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279/1996

皆に内緒で頼まれ事をしました




「私だ。タクミ殿、今良いか?」

「エッケンハルトさん? はい、大丈夫です」

「失礼する」


 外から声をかけて来たのは、エッケンハルトさんだ。

 さっきまで一緒だったが、こんな夜遅くに何の用だろう?


「すまないな、寝る所だったか?」

「いえ、のんびりしていただけなので」


 部屋へと入って来たエッケンハルトさんは。俺がベッドに座っているのを見て、寝る前かと思ったようだ。

 何も無ければこのまま寝ても良かったんだが、すぐに寝ないといけない程眠くもないし、問題はない。


「それで、どうしたんですか?」

「あぁ……そのな? 先程、タクミ殿にラクトスへ行くよう頼んだのだが……」


 何かを考えながら、エッケンハルトさんが言いづらそうに話す。

 俺がラクトスへ行くのに、何か問題でもあったかな?


「明日にでも行こうと考えていましたが、何かありましたか?」


 特に急ぐような事も無かったはずだから、明日にでも薬草を作ったらラクトスへ行こうと考えてた。

 レオに乗ればすぐだし、ニックが来る前にラクトスに行って、カレスさんに薬草を渡すのも良いだろうな。


「ええとだな……私も、その……連れて行って欲しいのだ」

「エッケンハルトさんを?」

「うむ」

「それは良いんですが……セバスチャンさんには言ってあるんですか?」

「セバスチャンには秘密で、だな。レオ様に乗って行くんだろう? それなら、馬車を使わなくても良いからな」


 セバスチャンさんに秘密か……という事は、誰にも言わずにこっそりとラクトスへ行きたいという事かな?


「でも、良いんですか? 誰にも言わなくても……護衛する人とか……」

「まぁ、本来は必要なのはわかっているんだがな。しかし、レオ様もいるし、私も戦える。タクミ殿も育って来たからな」

「はぁ……確かにレオがいれば大抵のことは大丈夫でしょうけど……」


 レオがいれば、護衛いらず……というのは確かにそうだと思う。

 まぁ、建物の中までついて来れないから、完全と言うわけじゃない。 

 エッケンハルトさんは、俺が足元にも及ばない程の剣の達人だから、何とかなるかもしれないが……。


「たまには、護衛を引き連れてではなく、個人として街を見たいのだ……セバスチャンや他の者に知れたら、止められるだろう」

「そりゃ、そうでしょうね」


 エッケンハルトさんは、気さくだし、偉ぶったりせず話しやすい人だが、公爵家の当主なんだ。

 貴族制度に疎い俺でも、何かあってはいけない人……重要人物なんだという事くらいはわかる。

 もしかしたら、エッケンハルトさんを敵のように考えて、狙う人がいるかもしれないというのも考えられるしな。


「頼む、この通りだ!」

「はぁ……もし、見つかっても、怒られるのはエッケンハルトさんですからね?」

「うむ、それはわかっている」

「わかりました。それじゃあ、明日は一緒にラクトスへ行きましょう」

「ありがとう、タクミ殿!」


 俺に向かい、頼み込むように頭を下げるエッケンハルトさん。

 もし見つかったら、またクレアさんやセバスチャンさんに怒られるんだろうなぁ、とは思うけど……懲りない人だ。

 俺が頷いて許可をすると、嬉しそうにするエッケンハルトさん……そんなに護衛とかいない状態で、街に行きたかったのか……。

 まぁ、俺は元々ラクトスに行くつもりだったから、ついでと考えれば良いか。


「それでは……明日、警備の兵の目を掻い潜って、屋敷を出る。途中で合流しよう」

「……はい、わかりました」


 屋敷を警護してる人達の目を掻い潜れるのかはわからないが、エッケンハルトさんなら屋敷の事をよく知ってるだろうから、できるんだろう。

 あぁ、最初にクレアさんと会った時も、屋敷を抜け出してきてたんだっけ……意外とザル警備?

 いや、警備をする人達の事を知ってるから、隙をつく事ができたんだろう。


「では、明日は頼む」

「はい」

「ワフ!」


 退室して行くエッケンハルトさん。

 レオは元気よく頷くように鳴いて返す。

 人を乗せて走るのが好きだから、乗せる人が多くなって嬉しいのかもしれない。


「はぁ……明日はエッケンハルトさんと一緒か……まぁ、慣れて来たから何とかなるか」

「ワフ?」

「エッケンハルトさんは偉い人だからな。さすがに緊張くらいはするさ。……さて、そろそろ寝るか」

「ワフゥ」


 俺とレオだけになった部屋で、軽く話してからベッドへと潜り込む。

 寝る間際、お酒を飲み続けてるクレアさんとアンネさんの、明日の体調が気になったが、俺には何もできる事がないと諦めて、意識を閉じた。



―――――――――――――――――――



 翌日、朝の支度をして、朝食へと誘いに来てくれたティルラちゃんと、頭にシェリーを乗せたレオを連れて食堂へ。


「おはようございます」

「おはようございます、タクミ様」

「……クレアさん達はいないのですね?」


 食堂へと入ると、セバスチャンさんとゲルダさんだけがいて、他には誰もいなかった。

 ……エッケンハルトさんは、今日はまたいつもの寝坊なようだ。

 それはともかく、クレアさんがいないのは珍しい。


「クレアお嬢様は、昨日のお酒が原因で、まだ寝ておられます。おそらく、昼までは起きられないものと……」

「……そうですか」

「アンネリーゼ様は、体調が悪いと仰って、部屋で休んでおられます。ライラも、昨日は遅くまで起きていたようで、今は休ませております」

「アンネさんも、災難だったようで……ライラさんは、ゆっくり寝て欲しいですね」


 俺とエッケンハルトさんは、食堂から逃げ出し、アンネさんを生贄に後の事をライラさんに任せた。

 飲み過ぎたクレアさんは眠りが深く、起きないようだし、アンネさんは……まぁ、二日酔いだろうな。

 ライラさんは……ゆっくり休んで下さい……ごめんなさい。


「では、朝食の用意を致します」

「すみません、お願いします」


 今日は俺とレオ、ティルラちゃんとシェリーの、いつもより少し寂しい朝食になるようだ。

 まぁ、たまにはこういうのも良いかもな。


「シェリーに怒られました……」

「ははは、ティルラちゃんが食べてるシェリーに、ちょっかいをかけるからだよ?」

「ワフ」

「ごめんなさい、シェリー」

「キャゥ!」


 朝食中、ティルラちゃんが、一生懸命食べてるシェリーを触っていた。

 たまたま、手が食べてるシェリーの口の近くへ行き、取られると勘違いしたシェリーがティルラちゃんに怒ったのだ。

 レオも、怒るのは当然とばかりに頷いている。

 ティルラちゃんが謝っても、すぐに機嫌が直らなかったらしく、シェリーは一声鳴いて、プイっと顔を背けた。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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