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レオに導かれて北側へ行きました



「だから、多少北側に行くくらいなら大丈夫だろうが……いくらレオ様がいるとはいえ、北の端には近づかない方が良いな」

「そうですね。わかりました。危ない場所には近づかないように気を付けます」

「うむ。それで良いと思う。いらぬ争いを招くわけにはいかないからな」


 君子危うきに近寄らず、とも言うからな。

 危ないとわかっている場所には、自分から近寄るのは止めておこう。


「しかし……タクミ殿? その……なんだかレオ様が先導しているようなんだが……?」

「そう、ですね……どうしたんでしょう?」

「……このままだと、今言っていたような北側に行ってしまうぞ?」

「確かに……レオ、どうしたんだ? そっちに何か気になる物でもあるのか?」

「ワフ? ワフゥ!」

「あるのか……」

「レオ様は何て言ったんだ?」

「何か、気になる気配がするそうです。……どうしますか?」

「むぅ……本来なら、護衛を複数連れて行くような場所なんだが……レオ様だしな……あまり邪魔するような事はしたくない」


 エッケンハルトさんが戸惑いながら、先を歩くレオを見る。

 確かにレオは、東門に近くなった辺りから、俺達の前に出て、まるで道がわかって目的地があるように先に立って移動している。

 なんとなくレオについて歩く俺とエッケンハルトさんだが、段々とその方向が北側に向かっている事に気付いた。

 レオに聞くと、この先に何かあるから行ってみたいという事だが……良いのだろうか?


 エッケンハルトさんは、レオが先導している状況を邪魔したくないようだ。

 これも、シルバーフェンリルを敬うという、公爵家の決まりがあるせいかもしれないな。

 レオはそういう事を気にしていないようだから、大丈夫だと思うんだが……。

 今までレオが何もなく、こういう事をする事はなかったな……レオが何を考えているのかはわからないが、従ってみるのもいいかもな。


「レオが何を気にしているのか気になります。行ってみますが……エッケンハルトさんは離れた方が……」

「いや、私も行こう。いざという時は私も戦えるからな。それに、この街のスラムは、他領のスラムよりはマシのようだから、大きな事にはならないだろう……おそらくな……」

「わかりました。それじゃあ、いつでも動けるようにしておきます」

「うむ」


 レオについて歩きながら、周囲を警戒するようにする俺とエッケンハルトさん。

 お互い、念のために持って来ていた腰に下げた剣に手を持って行きつつ、警戒する。

 街中で剣を抜きたくないが、もしもの時は仕方ないだろう。


 警戒しながらレオの方も見ると、あちらはあちらで、鼻で何かを探るようにしながら、顔を動かしてキョロキョロしている。

 本当に何か気になる物があるみたいだ。

 レオがここまで気にする物ってなんだろう……?

 これで、美味しそうなソーセージの匂いがした……とかだったら、屋敷に帰ってレオを説教だな……。


「しかし、レオ様はこんな所で何をしようとしているんだ……?」

「さぁ……何かを探しているような感じですけど……」


 大分北に向かって進んだ今も、レオは何かを探るように鼻をスンスンさせながら、キョロキョロしている。

 周囲は、大通りに近かった今までと違って、寂れた雰囲気だ。

 家にはどこかしら壊れた部分があるのもあり、店もあるが、客は入っていなさそうだ。

 というより、あの店開いてるのか……?

 商品すら並んでるように見えないんだが……。


 ともあれ、俺やエッケンハルトさんの疑問を余所に、レオはどんどん北に向かって進んでる。

 本当に、こんなところに何があるのか……?


「タクミ殿、気付いてるか?」

「えぇ、まぁ。ここまであからさまだと……」


 さらにしばらく北へ進むと、複数の人達が路上や家の隙間にいるのがわかる。

 それぞれ、汚れた衣服で、汚れた毛布のような物を持っており、それら全てが、俺やエッケンハルトさん、レオを見ている。

 ほとんどが驚きというか、怯えてるようにも感じるが……これはレオのような大きな狼がいるからかもしれない。

 さすがにここまで、あからさまに見られてると、エッケンハルトさんに言われるまでもなく、わかる。


「この場所で、綺麗な衣服を纏っていると、さすがに目立つな」

「……そうですね」


 俺やエッケンハルトさんが着てるのは、屋敷でしっかり洗濯された服だ。

 この場所にいる人達と違って、汚れの無い服なんて、ここでは目立って当然だろう。

 だがそれよりも、綺麗な銀色の毛並みをしたレオの方が目立ってるような気もするが……。


「ワフ……? ワフ、ワフワフ!」

「レオ、どうした? 何かあったのか?」

「……あまり長居はしたくない雰囲気だな。レオ様、どうしましたか?」


 俺達を見ている視線をどうする事もできず、ただ寂れて行く家々の隙間を通って行く。

 その途中、俺達を先導していたレオが、急に立ち止まり、何かを伝えるようにこちらに振り返った。

 レオの鳴き声を聞いて、周囲の人達がビクッとしたようにも思うが、今は無視しよう。

 多分、レオを警戒してるだけだろうしな。


「ワフ……」

「あっちに何かあるのか?」

「ふむ……?」


 レオがあっちを見ろと言わんばかりに、顔と右前足を家の隙間へと向ける。

 それを見て、俺とエッケンハルトさんは覗き込むように隙間の方へ近づいた。


「……! ……!」

「……!!」

「何か、争うような声が聞こえるな……襲われてるのか?」

「確かにそんな感じにも聞こえますが……危険なら、すぐにレオが飛び込んでそうです」


 家の隙間の奥からは、誰かの声が聞こえて来る。

 何者かが争っているようにも聞こえる声だ。


「ワフワフ。ワフ!」

「え、子供? 助けた方が良い?」

「そうなのか、レオ様?」

「ワフ」


 レオが言うには、この先で子供が襲われてるのだそうだ。

 それを助けるように言うレオ。

 いや、確かにそのままの状況なら、助けた方が良いと思うが……何でレオが行かないんだろう?

 子供好きだから、そんな事があったら真っ先にレオが向かって行きそうだけど……と思ったところで気付いた。

 家の隙間が狭くて、レオが通れないのか……。


 隙間は人が一人歩くので精一杯な広さしかない。

 さすがにこの広さだと、レオが飛び込もうにも、体がつっかえるだろうしな。

 だから俺達に向こうへ行くようにレオは言ってるのか……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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