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223/1995

エッケンハルトさんが連れて来た理由を聞きました



「まぁ、アンネリーゼの事はクレアに任せて……」


 怒りに染まるクレアさんの剣幕に、こめかみから冷や汗に見える物を流しながら、話に戻るエッケンハルトさん。


「旦那様、アンネリーゼ嬢をお預かりするとの事ですが……」

「あぁ。見ての通り、罪の意識というか……世間知らずでな。仕方ないので我が公爵家で教育する事になったのだ」

「教育……ですか? それはまた……しかし、バースラー伯爵が黙っていないのでは?」

「はっはっは、奴は今身動きが取れん。我が公爵領でしでかした事を王家に伝えたからな」

「王家……」


 貴族を取りまとめる……というよりこの国で頂点に立つ人達の事だろう。

 どういう人達かは知らないが、貴族が不正をする事を見張る役目があると聞いた覚えがある。


「悪質な薬草を売る店……バースラー家との関わりがあるのはこちらの調べでもわかっている。まぁ、それ以外にも色々と叩けば埃の出る身だったからな。全てまとめて王家に報告をさせてもらった」

「成る程、でしたら監視が?」

「あぁ。証拠がある物無い物、様々だが……もうバースラーの屋敷には監視する者が派遣されているだろうな」


 貴族が悪事を働く、もしくはその疑いがある時、王家からその証拠を得るために監視する者、調査する者が派遣されるのだとの事。

 それによって、今バースラー伯爵は監視下に置かれ、誰かに文句を言う事も、裏で手を回すなんて事もできないようだ。


「全ての悪事が暴かれたら、改めて罰せられる事になるだろう。その時についでに頼まれた案件でな、アンネリーゼが公爵家に預けられる事になった」

「誰かに頼まれたのですか? まさか、バースラー伯爵では無いでしょう?」

「もちろんだ。頼んできたのは王家に連なる者なんだが……アンネリーゼの世間知らずに頭を抱えてな……バースラーの罪は理解しているんだが……悪知恵を働かせて、色々な事を提案する事を悪い事だと思っておらんのだ……今クレアに言われているようにな」

「はぁ……」


 どうやら、エッケンハルトさんにアンネさんを頼んだのは王家に関係する人らしい。

 まぁ、確かに、提案はしたが実行はしてないとあっけらかんとしている様子は、その人も頭を抱えてしまったのかもしれない。

 箱入りで育てられて、他人に意識を向ける……という事ができないのかもしれないな。


「そこで、王家でも評判の高い貴族意識を持っているクレアを育てた、我が公爵家に白羽の矢が立てられた、というわけだ。公爵家であれば、再教育をする事もできるだろうとな。アンネリーゼはバースラー伯爵の一粒種……つまり跡取りになるからな」


 クレアさんは、王家でも評判が良いらしい。

 確かに、クレアさんは貴族だから、民だからと差別することは無く、ラクトスの街でも人々に慕われている様子が垣間見れた。

 孤児院でもそうだが、偉ぶる事もない。

 ……若干、着る物は全てオーダーメイドだと考えていたなんて、お嬢様らしい考えの部分もあったようだが。


「次期伯爵家当主を、わが公爵家で教育を施す、と?」

「そういう事だ」

「しかし、それは他の貴族から反発を招きませんか? 公爵家が伯爵家を取り込むつもりだと……」

「口さがない者は、そういう事もあるだろうな。そのあたりは一応、王家がフォローしてくれるようだ」

「そうですか……王家と旦那様が決めた事。私は執事としてそれを支えさせて頂きます」

「苦労をかけるな、セバスチャン」


 エッケンハルトさんと、セバスチャンさんの間で、アンネさんを預かる事への話は終わったようだ。

 貴族間の関わりだとか、妙な噂が広まる恐れはあるけど、王家が間に入るから、ちゃんと伯爵を受け継げるよう、しっかり教育してくれ……という事なんだろうと考える。

 まぁ、当主であるエッケンハルトさんと、公爵家を支える執事であるセバスチャンさんが納得した事だから、俺から口を挟むことは何も無いな。


 それに、アンネさんの教育というのは、クレアさんが熱心にしてくれそうだし……。

 未だ、レオを使ってアンネさんを責めているクレアさんをちらりと見るが……あっちは放っておいた方が良いか、変に飛び火するのも怖いし。

 というか、この国の貴族は世襲制なのはわかるが、必ず男が継がなければ……という決まりはないみたいだ。

 考えてみれば、公爵家の初代当主様が女性なのだから、女性でも家を継ぐ事ができても不思議はないな。

 男女平等……という事……なのかな?


「さて、アンネリーゼの事はクレアに任せておくとして……悪質な薬を売る店だな」


 それで良いのかと思わなくもないが、エッケンハルトさんも、下手に止めようとして自分に飛び火するのが怖いのだろう。

 一部、クレアさんとアンネさんが騒がしいが、それを無視するようにエッケンハルトさんが真剣な表情になる。

 クレアさんの指示で、アンネさんにじゃれついているレオを、羨ましそうに見ているティルラちゃん以外は、エッケンハルトさんと同じように真剣な表情になった。

 セバスチャンさんも、ライラさんも真面目な話になるという事で、居住まいを正している。


「まぁ、アンネがこちら側にいる事、バースラー伯爵が王家の監視下に置かれたことで、既に身動きが取れない状況になっているはずだが……セバスチャン」

「何でございましょう?」

「外側とは別に、内側……つまり、その店がやっている事への確証は得られたのだな?」

「はい。これまでの情報収集で、疫病の広がりの原因、そのタイミングを狙った店の開始など、すべてが繋がりましてございます」

「そうか……ガラス球……だったか?」


 ランジ村でガラス球を見つけた事や、今までの事で例の店を取り潰すための駒は全て揃っていたが、エッケンハルトさんの方でも動いてくれた事で、そちらの方からも例の店を追い詰める事ができているようだ。

 セバスチャンさんへ確認をした後、改めてガラス球の事を聞きたそうにしているエッケンハルトさん。

 それを使った事の提案をしたアンネさんや、セバスチャンさんから報告されても、確認のために改めて聞きたいという事なんだろう。


「ガラス球は、魔法具でございました。ラクトスで魔法具商店を開いているイザベルに調べてもらいました。それによると……」


 セバスチャンさんがエッケンハルトさんへ、ガラス球の事、ランジ村に置かれていた事、商人達の事やオーク達を連れて来て村を襲わせた事など、今まであった事の説明をした。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


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[気になる点] 分家のまともな人間を取り立てるか、 潰して王家の直轄領として代官を置くなり、色々な方法があると思うんですが、 なんで、犯罪を教唆してるのに自分は直接関与してないんだから悪くないって言っ…
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