表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

268/1995

薬草の調合に取り掛かりました



「結構、力がいるのですね……」

「そうだね。薬草をしっかりすり潰す必要があるからね」


 すりこぎで薬草をすり潰すのに、ミリナちゃんは少し苦戦しているみたいだ。

 薬草は1種類以外は葉っぱの状態なので、これらをしっかり潰す必要があるからな……割と力作業だ。

 ミリナちゃんの細腕には、ちょっとしんどい作業でも、剣を振り慣れて来た俺にはそこまで苦労はなかったけども。

 まぁ、ミリナちゃんにはおいおい慣れて行ってもらおう。


「あ、段々とペースト状になって来ました」

「ふむ。本だと、この状態から乾燥するまで混ぜ続けるとあるけど……この状態だとどうなんだろう?」

「どうなんでしょうか……?」


 すり潰した葉っぱに残っていた水分で、完全に粉末にはならず、今俺とミリナちゃんのすり鉢の中には、ペースト状になった物がある。

 薬草自体は混ざった事になってるが、本には乾燥させて完全な粉末になるまで混ぜる事と記されていた。

 ……結構、時間がかかるものなんだな……。


「ワフ?」

「レオ、どうした?」

「ワフ、ワフ」

「味見してみろって? でも、本には乾燥するまでと書いてあるんだけど……?」


 俺と一緒に客間まで来たレオが、後ろからすり鉢の中を覗いて鳴く。

 ティルラちゃん達と遊んでいても良かったんだが、レオは薬の知識に興味があるみたいだからな。

 興味津々に、俺とミリナちゃんがする作業を見ていた。

 そのレオの指示か……ワインの時、匂いだとか気配で選別してた事もあるし、従ってみるか。


「じゃあ、ミリナちゃん。ちょっとだけ味見してみよう?」

「大丈夫でしょうか? 失敗してたりしたら……」

「まぁ、味がどうなっていても、体が悪くなるような事はないと思うよ。そういう薬草じゃないしね」


 栄養を含んだだけの薬草だから、味が酷い事になっていても、さすがに体に支障をきたす事はないだろう。

 栄養を取り過ぎて……とかはもしかしたらあるかもしれないが、今回は少しだけだしな。


「少しだけ……ん……」

「……ん」


 ペーストになった薬の端の方に少しだけ指を触れさせ、それに付いた物を舐める。

 俺の様子を見ていたミリナちゃんも、恐る恐る同じようにし、自分のすり鉢から薬を指に付けて舐めた。


「っ~!」

「し、師匠! っ~!」


 三種類の薬草が混ざったはずなのに、舐めた薬は、酸味が凄くきつくなっていた。

 二人して口をすぼめ、顔を見合わせて酸っぱさに耐える。

 酸っぱい梅干しを味わってる感覚だ……後から後から唾が口の中に溢れて来る。

 ……梅干しを食べた事のある俺はまだしも、食べた事が無いミリナちゃんにとっては衝撃だろうな……。


「ワフ?」

「……いや、レオ。この味は駄目だ。酸っぱ過ぎて、とてもじゃないけどこのままじゃ食べられない」

「ワフゥ……」

「レオ様……口の中が酸っぱいです……」

「……どうぞ」

「ありがとうございます」

「……ゴク、ゴク……すみません……はぁ」

「いえ」


 俺達の様子を見ていたライラさんが、さっとお茶を用意してくれる。

 それにお礼を言いつつ、俺とミリナちゃんはお茶を飲んで口の中を洗い流す。

 俺達の様子と、ミリナちゃんの言葉を受けて、レオは失敗したかぁ……と言いたそうに落胆する。

 さすがにレオでも、味までは想像できなかったのかもしれないな……。


「師匠、これは……失敗ですか?」

「いや、失敗とまでは言えないだろうけど……さすがにこのままだとちょっとね」


 ヘレーナさんやセバスチャンさんと味見をした時よりも、きつい酸っぱさだった。

 どうしてそうなったのかはわからないが、混ぜる事によって酸味が増幅されたのかもしれない。

 不思議だ……。


「とりあえず、本の通りに乾燥するまで混ぜ続けてみよう」

「わかりました。味が変わるとは思いませんが……やってみます」


 味の面では失敗かもしれないが、効果の面ではまだわからない。

 さすがにこのままワインに混ぜる事はできなさそうだが、一応本に書かれている通り、乾燥して粉末になるまでやってみようと思う。

 ミリナちゃんの言う通り、味が変わるとは思えないけど……初めての調合だから、ちゃんと最後までやってみよう。


「師匠、腕が疲れてきました……」

「調合は、結構疲れる作業だね……」


 すり鉢にある薬を、すりこぎを使って混ぜる事しばし……さすがに腕が疲れて来た。

 鍛錬をしている俺でもこうななのだから、ミリナちゃんの方はさらに辛いだろうと思う。

 それでも、なんとか頑張って手を止めないのは偉い。


「ワフ?」

「ん、レオ?」

「レオ様?」

「ワフワフ」

「本を? えっと……あ」

「どうしたんですか、タクミさん?」


 レオが開きっぱなしにしていた本を覗いて、何かを伝えて来る。

 その声に従って、本を見てみると……「乾燥させる作業は一人では時間がかかるため、二人以上で風を当てつつ作業をする事で、時間を短縮させる事ができる」と書かれているのを見つけた。


「ミリナちゃん……風を当てながらやると早いみたいだ……」

「……そうなのですか?」


 風を当てながら混ぜるという作業は、酢飯を作る作業を彷彿とさせたが、確かに風を当てた方が乾燥は早くなるだろう。

 ミリナちゃんは想像できないのか、首を傾げてるけど……まぁ、そういう知識が無ければわからなくても仕方ないか。


「ワフ!」

「レオ? おぉ、風が……」

「レオ様、凄いです!」

「……シルバーフェンリルの魔法ですね。このような事もできるのですか」

「ワフゥ」


 俺達の様子を見ていたレオが、急に一声吠えた後、そちらからそよ風が発生し、俺とミリナちゃんの手元へと吹いて来た。

 ……こんな事もできたんだな。

 ミリナちゃんも、ライラさんもレオの魔法に驚き、そんな様子を見てレオは自慢するような仕草。


「気持ちいい風ですね」

「そうだね。おっと、手を動かさないと。レオ、ありがとうな」

「はい」

「ワフ」


 レオから吹いて来る風を感じつつも、手を止めずにすりこぎで混ぜ続ける。

 魔法を使ってくれたレオに感謝をして、風に当てながら混ぜる事しばし……ようやくペースト状だった薬が、粉末になって来た。

 順調に乾燥して来たようだ。

 ほとんど粉末になったから、そろそろかな?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ