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277/1995

ラクトスへレオの散歩を頼まれました



「では、諸々の確認が取れ次第、ランジ村での生産を開始してもらおう。それで良いか、タクミ殿?」

「はい。ランジ村がこの先どうなるかは気になっていたので、いい方向に進むようなら、反対する事はありません」

「セバスチャンと話していたが、病の噂が広まってしまった場合、ランジ村のワインが売れなくなる可能性もあったからな……もちろん、私達は広めないようにするし、病の原因が何だったかは話さないようにするがな」

「まぁ、噂なんて、どこから出てどう背びれ尾ひれが付くかわかりませんからね」

「そうだな。ロゼワインを新しく販売し、そちらに話題を移す事で噂が出る可能性を潰せる。先に噂が出ていても、広がる可能性は低いだろう」

「そうですね。エッケンハルトさん、これはカレスさんの店で?」


 エッケンハルトさんは、ランジ村のワインが病の原因になった……という話が広まって、忌避される事を危惧していたみたいだ。

 セバスチャンさんとも話したが、ロゼワインが新しい話題となれば、噂も立ち消えるだろうな。


「もちろん、カレスの店でも販売はする。だが……評判を広めるのであれば、それ以外の店でも売らなければな。それに、ゆくゆくは他の街でも販売したい。このワインは広く飲まれるべきだ」

「確かにそうですね」


 カレスさんの店だけだと、広まるのは遅いだろうからな。

 公爵家直下の店という事はあるだろうけど、やっぱり一つの店でできる事は限界がある。

 エッケンハルトさんが考えているように、評判を……と考えるなら、他の店でも売るようにしないといけないか。


「まぁ、そこらはまたセバスチャンとの相談だな」

「はい」

「それとだな、タクミ殿」

「どうかしましたか?」

「時間がある時で良いんだが、ラクトスの街にレオ様を連れて行ってくれないか?」

「レオをですか?」

「ワフ?」


 エッケンハルトさんから、レオをラクトスに連れて行く事を提案された。

 何故なのか聞き返す俺と一緒に、今までブドウジュースを飲んで満足そうにしていたレオが首を傾げる。

 急に自分が呼ばれて驚いたのもあるかもしれない。


「これからもタクミ殿は、ラクトスの街に行く事もあるだろう? 街を守る衛兵達のほとんどは大丈夫だろうが……街に住む者達はまだ、レオ様を知らない者もいる。レオ様を見ても混乱しないよう、多少は慣れて欲しいと思ってな?」

「そうですか、わかりました。ですが、さすがに毎日は行けそうにありませんが……」


 どのくらいの頻度で行けば良いのかはわからないが、さすがに毎日は行けないだろう。

 薬草を作らないといけないし、剣の鍛錬もあるしな。


「あぁ、毎日でなくとも良いんだ。数日……4.5日に1度くらいで構わない。もし他の事があるのなら、それよりも頻度は少なくても良いだろう」

「わかりました。そのくらいの頻度でラクトスに行こうと思います。……それじゃあ、明日にでも1度行ってきます」

「ワフ!」


 4.5日くらいなら、暇を見て行けば良いから、無理じゃない範囲だな。

 エッケンハルトさんに返答すると、レオが楽しそうに吠えて頷く。

 レオの方は、外を走る事ができるから、運動にちょうどいいだろう。


「よろしく頼む。もしラクトスの街に用事があるのなら、それを1度と数えても構わないからな」

「はい。ちょうど良いので、ラクトスの観光でもして来ますよ」

「ワフワフ」


 ラクトスには何度か行ったが、ゆっくり見て回る事はほとんどなかったしな。

 行った回数はラクトスの方が多いのに、結構のんびりと過ごさせてもらったランジ村の方が、よく知ってるくらいだ。

 規模が違うし、目的も違うから、比べるものでもないかもしれないが……。


「ラクトスの事で聞きたいことがあれば、セバスチャンにでも聞くと良いだろう。どこに何があるか、とかな?」

「わかりました。何度か行った事があっても、どこに何があるかはまだよく覚えていないので……その時はセバスチャンさんに聞く事にします」


 俺が覚えてるのは……カレスさんの店と、孤児院……あとは仕立て屋とイザベルさんの店くらいか。

 雑貨屋とかも行った事があるが、一度だけでセバスチャンさんに先導されながらだから、よく覚えて無い。

 あ、イザベルさんの所にも寄って、お茶をして話して来るのも良いか。

 魔法具の事を色々聞いてみたいし、イザベルさんの話し相手になるのも悪くない。


「ふむ、とりあえずはこんなところか……しかし、妙に他が静かだな……」

「そうですね……?」


 夕食は、話しながら全て食べており、食後のティータイムとなっている。

 今日はお茶では無く、ロゼワインとブドウジュースだけどな。

 エッケンハルトさんの言葉に、そちらへ向けていた視線を外し、クレアさん達の方を見た。


 ティルラちゃんは話が難しかったのか、うとうとして寝そうになってる。

 シェリーも、ティルラちゃんに抱かれて寝てるな。

 クレアさんとアンネさんは、俺やエッケンハルトさんの話に入らず、ロゼワインを飲む事に集中していたようだ。


「ライラ、おかわりをちょうだい」

「ですが、クレアお嬢様……」

「いいから、持って来なさい。アンネの分もよ」

「……はい、畏まりました」

「クレアさん、私はもう限界ですわ……」

「何を言っているの、アンネ。まだまだ飲めるでしょう?」

「……これは……クレア、いつの間にか酔っていたのか……?」

「そうみたい、ですね……」


 俺とエッケンハルトさんのこめかみを、冷たい汗が流れたような気がした。

 ワイングラスを傾け、ロゼワインを飲むクレアさんは、一見して普通なのだが、目が据わっており、何となく雰囲気もいつもと違う。

 顔が赤くなったり青くなったりはしていないから、俺もエッケンハルトさんも気付くのが遅れた。

 クレアさんに付き合わされてるアンネさんは、がっしりと腕を掴まれ、逃げる事ができなくなっているようだ。


「ん? どうしましたか、お父様、タクミさん?」

「いや、そのな……飲み過ぎではないのか?」

「何を言っているんですか。公爵家の者ならば、この程度……何ともありません!」

「そ、そうか?」


 何か、どこかで見た事があるような……?

 あぁ、ランジ村でのフィリップさんか。

 ロゼワインは、ランジ村のワインだから、もちろんアルコールは高い。

 甘みが強く、口当たりが良いから、ついつい飲み過ぎてしまったんだろう。

 ライラさんが持って来た追加のロゼワインを飲むクレアさんを、エッケンハルトさんと二人で見て、気にしなかった事を後悔した。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[気になる点] 甘いワインは糖が残ったままなので、現実ではアルコール度数5%くらいです。 糖が分解されてアルコールになりますので。 酒好きなので気になるんですが、異世界なので、そういったものと思いな…
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