異世界で世紀末? な人達に絡まれました
仕立て屋で服を選んでいると、靴が置いてあるのを見つけたのでついでにそれも購入した。
靴は動物の革で作られた物と木で作られた物があったが、さすがに木は固いし重かったため革靴にした。
これなら仕事で履いてたビジネスシューズと同じ感覚で履けるからな。
ちなみに今もビジネスシューズを履いている。
そういえば、靴以外はこの世界に来る前に部屋で寝た時の恰好のままなのに、何故かいつも履いてる靴を履いていた。
部屋に靴を履いたまま上がるわけがないから、寝る時は履いてなかったはずなのに……何故だろう?
……考えても仕方ないので、頭の隅に追いやる事にしよう。
裸足で森の中を歩かなくてラッキーだったとでも考えておけばいいのかもしれないな。
「それでは、仕立てに数日程頂きますので、またその頃にお越し下さいませ」
「はい。ハルトンさん、お願いしますね」
「お願いします」
「畏まりました。クレア様からの仕立て依頼、きっと素晴らしい服を作り上げて見せます!」
異様に力の入ったハルトンさんに見送られ、俺達は仕立て屋を出た。
「次は部屋に置く小物類ですな。雑貨屋に行けば揃うと思います。タクミ様、こちらです」
「はい」
セバスチャンさんに案内され、先程通って来た大通りとは別の道に入る。
しばらく歩いていると、俺達の前を6人の男達が塞いで止められた。
「おう、景気良さそうじゃねぇか」
「ちょっとなぁ、俺達金に困ってんだよ」
「持ってる金、出しな」
「ほぉ、嬢ちゃん中々じゃねぇか」
「さっきあの仕立て屋から出て来てたろ?」
「あの仕立て屋は高級店だからな、って事は金は余ってんだろ?」
……何と言うか、テンプレというのかな? 時代錯誤なカツアゲを思い出させる事を男達は口々に言ってる。
一人だけ、クレアさんに変な目を向けていたのにはイラッとしたが。
「……お嬢様、お下がり下さい」
クレアさんと俺の前、先導していたセバスチャンさんよりも前に出るフィリップさんとヨハンナさん。
二人共腰に下げていた剣を抜いてやる気満々である。
男達は手にナイフやショートソードって言うのかな? 短めの剣を持っていたりと武装してるから、フィリップさん達がすぐに剣を抜くのは当然だろう。
「お? やるってのか?」
「はっ! 俺達ゃそんな剣で抑えられると思ってんのか?」
「こっちは6人、そっちは二人、簡単な仕事だなぁ、はははははは!」
「「「ひゃはははは!」」」
どこの世紀末だろうかと思うような笑い方をする男達。
恰好もそれっぽいぼろぼろの服装や髪型だったり、棘が付いてたりする。
テンプレなセリフを言う奴はテンプレな恰好をする……ちょっと賢くなったな俺。
そんな事を考えながら様子を見ていた俺の横から、のそりとレオが前に出た。
「な、なんでぇこいつ!」
「ウルフか? にしちゃ随分デカイな……」
「ち、そんな魔物がどうしたってんだ!」
「こんな奴!」
男のうちの一人がレオを見て虚勢を張ろうとしたのか、持っていたショートソードをレオに向かって振り下ろした。
「レオ様!」
「ワフ」
レオは顔に向かって振り下ろされたショートソードを簡単に口で捕まえ、牙で噛んで砕いた。
「「「「「「…………え?」」」」」」
レオがショートソードを砕いた事に男達は驚き、口を開けたまま呆けている。
あ……ショートソードを持ってる男だけ、何が起こったのかわからないような顔で手に持ってるショートソードを見てるな。
ショートソードは半ばから折れて半分になっている、折れた先の方はレオが砕いたせいで地面に破片が散らばってるな。
「……レオ、変な物を食べちゃいけないぞ」
「ワウ……ペッペッ」
口の中に入った破片を吐き出すレオ。
男達はそれを見ての驚きからか、レオへの恐怖心なのか、動けないでいる。
「えっと、クレアさん。どうしましょうか?」
「そうですね……フィリップ、衛兵を呼んで来てもらえる?」
「はっ!」
クレアさんが少しだけ考え、フィリップさんに声を掛けた。
フィリップさんは短く答えた後、来た道を戻り衛兵を呼びに走って行った。
「セバスチャン、ヨハンナ」
「畏まりました」
「はっ」
続いてセバスチャンさんとヨハンナさんに一声呼びかけると、二人はすぐに動き出し、何処からか縄を取り出して、動けずにいた男達を縛り始めた。
「ここは人の行き来が激しい街ですけど……少しだけ治安が心配ですね」
「こういった人は多いんですか?」
「多いと言う程では無いと思いますが、稀にいるようですね。行き来する商人や旅人を狙って、お金を巻き上げようと考える者達です」
人が多くこの街に訪れるという事は、お金を持った人、商売をしに来た商人や旅の路銀を持つ人達がいるのは当然の事。
そんな人達を狙って金をせしめようとする輩が出るのだろう……この男達もそういった輩だと思われる。
「お嬢様、終わりました」
「ご苦労様」
セバスチャンさんとヨハンナさんは素早く男達を縛り上げ、動けなくなった男達は、その頃になってようやく正気を取り戻して叫び始める。
「放しやがれ!」
「縄を解け!」
「くそ、これで済んだと思うなよ!」
「ちょっと気持ち良い……」
等々……色々と叫んでいたが、一度レオが大きく口を開けて牙を見せ、威圧するように吠えたらおとなしくなった。
一人、ヨハンナさんに縛られた男だけは何か変な事を言っていた気がするけど無視した。
そのあたりで、先程衛兵を呼びに行ったフィリップさんが4人の兵士を連れて帰って来た。
「お待たせしました」
「こいつらが暴漢達ですか。申し訳ありません、クレア様。直ちに詰め所に連れて行きます」
「お願いしますね」
「はっ!」
クレアさんの事をこの街の人も知ってるのかな。
衛兵の人は何も聞かずにクレアさんの名前を言っていた。
まぁ、街の近くにあんな大きな屋敷を建てて住んでるから有名でもおかしくはない、のかな。
しかし……衛兵もクレアさんには敬語だったな……。
帰ったらクレアさんがどんな人なのか、セバスチャンさんにでも聞いてみよう。
そういえば、何故あの屋敷に住んでるのかとか色々聞いて無い事が多いからな。
別荘とか言ってたけど、それなら本宅は何処にあるのかとか、何故本宅じゃなくて別荘にいるのかも聞いてみたい。
そんな事を考えてる間に男達は衛兵に連れられて行った。
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