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282/1995

話を中断させました



「父親が娘を使って何を言ってるんですか、全く。普通、父親なら娘が誰かと……と考えるのは嫌なんじゃないですか?」

「まぁ、そうなんだがな。だが、クレアとティルラ……特にクレアに関しては、大分前から覚悟をしていたのだ。ほら、お見合いを色々持って来ていただろう?」

「あぁ、確かに。エッケンハルトさんから、積極的にお見合い話を持って来てたんだと思ってましたけど……」

「最初はクレアから言い出した事なんだがな。それで、そんな事があったから、他の娘を持つ父親よりも覚悟が決まっているぞ」


 お見合い話を父親が持ってくる、と言うのは……娘を可愛がっている父親なら、相当な覚悟があったんだろう。

 既に覚悟が決まっているから、こんな事を言って来るのかもしれないが……。


「クレアが良いと思った相手なら、私は何も言わんがな。タクミ殿なら、私も気に入っているから、ちょうど良いと思うのだ」

「いや、そう言ってくれるのは嬉しいんですが……クレアさんがどう思っているかでしょう」

「それはそうだな。まぁ傍から見ていると、クレアがどう考えているかわかってしまってな?」

「はぁ……」

「大丈夫だ、私は相手が貴族でなかろうと気にしないぞ! レオ様の事も関係ない!」

「そこでアンネさんとは違うとアピールしなくても……とにかく、エッケンハルトさんから何を言われても、微妙な気分になるので、ここまでです!」


 何が楽しくて、気になる女性の父親からアピールを受けなきゃならないのか……。

 いや、相手側の父親というのは、最大の障害とも考えられるから、それがないという……ハードルを下げられるようなものだとは思うが……それでもやっぱり微妙だ。

 ともかく、まだ街に着いてすらいないのに、こんな微妙な話を続けるのは嫌だ。


「むぅ……だがな、今はアンネリーゼもいるしな……早いうちに好物件には手を付けておかないとなぁ……」

「……レオ、もっと速度を出してくれ!」

「ワフ? ワフゥ……ガウ!」


 話を続けたいエッケンハルトさんの雰囲気を感じ取り、レオに頼んで走る速度を上げてもらう。

 ラクトスまで半分を過ぎたあたりだろうから、さっさと到着するに限る。

 レオは、話を聞いていたらしく、首を傾げて溜め息を吐くように鳴いた後、仕方なく吠えて速度を上げてくれた。

 ……そういえば、レオも俺に早く相手を見つけろと考えているようだった……全く、セバスチャンさんもそうだが、俺の周りはそういう事を考える人ばかりか?


「ちょ、ちょっと待ってくれタクミ殿! 速過ぎる! くっ!」

「……仕方ないか。もう少しだけ速度を落としてくれ、レオ!」

「ワフ」

「はぁ……よくタクミ殿は平気だな……」


 レオが速度を上げてすぐ、後ろからエッケンハルトさんの叫びが聞こえた。

 どうやら、レオのスピードが速過ぎるようだ。

 レオに頼んで少し速度を落としてもらう事で、何とか人心地付いたようだ。


「結構、レオに慣れたと思ったんですけど……?」

「いや、レオ様には慣れては来てるんだがな……しかし、さすがにあの速さはな……馬より大分速かったぞ……?」

「そうですか?」

「ワフ?」


 馬に乗り慣れてないから、俺は馬の速度がどうなのか、はっきりとはわからないけど……確かにかなり速かったとは思う。

 まぁ、俺は馬よりも早い、新幹線に乗った事があるから平気なのかもしれないな……。

 さすがに、そこまでレオは速度を出していないし、俺も生身で速度を出した時の空気に触れた事はないが……新幹線の景色が流れる速度よりは遅いからな。

 あと、ランジ村に行くのに結構急いだから、それで慣れてしまったのかもしれない。


「レオ様の速度で移動できるのは、魅力的だが……常人ではその速度に耐えられそうにないな……周囲の景色の流れが速すぎる」

「そうですか? 速い流れの景色を見るのも、結構楽しいですよ?」

「それはタクミ殿くらいだろう。他の者は、馬の速度に慣れているから、無理だと思うぞ?」


 そんなものかな?

 でも確かに、慣れていないと時速100キロ以上出ていそうな速度で、景色が流れて行くのは驚くし、目が追いつかないのかもしれない。

 風も凄いから、息をするのは辛い……平気そうにしている俺も、レオの頭が前方にあって、風を遮ってくれてるから大丈夫だしな。

 ……俺にしがみ付いてるエッケンハルトさんも、大丈夫だと思ったんだが……そうでも無かったみたいだ。



「よーし、レオそろそろ止まってくれ」

「ワフ!」


 しばらくレオに走ってもらい、ラクトスの街入り口近くで止まってもらう。


「はぁ……馬より速いのはわかっていたが、ここまでとはな……以前乗った時より速かったぞ? 馬での強行軍よりも速度を出すとはなぁ……」


 止まったレオから降り、少しふらつくエッケンハルトさん。

 馬の全速力より速く走って、ラクトスまで来た事に感心しているようだ。


「ありがとうな、レオ。また帰りも頼むよ」

「ワフワフ」

「……帰りは、もう少し遅めで頼む」

「ワフ?」


 街の入り口近くでレオから降り、お礼を言いつつレオの体を撫でる。

 エッケンハルトさんも、俺に倣ってレオの体を撫でながら、希望を言うが……レオは首を傾げてるな。

 帰りもそれなりの速度で走りそうだ。

 ともあれ、しっかり体を撫でる事ができてるのだから、エッケンハルトさんも割とレオに慣れて来たというのは本当だろう。

 ティルラちゃんと一緒に遊ばせて良かったな。


「……公爵様!?」


 レオを連れて、エッケンハルトさんと一緒にラクトスの入り口まで来ると、見張っていた衛兵さんが気付く。

 この前馬車で来た時に衛兵さんが勢揃いしてたみたいだから、顔も覚えられてるよなぁ。

 公爵という事で、前から覚えられてるのかもしれないが。


「そのままで良い。今日は特に、何かがあって来たわけではないからな。いわば視察のようなものだ。通常通り、仕事に励め」

「はっ!」

「お疲れ様です」

「ワフ」


 衛兵さんが上司か何かを呼びに行こうとするのを、エッケンハルトさんが止める。

 横を通りながら、会釈をする俺と、一言かけるように鳴くレオ。

 衛兵さんは、エッケンハルトさんがいるからか、直立不動で見送ってくれた。

 ……もしかして、レオがいるからか?

 何度か来た事があるから、衛兵さん達も慣れてると思ったけど……そうでもないのかな?



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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