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伯爵家の事情を聴きました



「借金に追われて、犯罪に手を出すろくでなしですか?」

「はっはっは! あながち間違っていないな! まぁ、それでバースラーは先代から続く負の連鎖を止めようと、アンネリーゼを放ったらかしで商売に精を出していたのだ……それが悪循環になっていると気づかずにな」

「成る程、それでアンネさんは一人でいる事に慣れたんですね」

「そのようだな。まぁ、隣の領地という事もあって、伯爵家とは古くから交友があったのだが……ここ10年くらいは、年に1度会うかどうか程度になっていたな。おそらくアンネリーゼは、その時に会うクレアくらいしか、まともに対等な知り合いがいないのではないかな?」

「他の貴族達が集まったりはしないんですか?」

「それはあるがな。バースラーはアンネリーゼを、貴族の集まりに連れては来なかったな。自分が他の貴族に顔を売り、商売を成り立たせようと、そちらには気が回らなかったようだな。言葉は悪いが、娘を使えば、上手く事を運ばせる事もできたのだろうが……」



 貴族の集まりがあるのなら、そこにアンネさんを連れて行って、他の貴族の子息に売り込んだりすれば……とエッケンハルトさんは暗に言ってるんだろう。

 もしアンネさんが他の貴族に嫁ぐか、もしくは婿養子として迎える……となれば、その相手貴族は伯爵家に援助をしたり、商売の助けをしたりとなったのかもしれない。


「まぁ、バースラーの方も、全くそういう事を考えなかったわけではないのだろう。アンネリーゼには、いずれ伯爵家を盛り返すために、その身を使うような事を言っていた節がある。何故今回の事をする前にそうしなかったのかは、本人しかわからないが」

「だから、伯爵家を盛り立てるため、レオを連れてる俺に結婚の誘いをしたんですね」

「ワフ?」

「うむ。我が公爵家はもちろんの事だが……この国ではシルバーフェンリルは特別だからな。レオ様がいるというだけでも、伯爵家は簡単に盛り返す事ができただろうな」

「そうですか……」

「ワフワフ」


 エッケンハルトさんの話を聞きながら、自分の名前が出た事に首を傾げてるレオを撫でて考える。

 そういう事情があったから、突然ではあるがあの時馬車の中で、あんな申し出をしたんだろう。

 伯爵家を盛り立てるために……と考えると、アンネさんも自分だけのために動いてたとは考えられず、同情の余地はあるのかもしれない。

 かと言って、レオを利用するように結婚して、貴族になるつもりは全くないんだけどな。


「ま、そういう事で、アンネリーゼは伯爵家の屋敷をほとんど出た事がなく、周囲の使用人達に囲まれて過ごしたのだろう。文字通りの箱入り娘だな。バースラーがそう命じたわけでもなく、アンネリーゼ自身が外に出ようともしなかったため、本人にも原因はあるがな。そして、タクミ殿の言ったように、一人で考える事に慣れ過ぎてしまったんだろう」

「周りは使用人だけ……貴族の事はよくわかりませんが、使用人の心情を察して行動する貴族というのは、少ないのでしょうね。そして、使用人達を使用人としか見る事ができず、一人で考え、他人を考える事をしなくなった……と」


 クレアさんやティルラちゃん、エッケンハルトさんを見ていると、こんな貴族ばかりだと勘違いしそうだが、本来は違うのかもしれない。

 エッケンハルトさん達のような貴族が、他にいないとは思わないが、特権階級だから自分は特別……と考える人ばかりでもおかしくない。

 実際、この世界じゃなく、日本でもそういう人はいたからなぁ。

 あの会社の社長とか……あっちの会社の会長や役員とか……。


「だからああいう……病を振りまくという提案もできるんだろう。病になった民がどれだけ苦しむかも、理解できずに、な。そしてバースラーは、娘の考えを聞き、深く考えず、利益のためだけに実行してしまったんだろう」

「何と言うか……同情の余地があるのかないのか、微妙ですね」

「バースラーには、同情しなくともいいだろうな。少なくとも、あいつは判断できるだけの余地はあった。一度立ち止まり、冷静になれば自分が間違った事をしていると考える事もできただろう。しかしアンネリーゼはな……考え付いた事に何も罪はないとは言わないが……」

「環境のせい……と言えなくもないですか……」

「うむ。本来は、アンネリーゼが提案して来た時点で、子供の間違いを正すためにバースラーが教えなければならなかったんだろうがな。そんなわけで、王家に頼んで私が教育を請け負ったのだ」

「……ん?」

「どうした?」


 あれ?

 エッケンハルトさん、今王家に頼んだって言ったのか?


「いえ……その……以前、アンネさんを連れて来た時は、王家から頼まれた……と言ってましたよね?」

「うむ……まぁ、実は、私が頼んだのだ。このままバースラーと共に罰せられるのは不憫だと思ってな。もちろん、貴族として相応しい人物にならなければ、その時はアンネリーゼもバースラーと同じように罰せられる事になる……という話だがな。他領に手を出した伯爵家ごと、取り潰しとなる。……私も人の親だ……娘と同じ年頃の者が、罰せられるのは忍びない……」

「成る程……アンネさんは環境が悪かっただけで、ちゃんと人と話す環境を用意すれば、まともになると考えたんですね?」

「そういう事だ。だが、結局はアンネリーゼ次第だがな。あぁ、この話はクレアやセバスチャンには言うなよ? 色々と面倒だ……」

「ははは、またクレアさんに怒られそうですしね?」

「……うむ」

「ワフゥ」


 俺やエッケンハルトさんから見ると、強く当たっていても、仲が良さそうに見えるクレアさんとアンネさん。

 でも、エッケンハルトさんが自分から王家に頼んだ……というのが知られたら、反発からクレアさんに怒られてしまいそうだしな。

 しかし、クレアさんは何であんなにアンネさんに強く当たるんだろうか……?

 ボケとツッコミみたいな感じに見えて、微笑ましい部分もあるんだけどな……まぁ、同年代の同性の友人というのは大事にして欲しい、と思うばかりだ。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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