表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

286/1996

屋台で嬉しい発見をしました



「タクミ殿、こんな話ばかりではなく、今は腹を満たす事を考えよう。ほらあっちにも肉を焼いている屋台があるぞ!」

「……そうですね」

「ワフ!」


 少し重い話になったからか、エッケンハルトさんが話題を変えるように明るく行って、先にある屋台に向かう。

 結局は、アンネさんがどうするか次第なのだから、俺達がここで話していてもどうにもならない事だしな。

 どう接するか……というのは多少参考になったが。

 とりあえず今は、ラクトスの街を楽しもう。

 レオもまだ食べ足りないようで、肉を見て尻尾を振ってるしな。


「おぉ、これも美味いな。ラクトスは色々な物があるから、美味い物も多いな。ほら、タクミ殿、こっちも食べてみろ」

「はいはい。……うん、確かに美味しいですね。ほら、レオも」

「ワフ! ワフワフ」


 いくつかの屋台を周り、両手に買った物を持ってそれに齧り付くエッケンハルトさん。

 今日は、注意するクレアさんもいないから、思いっきり食べられて楽しそうだ。

 エッケンハルトさんに勧められ、屋台で買った物を食べたり、レオに食べさせる。

 どれも美味しい物だから良いんだけど……ちょっと肉ばかりで飽きてきたかなぁ……。

 エッケンハルトさんやレオは、もっと肉を食べたいみたいようだけども。


「もう少し、あっさりした物というか……肉以外は無いんですかね?」

「ふむ、確かに肉ばかりだと飽きて来るか……。私はもっと肉ばかりでも良いのだがな」

「ワフ!」


 肉を買った屋台から離れ、他にもないかキョロキョロと視線を巡らせつつ、肉以外の屋台を探す。

 エッケンハルトさんは肉でも構わないようだし、レオもそれに同意するように頷いてるが、やっぱ肉ばかりだとなぁ。

 今回だけで、屋敷に戻ればヘレーナさんがバランスの良い食事を用意してくれるから、栄養が偏ってしまうとまでは考えないけどな。

 でもやっぱり、飽きて来るよな。


「お、あそこの屋台は……」

「む? ほぉ、他の屋台とは違いそうだな。行ってみるか?」

「はい。行ってみましょう」


 視線を巡らせた先、他の屋台では店先で肉を焼いているのに、その屋台は少し違う感じだった。

 エッケンハルトさんと一緒に、レオを連れてその屋台の前まで行くと、嗅いだ事のある香ばしい匂いがして来た。


「らっしゃい!」

「これは……パスタか? しかし、黒いな……匂いは美味しそうなのだが……」

「……焼きそば? でも、どうしてこんな所で……」


 屋台から香る匂いはソースの焦げる匂い。

 祭りの屋台や、海の家とかで食欲をそそる匂いを振りまいてるソースの香りだ。

 日本の食べ物……だよな……どうしてこんなところにあるんだろう……?

 いや、作れないわけじゃないと思うから、あっても不思議じゃないんだろうけど……。


「店主、これはどういうものなのだ? 私は見た事がないのだが……」

「へい! これはヤキソバという物でして。パスタを特製のソースを付けて、野菜と一緒に鉄板で焼くんでさぁ! 肉は少ないので、肉好きにはお勧めしませんが、食べ応えもあって、美味しいですぜ!」

「ふむ……ヤキソバ……聞かない名だな……」

「ワフ、ワフ」


 エッケンハルトさんは当然ながら、聞いた事がないようだ。

 だが、俺は聞いた事がある。

 というより、日本人なら誰でも聞いた事があるだろう。

 レオの方も、覚えているのか、尻尾を振ってよだれを垂らしそうな勢いで、鉄板で焼かれて良い匂いを出すヤキソバを見ている。


「おじさん、3人前、下さい」

「へい、ありがとうございます!」

「タクミ殿、食べるのか? 黒いが……」

「はい、もちろんです。これは美味しいですよ!」

「そう、なのか? しかし、タクミ殿は食べた事があるのか?」

「ええ。俺がいた場所では、よく食べられていましたから」

「……そうなのか」

「ワフ!」


 屋台のおじさんに3人分を頼んで、お金を払う。

 エッケンハルトさんには、俺が異世界から来たというのを話してある。

 そこで食べられていた物とわかって、色の黒さに躊躇していた雰囲気から、興味深そうに鉄板を見るようになった。

 レオはそもそも知っているから、嬉しそうに出来上がりを待って吠える。

 嬉しいのはわかるが、吠えるのは止めような? 屋台のおじさんがビクッとしてるから。


「へい、お待ち!」

「ありがとうございます。エッケンハルトさん、レオ、どうぞ。熱いのでお気をつけて」

「うむ……食べてみる事にしよう」

「ワフゥ!」


 紙を重ねた物を器にして、出来上がったばかりのヤキソバを受け取り、エッケンハルトさんとレオに渡す。

 木で作られた小さめのフォークを渡される。

 できれば箸が良かったと思うが……贅沢は言うまい。

 エッケンハルトさんとか、箸を使えそうにないしな。


「では、頂きます。……ズルズルズル! うん、美味い!」

「タクミ殿……クレアでは無いが、音を立てて食べるのは良くないのではないか?」

「あはは、確かにそうですね」

「……だが、勢いがあってそれも良さそうだな。……クレアもいないし……ズルズルズル! ん!」

「美味しいでしょう?」

「うむ! これは美味いな!」

「ワフワフ!」


 フォークを使い、野菜や肉と一緒に麺をすする。

 汁物じゃないから、すすらなくても良いんだが、久しぶりで勢いよくいってしまった。

 ヤキソバの味は、麺がパスタだからか少し違うように感じたが、十分に美味しい。

 ソースも、俺が慣れ親しんだ物とは少し違う気がしたけど……どこかで食べた覚えのある気もした。

 なんにせよ、思わぬところで出会ったヤキソバは、満足のいく味だ。


 エッケンハルトさんは、俺の真似をして勢いよく口に入れた後、目を見開いて美味しさに驚いていた。

 レオも、少し冷ましてから勢いよく食べてるから、味に満足しているようだ。

 青のりも欲しいなぁ……。



「あぁ、さっきのヤキソバというのは良かったな。色が黒いのは味が濃いからなのか? 野菜や肉もあって、バランスの取れた物だ」

「配分を変えれば、野菜多めとか、肉多めとかもできますね」

「ふむ……ヘレーナに作らせてみるか……しかし、クレアの前ではあのような食べ方はできないだろう」

「そうですね。こちらでは、音を立てて食べるのはマナー違反でしょうし……よし、レオ。粗方取れたぞ」

「ワフ!」


 ヤキソバを食べ終わり、口の周りをソースで汚したレオを拭きながら、エッケンハルトさんと話す。

 エッケンハルトさんも、ヤキソバを気に入ってくれたようで何よりだ。

 レオの方は、布を湿らせて拭いてあげたんだが……やっぱり少し残ってるか……帰ったら風呂で洗う事にしよう。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[気になる点] ヤキソバ…もしやタクミの他に異世界転移(転生)者が!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ