだ。

 食べないよーと言うように、少女に鼻を付けたり、前足の肉球でプニプニと体に触れてたけど、効果はないようだ。

 レオにはすまないが、仕方なく少女から離れてもらう事にした。


 あ、レオが空き地の隅に行っていじけた……背中をこっちに向けて、しょんぼりしてる。

 エッケンハルトさんがそれを見て、レオを慰めに行ってくれた。

 すみませんが、お願いします、エッケンハルトさん。


「えーと。大丈夫だよ。誰も君の事を殴ったりしないし、食べたりもしない。ほら、もう大丈夫だから、顔を上げて?」 


 少女の近くでしゃがみ込み、優しく声をかける。

 全身を震わせてた少女は、子供達に攻撃されてたってよりも、後から来たレオの方が怯えてる様子だったけど……気にしない。

 とにかく今は、少女を落ち着かせて、もう危険はないんだと教えてあげないとな。

 レオの大きな背中を、ポンポンと叩くエッケンハルトさんを横目に、少女に声をかけ続ける。


「誰も君を口汚く罵ったり、手を出したりはしないから。大丈夫、大丈夫だよ……」

「……ん」


 優しく声をかけ、何度も大丈夫だと言い続ける。

 こういう時、怯える子供にはどうすれば良いのか、経験があれば良かったとおもうが、生憎と俺にそんな経験はない。

 まぁ、そんな経験、そうそうあるものじゃないし、怯える子供なんていない方がいいんだけどな。

 とにかく、俺が安心してもらえるよう、大丈夫と言い続けて、ようやく小さく声を漏らした少女。

 もう少し……かな?


「大丈夫。何も怖い事なんてないから……」

「……ほん……と?」

「っ……ほんとだよ。何も怖い事なんてないんだからね?」


 体の震えも収まり、俺が大丈夫と言っているのを信じてくれたのか、少女は頭を抱えていた手を離し、ゆっくりと顔を上げた。

 その顔……というより、今まで手で押さえてた頭の部分に驚いたが、すぐに気を取り直して、優しく微笑みながら、大丈夫な事を伝える。

 ……驚いた表情をしたりしていないだろうか……ちゃんと微笑んでいる表情ができてるだろうか……少し不安になったが、少女の目はこちらをしっかりと見ている。

 それを表に出さないように気を引き締めた。


「ほら、さっきまで君をイジメてた人達はいないだろう? 大丈夫だからね」

「……あの大きな狼さんは……?」

「あー、えっと……」


 狼さんというのは、レオの事だろう。

 まだ目には怯えが見える少女は、レオを探すようにキョロキョロする。

 今見せても大丈夫かな……レオの方は、エッケンハルトさんに慰められながら、少女の後ろでこちらを窺っている。

 背中を向けたまま、自分の体越しに少女の様子を見るようにしてるけど……食べられると思われたり、子供に怯えられたのがよっぽどショックだったんだろう。

 大人ならまだしも、今までレオは子供にはすぐ懐かれてたしなぁ……レオの方も、子供が好きだから……。


「あの狼さんも……いなくなったの……?」

「いや、あのね。あの狼さんは、君を食べたりはしないし、痛い事は絶対にしないよ?」

「……でも、あんなに大きいのに……」

「大きくてもね、大丈夫なんだ。体が大きくて見た目が怖くても、優しい狼さんなんだよ?」

「……本当?」


 少女の隣にしゃがみ込み、目線を合わせて、安心させるように言い聞かせる。

 俺が、見た目が怖いと言った部分で、レオがビクッとしてショックを受けたようだけど……すまない、後で謝るから許してくれ。

 ……大きく精悍な顔つきをした狼って、近くで見ると怖いだろう……?

 いや、俺はレオの事を怖いとは一切考えていないけどな……って、誰に言い訳しているのやら……屋敷に帰ったらレオに謝って怖くないと伝えよう、とにかく今は目の前の少女の事だ。


「うん、本当に優しい狼さんなんだよ。人を食べたり襲ったりはしないんだ。じゃないと、街の中まで入って来れないだろう? 衛兵さん達に捕まっちゃうからね?」

「……そう、なのかな……? よくわかんない」

「まぁ、そうかもね。でも、俺を信用してくれるなら、後ろを振り返ってごらん。大丈夫だから、何も怖い事はないからね?」

「うん……わかった……」


 しょんぼりしているレオを見ても、まだ少女が怯えるかわからなかったが、この場にいる以上見せないと話が進まない。

 あの体の大きさで、少女に見せないように去るなんてできないし、この場所でレオと離れて行動するのも危ないしな。

 今会ったばかりの俺を、すぐに信用できるかは微妙だが、優しく声をかけ続けてくれたおかげで、少女は俺を信用してくれたみたいだ。

 俺の言葉に頷いて、恐る恐る振り返った。


「……っ……えっと、狼さん?」

「キューン……」

「っ! んん! ほら、大丈夫だろう? 狼さんは優しいから、君を襲ったりはしないよ?」

「うん、本当みたい。……ごめんね、狼さん」

「キューン、クゥーン」


 後ろを振り返った少女は、しょんぼりしながらこちらを見ているレオの大きさを見て、一瞬だけ体を震わせたが、勇気を出してレオに声をかけた。

 その声に応えるように、少女に対して情けない声を出すレオ。

 どれだけ怯えられたくないんだ……とは思うが、こんな小さな少女に食べられるとまで怖がられたら、ショックだよなぁ。

 そんな事を考えながら、レオから少女へ視線を移した時に、少女の腰……というより、お尻くらいの位置に人間には無いはずの物を見て、驚いた。


 その驚きを表に出さないように、一度咳払いをして、少女に優しく声をかける。

 優しい子なんだろう、怯えた事をレオに謝る少女。

 レオも、大丈夫だよというように、少女を怯えさせないようにゆっくり体を少女の方に向け、鼻先を近づける。

 相変わらずレオの声は情けなかったが……というより、お座りの体勢で体を反転させるって、中々面白い事をするなぁ、レオ。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[気になる点] レオ様良い子なのに怯えられて可哀そう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ