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228/1995

例の店へ向かう準備を整えました



「おはよう、タクミ殿。よく眠れたか?」

「はい。朝食も頂いて、準備もしましたし……万全です」


 翌朝、俺を起こしに来るとの口実で、シェリーと一緒にレオを構いに来たティルラちゃんと、食堂へ。

 そこから朝食を食べた後は、一旦部屋に戻って屋敷を出る準備。

 準備と言っても、ランジ村に行く時のように数日寝泊まりするわけじゃないから、すぐに終わった。

 部屋を出て、玄関ホールで先に来ていたエッケンハルトさんに挨拶。


 ちなみに今日は、ラクトスの街へ行くので、セバスチャンさんが連絡してニックは来ない事になっている。

 わざわざこっちに来なくても、直接薬草を届ければ良いだろうしな。


「アンネ……貴女も来るの?」

「当然ですわよ? 自分の伯爵家に関わる事なのですから」


 階段を降りながら話しているのは、クレアさんとアンネさん。

 クレアさんはアンネさんが付いて来る事に、少々嫌がる雰囲気だが、俺から見るとエッケンハルトさんが最初に言ったように、仲が良さそうに見える。

 ……クレアさんにとって、同年代の友人なのかもしれない……本人は認めなさそうだが。


「旦那様、準備が整いましてございます」

「ワインは?」

「いくつかの瓶に分けて、荷物の中に」

「そうか、わかった。ご苦労」


 準備を終えたセバスチャンさんも来て、玄関ホールには街を出る人達が全員集まった。

 街へ行くのは、俺、レオ、エッケンハルトさん、クレアさん、アンネさん、セバスチャンさんに護衛のフィリップさんとヨハンナさん、あとはエッケンハルトさんが連れて来た護衛の人3人だ。

 レオを含めると、全部で11人か……結構な大所帯だな。


「いってらっしゃいです!」

「キャゥ」

「行って来る」

「行って来るわね、ティルラ、シェリー」

「ティルラちゃん、シェリー。行ってきます」

「「「「「行ってらっしゃいませ。ご無事の御帰還、お待ちしております!」」」」」


 見送りに来たティルラちゃんとシェリーに声を掛け、皆で玄関ホールを出て外へ。

 いつものように、使用人さん達が並んで一斉に声を上げたのは、さすがに慣れた。

 その使用人さん達の中に、ミリナちゃんがいたが……もしかして、いつの間にかミリナちゃんも練習してたのかな?

 ……俺も混ぜて欲しかった……。


「旦那様、こちらの馬車へ。クレアお嬢様も」

「うむ」

「わかったわ」


 今回は人数が多い事もあり、いつもの2、3人で乗る馬車では無く、豪奢な作りをした馬車で行くようだ。

 ……完全に、小さな部屋に車輪が付いてるような馬車だな……扉が付いてる馬車とか、初めて見た。

 公爵家当主が乗るのだから、もしかしたらこれでも贅沢ではないのだろうけど……。


「タクミ様はどう致しますか?」

「俺は……レオに乗ります」

「ワフワフ」

「アンネ、貴女がレオ様に乗って行っても良いのよ?」

「冗談はよして下さいまし。私は馬車に乗りますわ」

「ははは、レオには慣れてから乗った方が良いですね。それじゃ、レオ。頼む」

「ワフー」


 護衛さん達が乗る馬とじゃれていたレオに声をかけ、その背中へと乗る。

 クレアさんがアンネさんに、レオに乗ればと言っていたのは、単なる冗談だろう。

 エッケンハルトさん達貴族組が馬車に乗り込み、セバスチャンさんが御者台へ。

 護衛さん達もそれぞれ馬に乗り込んで準備完了だ。


「公爵家当主様、ご出立!」


 フィリップさんが先頭に移動して、大きな声で辺りに呼びかける。

 その声と一緒に、皆の乗った馬車と馬が移動を始めた。

 貴族の当主様が移動するのだから、これくらい大仰なのも当然なのかもね。

 いつもの気楽な街への移動とは違い、少しだけ緊張感が漂っていた。


「レオ、あまりはしゃがないようにな」

「ワフ」


 馬より速いレオは、移動する皆の間を縫うようにいろんな所へ行ったり来たりしている。

 レオに慣れているフィリップさんやヨハンナさんは良いが、エッケンハルトさんの連れて来た護衛さん達はまだ慣れて無さそうだからな。

 馬に乗ってる時に余計な事はしない方が良いだろう。

 ……レオが近づくと、ちょっと顔を引きつらせてたりしてたから。


「もう少し落ち着かないのかしら? はしたないですわ」

「レオ様は良いのよ、アンネ」

「うむ。レオ様はシルバーフェンリルだ、我々公爵家の象徴のような存在。自由に楽しく過ごしてもらうのがよかろう」


 レオが馬車の近くに移動した時、中からクレアさん達の会話が聞こえて来た。

 というより、小窓が空いて、そこから俺達を見てアンネさんが話し始めたから、最初から嫌みのように言うつもりだったのだろう。

 馬車の中なら、レオが入って来れないから安心しているんだろう。


「……シルバーフェンリル……ですって? 本当なの? 確かに銀色の毛をしてますけど……」


 おや? どうやらアンネさんはレオがシルバーフェンリルだと知らなかったようだ。

 考えてみれば、レオの事や俺の事を詳しく説明してなかったな……貴族だから知ってると思ってたけど、公爵家以外の貴族だとこうなのかもしれないな。


「ええ、本当よ。レオ様はシルバーフェンリルで間違いないわ。魔物をいともたやすく倒してしまうわ。実際にこの目で見たわよ」

「それは私も見たかったな……レオ様がシルバーフェンリルというのは間違いないぞ、アンネリーゼ。そして、それを従えているタクミ殿は、我が公爵家の大事な客人だ」

「……まさか……シルバーフェンリルを従える人間がいたなんて……」


 アンネさんはシルバーフェンリルの事は知っているけど、レオとは結び付いていなかったようだな。

 まぁ、誰にも従わない最強の魔物と言われてるらしいから、おとなしく言う事を聞いているレオを見ると、シルバーフェンリルだとすぐには考え付かないのかもしれない。

 従えているというか……相棒、なんだけどなぁ。


「では、あのタクミ……と言いましたか? あの者は、そこらの庶民ではない、と?」

「タクミさんは、特別な人よ。優しくて、聡明で……」

「……クレアのタクミ殿の評価が高いな……。まぁ、私もそうだがな。剣の方も筋が良い。それに、頭も悪くないのは確かだ。間違いなく、逸材だろうな」

「二人がそこまで褒めるのですね……」


 おっと、レオの話から俺の話になったようだ。

 クレアさんもエッケンハルトさんも、随分俺の事を褒めてるようだけど、そこまで言われるような成果は、まだ出していない……と思う。

 二人共、アンネさんに俺が見くびられないよう、過剰に褒めてるん……ですよね?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


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