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ランジ村を助けたことにお礼を言われました



「……そうか……そんな事が……タクミ殿」

「はい」

「既にセバスチャンからも、私の名代として謝辞を述べたとの事だが……改めて私からも言わせてもらおう」


 説明が終わり、話を聞いていたエッケンハルトさんは、一度目を閉じ何事かを考えた後俺を呼び、立ち上がる。


「ランジ村……我が公爵領内にある村が魔物の脅威にさらされた際、タクミ殿の助力のおかげで事なきを得る事ができた。感謝する」


 そう言って、エッケンハルトさんは、俺に深々と頭を下げる。

 さらにセバスチャンさんやライラさんまでもが、俺に頭を下げている。


「あ、えーと。お気になさらず? まぁ、自分を守るためでもあったので……それに、最終的にはレオが全て倒してくれましたし」

「それでもだ。タクミ殿が助力してくれなければ、レオ様が来ても手遅れだったかもしれぬ」

「そう、かもしれませんね。……エッケンハルトさんに剣を習っておいたおかげですよ。それにセバスチャンさんからの魔法もありました」


 オーク達と戦った後、セバスチャンさんには既に感謝されていた。

 それで終わったことだと考えていたのに、こうして改めてお礼を言われると、戸惑ってしまう。

 確かに俺が時間稼ぎをしようとしなければ、レオが来るまでに取り返しのつかない事になっていただろう。

 でも、それもこれも、全てエッケンハルトさんに習った剣のおかげだし、セバスチャンさんが教えてくれた魔法のおかげで、オークを少しの時間留める事ができたんだ。

 むしろ、感謝は俺の方がしたいくらいだな。


「魔法? ……そうなのか、セバスチャン」

「はい。剣にこだわり、勝利する事だけを考えるのではなく、簡単な魔法で時間を稼ぎ、生存を優先する事をお伝えしました」

「成る程な。そこは、私が教えなければならなかったところだな。剣を使って相手を倒す事だけでなく、生き残る事を考えるようにな」


 俺が魔法を教えてもらった事は、エッケンハルトさんに説明していなかった。

 セバスチャンさんに問いかけ、その答えで理由を理解したエッケンハルトさん。

 だが、俺が剣を習った時のエッケンハルトさんには、そこまで時間が無かったから仕方ないだろうと思う。

 公爵家当主なのだから、忙しい中、屋敷に滞在している短い時間で、剣を教えてもらうだけでもありがたいと思わないとな。


「旦那様、捕らえた商人達はどうしましょう?」

「ふむ……魔物を使って村を襲ったか……ガラス球の事もあるしな、懲罰は免れないだろう。まぁ、ラクトスの者に任せる」

「畏まりました。厳しい処罰が下るよう、伝えておきます」


 商人達は、自分達が村人へ襲い掛かったわけじゃないが、魔物をけしかけて来た実行犯だ。

 この世界、この国の規律には詳しくないが、何かしらの処罰をされるのは当然の事だろう。

 もしかしたら、処刑……なんて事もあるかもしれないな。

 

「では、明日にでも乗り込むとするか。民を害する者は早々に排除しなければな」

「その事ですが、旦那様。一つ提案があります」

「提案?」

「はい。先程の説明の中で、レオ様が判別したワインですが……実はタクミ様が買い取ったのです」

「ワインを……しかし、それはどうしてだ? 飲めば病に罹る物……破棄するのが当然だろう?」

「その事に関しては、タクミ様から……」

「……わかりました」


 セバスチャンさんに促され、エッケンハルトさんへワインを買い取った理由を話す。

 もったいないとか、どうにかして飲めるようにできないか……あとは、もしかしたら薬草を使う事で、薬酒にできないかという試みを考えている事まで。


「成る程、事情はわかった。それで、セバスチャンの提案とは?」

「はっ、そのワインを少々……例の店に持って行こうと思いましてな」

「……そうか……セバスチャン、悪い事を考えるなぁ……」

「民を害する者達、さらに公爵領内での行い……容赦をする程、善人では御座いません」


 ワインを持って行く、と言ったセバスチャンさんの言葉だけで、どういう事に使うか理解したようだ。

 エッケンハルトさんは、セバスチャンさんの方を見て、ニヤリと笑う……その笑みは、人相も相俟って完全に悪人に見える。

 それに対するセバスチャンさんも、ニヤリとしている。

 ……以前こんな場面を見たような……あぁ、あれだ、時代劇で悪代官が山吹色のお菓子をもらっている場面だ!

 ……二人共、本当に悪人ってわけじゃないはずなのに、何故かその表情が似合ってるなぁ。


「失礼致します。フィリップさんが帰還されました」


 二人の表情に少しだけ引いていると、客間の入り口がノックされ、一人の執事さんが入って来た。

 フィリップさんが帰って来た事を伝えに来たようだ。


「ふむ、良いタイミングですな。旦那様」

「うむ。タクミ殿、フィリップを出迎えに行こうではないか」

「はぁ」


 エッケンハルトさんとセバスチャンさんの二人に連れられ、俺はフィリップさんを迎えに行く事に。

 クレアさんとアンネさんとレオは、まだ騒いでるし、ティルラちゃんは残すようだ。

 シェリーとライラさんもそのままに、三人で玄関ホールへと向かった。

 ……悪くないんだが、悪巧みをしているような表情をしている二人について行くのは、ちょっとだけ嫌だなぁ。


「フィリップ、ご苦労様でした」

「セバスチャンさん。ただいま帰りま……旦那様!?」

「うむ、ご苦労だった。フィリップ」

「お疲れ様です、フィリップさん」


 玄関ホールでは、使用人さん達が数人ごとにチームを作って、皆でワイン樽を転がしてるところだった。

 保存する部屋に持って行く人達が行き交う場所で、セバスチャンさんがフィリップさんに声をかける。

 こちらを向いたフィリップさんは、セバスチャンさんに答えている途中でエッケンハルトさんに気付いた。

 そういえば、フィリップさんはエッケンハルトさんが屋敷に来る事を知らなかったか……そりゃ驚くな。

 一応、俺も言葉を掛けたけど、驚いて固まってるから、聞こえて無いだろう。


「フィリップ、すまんがワイン樽を一つ、ここへ持って来てくれ。それと……ヘレーナ」

「畏まりました!」

「旦那様、どうかされましたか?」


 フィリップさんに指示を出し、ワイン樽を持ってこさせるように言うエッケンハルトさん。

 それと一緒にヘレーナさんも呼んだ。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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