表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

263/1996

夜の素振りがバージョンアップしました



「それじゃ、クレアさん。後はお願いします」

「アンネが妙な事をしないよう、見張っておきますよ」

「ははは、そんな事はそうそう無いでしょうけどね」


 クレアさんにアンネさんを任せ、俺達は裏庭へと向かう。

 エッケンハルトさんに見られながら素振りと言うのも、緊張するが、素振りの仕方を間違えていたりしてないか確認してもらえるだろうし、ありがたい。

 鍛錬の時を見る限り、エッケンハルトさんの体がなまってるなんて事は無いだろうから、きっとそういう理由で俺達を見たいんだろうなぁ。



「あぁ、先に薬草を作って良いですか?」

「うむ。雑事は先に済ませておいた方が良いからな。その方が鍛錬にも集中できる」

「タクミさんの『雑草栽培』、私も見ます!」

「ワフ」


 裏庭について、先にヘレーナさんに渡す滋養強壮の薬草を作る事にする。

 エッケンハルトさんのように、雑事とは思わないが、鍛錬に集中するために用事は先に済ませておいた方が良いからな。

 ティルラちゃんは、お座りしているレオにしがみ付いて、一緒に俺を見守るようだ。

 ……『雑草栽培』を見るよりも、レオのモサモサの毛にしがみ付いてるのが、気持ち良いからなんだろうな。


「ふむ……改めて見ても、不思議な光景だな。薬草が簡単に地面から生えて来る」

「まぁ、使ってる俺自身、不思議とは思いますね」


 『雑草栽培』には慣れて来たが、それでもやっぱり手を付いた地面から、ニョキニョキと植物が生えてくるのは不思議な光景だ。

 どういった力が、どう作用して栽培できるのか、よくわかってないからな……わかってても不思議な光景かもしれないが……。


「それじゃあ、この薬草をヘレーナさんに届けて来ます」

「うむ。私は、ティルラと先に鍛錬を始めておこう」

「ワフワフ」


 エッケンハルトさんに断って、いくつか栽培した滋養強壮の薬草を持って、裏庭から離れる。

 レオは俺について来るようだけど、厨房に入っても大丈夫なのか?


「失礼します、ヘレーナさんはいますか?」

「はいはい、タクミ様。こちらにいますよ」

「あぁ、ヘレーナさん。約束していた物を持ってきました」

「仕事が早いですね、タクミ様。もう少し後だと思ってました」

「忙しそうですから、早めに届けた方が良いと思って……」

「ワフワフ」

「おや、レオ様もご一緒なのですね?」

「ワフ!」


 厨房に来て、ヘレーナさんがいるかを確認しようとしたら、向こうが先に俺に気付いたようだ。

 今は手が空いていているようだ、ちょうど良かったな。


「すみません、食べ物を扱う場所にレオを連れて来て……」

「良いんですよ。レオ様はシルバーフェンリルですからね。この屋敷ではレオ様を邪険にするような者や場所はありませんよ」

「はぁ……」

「ワフ、ワフ」

「レオ、夕食ならさっき食べただろ? 食べ物の匂いがするからといっても、おやつは無いぞ?」

「クゥーン……」

「あははは、レオ様は夕食だけじゃ足りなかったようですね。ソーセージ、追加しますか?」

「ワフ!」

「いえ、癖になったらいけないので……。レオ、駄目だぞ」

「ワフゥ……」


 厨房であっても、レオは特別扱いで入っても良いそうだが、ここは色々な匂いがするからな。

 食べ物の匂いに反応したレオが、今のように食欲をそそられてはいけない……あまり連れて来ないようにしよう。

 ヘレーナさんからの申し出に、尻尾をブンブン振っているレオに、変な癖がついてしまわないよう注意する。

 しおれた尻尾を見ながら、明日の朝はたっぷり朝食を用意してもらおうと考えた。

 ……俺も、結構レオに甘いなぁ。


「それはともかく、ヘレーナさん。滋養強壮の薬草です」

「はい、確かに。明日には処理を終わらせて、いつでもワインに混ぜられるようにしておきますね」

「お願いします。さぁ、レオ行くぞ」

「ワフ!」


 ヘレーナさんや、厨房にいる他のコックさんに挨拶をして、レオを連れて厨房を出る。

 明日のラモギを混ぜたワインの出来次第で、すぐに滋養強壮の薬草を使ってみる予定なんだろう。

 やる気のヘレーナさんだけど、まだ調合が始まってすらいない……ミリナちゃんと一緒に頑張ろう。


「戻りました」

「ワフ」

「はぁ……はぁ……レオ様……はぁ……タクミさん!」

「おぉ、タクミ殿にレオ様。戻ったか」

「……ティルラちゃんが随分疲れてる様子ですけど、どうかしたんですか?」

「ワフ?」


 裏庭に戻ると、俺とレオを見つけて笑顔のティルラちゃんだが、その息は荒く、整えるのに必死な様子だ。

 いつもの素振りならもう大分慣れて来てるから、汗を掻くぐらいはするが、ここまで息が乱れる事はないはずなんだけど?

 隣で、ティルラちゃんの様子を見たレオも首を傾げてる。


「なに、素振りの方は体に染みついているようだからな。新しい鍛錬を、と思ってな?」

「新しい鍛錬、ですか? でも、こんな夜に……」

「これは一人でやる鍛錬だから、性質は素振りと似ているのだ。傍から見ると、素振りをしているようにしか見えないしな」

「素振りと似ている? どんな鍛錬なのですか?」


 エッケンハルトさんがティルラちゃんに課した、新しい鍛錬。

 俺も一緒に鍛錬している身だから、興味がある。


「素振りは、体作りのための鍛錬だ。新しい鍛錬は、体と考えを鍛えるものだな」

「考えを? どうやるのですか?」

「それは簡単だ。いつものように素振りをする感覚と一緒に、剣を振る時、相手がいると想定して振る事だ」

「相手を想定して……イメージトレーニング、ですか?」

「そうだ。相手がどんな動きをするか、どう避けるのか、などを想定しながら相手に当てるように剣を振るのだ」

「成る程……」


 ボクシングのシャドーボクシングのようなものだろう。

 相手の動きを思い浮かべ、想定敵を倒すように剣を振る……ただの素振りよりは、疲れそうだ。

 だからティルラちゃんは、必死に剣を振って疲れてしまったのだろう。


「通常よりも多い素振りで、タクミ殿とティルラは剣を振る事を体に染みつけた。これをさらに敵を思い浮かべ、それと戦う事を想定する事ができるだろうと思ってな」

「そうですか、それじゃあ俺も……」

「うむ。タクミ殿もやると良いぞ。私も久々にやる事にする」

「はい」

「まだまだ、私もやります!」


 エッケンハルトさんの説明を聞き、納得した俺は、イメージトレーニングに取り掛かる。

 えーと、対象の敵は……裏庭は広いから、ランジ村で襲って来たオークで良いか……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ