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セバスチャンさんに経緯を聞きました


 

「タクミさん、申し訳ありません。今日はここまでのようですね。色々話せて楽しかったですよ」

「えーと。俺も楽しかったです……よ?」


 クレアさんは振り向かず、エッケンハルトさん達の方へ顔を向けたまま、俺に声をかける。

 耳まで真っ赤になっているようだから、覗かれてた事がよっぽど恥ずかしいんだろう。

 ……いや、もしかすると怒ってるから……かもしれないな。


「お父様! 貴方は公爵として……!」

「ちょ、ま、まてクレア! 私が、私が悪かった! 謝るから! ああぁぁぁぁ!」

「旦那様……お達者で……」

「姉様、怖いです……」


 エッケンハルトさんに叫んで、そのまま襟首を掴んで引きずって行くクレアさん。

 大柄なはずのエッケンハルトさんを、細腕で引きずって行く姿は、迫力があり過ぎて、俺が口を挟む事はできない。

 というか、あの体で抵抗してるはずのエッケンハルトさんを、片手で引きずるって……クレアさんも結構力持ち?

 セバスチャンさんは、引きずられて行くエッケンハルトさんに対して、目を閉じてるし、ティルラちゃんはクレアさんに怯えてる様子だ。


「はぁぁぁぁ……」


 クレアさんが近づいて来た時からの緊張と、公爵様自ら覗きをしていた事への呆れを込めて、重い溜め息を吐いた。


「タクミさん、疲れてますか?」

「ティルラちゃん……そういう事じゃないんだけどね?」


 クレアさんがエッケンハルトさんを連れていなくなり、怯えていたティルラちゃんも平常に戻ったみたいだ。

 座っている俺の顔を覗き込みながら心配そうな顔だが、溜め息の理由は疲れじゃない。

 ……精神的には疲れてるけどな。


「しかし、何でこんな事をしたんですか、エッケンハルトさんは……?」

「理由は、私が旦那様にアンネリーゼ様とタクミ様の事を報告したから、でしょうな」

「俺とアンネさんの?」

「はい。アンネリーゼ様に結婚の誘いを受けた事ですな」

「……知ってたんですか?」


 セバスチャンさんは、俺がアンネさんに誘われている事を知っているようだ。

 だけど、あの時馬車の中には俺とアンネさん、それとクレアさんしかいなかったはずだ。

 クレアさんがセバスチャンさんに言うとは考えにくいから……もしかしたらアンネさんが言ったのか?


「私は馬車で御者をしていたのですよ? あれだけ大きな声で話していれば、よく聞こえますとも」

「……そういう事ですか」


 あの時、馬車の窓はレオとエッケンハルトさんの様子を見るために開いていたし、アンネさんは大きな声で話していたから、御者を務めているセバスチャンさんが聞こえていてもおかしくない。

 というより、何で聞こえていないと思ったのか、俺。


「旦那様に報告すると、クレアお嬢様の様子が気になったようでしてな? クレアお嬢様もあの時は馬車に乗っていた……つまり事情を知っているはずなので……」

「それでクレアさんの様子を見ようと?」

「はい。旦那様がクレアお嬢様のお部屋を訪ねようとした時、クレアお嬢様は人目を避けるように部屋から出て行きました」

「……その時、クレアさんにバレなかったんですか?」

「いえ……旦那様が、部屋から出て来たクレアお嬢様から身を隠しましてな……大方、店での事を思い出して身がすくんだのでしょうが……」


 店で怒られた事を気にして、もしかしたらまた怒られるかも……と考えて見つからないようにしたのか。

 屋敷に帰ってから、追加の説教があるとクレアさんが言っていたから、それを思い出したのかもしれない。

 エッケンハルトさん程の大柄な体で身を潜めるのは、一苦労な気がするが……屋敷を熟知しているセバスチャンさんがいれば、簡単だったのかもな。

 しかし、それで何故覗こうなんて考えたのか……。


「その後、クレアお嬢様が落ち着かない様子で、タクミ様の部屋に入るのを見ました。旦那様は、何かを期待して覗いたようですな」

「はぁ……何かを期待って……何もありませんよ?」


 覗いて、何を話していたか知っているセバスチャンさんにこう言っても、説得力はないかもしれないけどな。

 案の定、セバスチャンさんはニヤリと笑ってる……あまり良い顔じゃないですよ?


「まぁ、何を話して何が行われてたかは、追及しない事にします。……その方が面白そうですからな」

「……本音が漏れてますよ?」

「おっと、これは失礼しました。……クレアお嬢様がどうするのかを見ている時、廊下でティルラお嬢様と会いまして……」

「父様に、面白いものが見れるだろうからって、誘われました!」

「そう、なんですね……」


 本音を呟いたのを聞かれても、しれっとしているセバスチャンさん……やっぱりいい性格だよな。

 ティルラちゃんは、覗く前に出会ったようだ。

 もしかしたら、寝られなくて誰かに遊び相手を探してたのか、それともトイレにでも起きて来たのか……。

 それはさておき、こんな子供も誘うなんて……エッケンハルトさんは……はぁ。


「ドアが開いていたのも幸いでしたな。おそらく、クレアお嬢様が入る時、緊張で閉め忘れたのでしょう」


 俺やクレアさんにとっては、幸いじゃないけどな。

 まぁ、わざわざ閉めたドアを開けようとしたら、もっと早くレオが気付いたんだろうな。

 ともあれ、そうしてクレアさんの様子が気になったエッケンハルトさんが、セバスチャンさんとティルラちゃんを伴って、覗きをするに至った……というわけか。

 公爵様と言っても人の親、自分の娘がどういう行動をするか、気になるのはわからないでもないんだけど……もう少し自重して欲しい。


「それでは、遅い時間に失礼しました」

「おやすみなさい、タクミさん! レオ様!」

「ワフワフ」

「おやすみ、ティルラちゃん。……セバスチャンさんは、止めなかったので同罪ですからね?」

「ほっほっほ、何の事かわかりかねますなぁ」

「とぼけるならそれでも良いですが……明日しっかりクレアさんに報告しておきます」

「……申し訳ございませんでした」


 元気に挨拶するティルラちゃんへ、レオと一緒に挨拶を返しつつ、セバスチャンさんを牽制する。

 笑ってとぼけてるセバスチャンさんだが、クレアさんの名を出すと、すぐに振り返って深々と頭を下げた。

 ……そんなクレアさんが怖いのか……確かにエッケンハルトさんに怒ってるクレアさんは、ちょっと怖いけどな……。

 まぁ、あれは父親相手だからの気安さがあるからだ……と思いたい。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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