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ヘレーナさんは忙しそうでした



「あ、ライラさん」

「タクミ様。裏庭にいると思っていましたが?」

「薬草を作り終えたので、入って来ました。えーと、これを……ニックが来たら渡しておいて下さい」

「畏まりました。タクミ様の方は?」

「俺は、これからヘレーナさんのいる厨房に、ワインの処理を相談に行きます。……ヘレーナさん、厨房にいますよね?」

「ヘレーナでしたら、今頃は昼食の準備のため、厨房にいるでしょう。わかりました、それではニックさんには私から薬草を渡しておきますね」

「お願いします」


 厨房へ行く途中、ライラさんを見つけたので、ニックに渡す薬草を俺の代わりにお願いしておく。

 ついでにヘレーナさんが厨房にいるか聞いたが、昼食の準備のために厨房にいるので間違いないようだ。

 昼食の準備か……いつも頑張って用意してくれてるみたいだから、ありがたいな。



「失礼します。……えっと、今大丈夫ですか?」

「タクミ様? 何か御用でしょうか?」

「ヘレーナさんは、今?」

「ヘレーナ料理長ですか。呼んで参ります」

「忙しい所を、すみません。お願いします」


 厨房に来ると、数人の白い服を着たコックさん達が忙しそうに動いてる最中だった。

 昼食の用意かな?

 忙しい時に来てしまって少し申し訳ない。

 俺に気付いた若い男性のコックさんにヘレーナさんの事を聞き、呼びに行ってもらう。

 行ってもらったのは良いけど……もし忙しくて手が離せないようなら、また後にしよう。


「タクミ様? どうなされたのですか?」

「えーと、ワインに漬け込むラモギを持って来たんですけど……今忙しいですか?」

「あぁ、昼食の準備が山場ですからね。とは言え、皆慣れているので少しなら大丈夫ですよ。はい、確かにラモギは受け取りました。昼食の調理が終わり次第、試作をしてみます」

「お願いします。あ、漬け込んで完成した後は、俺かレオを呼んで下さいね。レオじゃないと、病気が無くなったかどうか判別できませんから」

「畏まりました」


 イザベルさん曰く、微量な魔力を調べる魔法具があれば選別できるらしいが、ここにはそんな物はないからな。

 レオには手間を掛けさせてしまうが、お願いするしかない。


「それと、ワインを良くする薬草なのですが……」

「ヘレーナさん、手伝って下さい!」

「わかったわ! タクミ様、申し訳ありません。調理の方が……」

「あぁ、こちらこそすみません。邪魔をしてしまったようで。また後で時間ができた時に来ますね」

「すみません……」


 忙しそうなヘレーナさんが、他のコックに呼ばれ、そちらへ行かなくてはならないようだ。

 申し訳なさそうにするヘレーナさんに、また後で来ると伝え、俺は厨房を出た。

 皆の昼食を用意してるんだから、邪魔をしてはいけないしな。


「では、また」

「はい」


 忙しそうなヘレーナさんに挨拶をして、厨房を出る。


「おや、タクミ様? 厨房に何か御用がありましたかな?」

「セバスチャンさん。ヘレーナさんに、ワインへ漬け込む用のラモギを渡して来たんです」

「成る程、そうなのですか」

「他に、薬酒用の薬草も持って来たんですが……忙しそうでしたので、また後にしようと出てきたところですよ」

「この時間は昼食の支度で、厨房は戦場の様相ですからな、致し方ありません。しかし、薬酒のための薬草ですか?」


 厨房を出てすぐのところで、ばったりとセバスチャンさんと出くわす。

 セバスチャンさんも、何か厨房に用事があったのか?


「はい。裏庭で薬草を作ってる時に、試しにと考えて『雑草栽培』を使ってみました。いくつか新しい薬草ができたので、ヘレーナさんに見てもらって、意見をもらおうかと……」

「そうでしたか。ふむ……それはどんな薬草なので?」

「えーと……簡単に言うと、体に必要な物を補う目的で作られた薬草です。病気にならないような強い体を……という考えで作りましたが……」

「が……?」

「いえ、セバスチャンさん。時間は大丈夫なんですか? 厨房に何か用があったんじゃ……?」

「おっと、そうでした。興味深い事でしたのでつい……。すみません、タクミ様。話はまた……ヘレーナと相談する時にでもしましょうか」

「わかりました。ヘレーナさんに相談する時に、セバスチャンさんも呼びますよ」

「はい。お願いします。それでは……」


 新しい薬草、というのに興味を示したセバスチャンさんだけど、厨房に用事があるのを忘れそうになっていたみたいだ。

 昼食に関係する事かもしれないから、ここで立ち話して時間が経ってしまったらいけない。

 思い出したセバスチャンさんと、相談の時に呼ぶ事を約束して別れた。


「さて、少し暇になったな……どうするか……エッケンハルトさんの様子を見に、裏庭に戻るかな?」


 昼食までは、まだ少し時間がある。

 今日は他にやる事はあまりないため、暇になってしまった。

 鍛錬に関しては、夕食前の予定にしてるし……ミリナちゃんとの勉強は、今日は使用人見習いの方が忙しいため、お休み。

 昼食後から鍛錬前までに、ヘレーナさんやセバスチャンさんと相談する時間があるとしても、これからの時間の予定は何も無い。


「ニックへ渡す薬草は、ライラさんに任せたし……やっぱり裏庭かな」


 こんな事なら、ニックに渡す薬草も自分でやっておけばよかったなぁ……と考えつつ、厨房を離れ、裏庭への廊下を歩く。


「ありがとうございます、姐さん。忙しいアニキの代わりをしてくれて」

「姐さんは止めて下さいと言っていますが……」

「……ん?」


 廊下を歩いていると、男女の話し声が聞こえて来た。

 使用人さん達が、何やら話しているのかとそちらに目を向けてみると、そこには薬草の入った袋を持つニックと、俺から預かった薬草を渡し終えたライラさんがいた。


「ライラさん、ニック」

「タクミ様? 用の方はもうお済みですか?」

「アニキ! 忙しかったのでは?」

「ははは、厨房は今昼食の準備で大忙しなようでした。なので、さっと用件を済ませて出て来ましたよ」


 玄関ホールの近くで話す、ライラさんとニックに話しかける。

 二人共、俺がここに来るとは思っていなかったようだ。

 何故かニックが嬉しそうな顔をしているが……さすがに俺に会えたからじゃないだろう……ないよね?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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